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万歳

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小学生のとき、あるいは中学生の時だったかもしれないが、
運動会などのイベントの閉会式で、
「万歳三唱」というものがった。

大方は、市会議員等の来賓が音頭をとり、
「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」
と、両手を振り上げるのである。
子供だった自分は、特に何も深く考えることなく、
わりとノーテンキに「バンザーイ」とやっていたのだが、
アレには一体どういう意味があったのか?

我々が普通に生活している中でも、
「バンザーイ」と叫んで両腕を振り上げることはある。
主に、めでたいこと、うれしいことなどがあったときには、
「バンザーイ」とやる風習は、昔からある。
スポーツの試合などの勝負事に勝ったとき、
また受験で志望校に合格したときなどは、
わりとあちこちで「バンザーイ」の声と、両腕が上がる。
国語辞典で調べてみると、

万歳・万才……長く生き、栄えること
       めでたいこと

とある。
多くの場合「万歳」は、
「めでたいこと」の意味で使われている。
しかし、万「歳」・万「才」の「さい」が
「年齢」をさす字であることからも、
「長く生き、栄えること」の方が正式なものらしい。
この「万歳」、
いつ、どこで使われ始めたのだろうか?

この「万歳」の出自を調べてみた所、
この言葉自体は、中国の「千秋万歳」という言葉の、
後半部分を抜粋したものらしい。
「万歳」というのは1万年を表しており、
中国皇帝の寿命のことである。
もちろん、中国の皇帝といえども人間なので、
1万年生きることなど、出来はしない。
むしろ
「皇帝陛下が、1万年も生きられますように」
という、祈りのこもった言葉だと考えるのが正解だろう。
恐らく、自国の最高権力者である皇帝に
ゴマをする意味も込めて、
こういう言葉が作られたのだろう。
いかにも中国らしい、壮大なゴマのすり方である。
ただ、皇帝といっても、
いつの時代の、どの皇帝のときに生まれたのか、
その発生時期についてはよくわからない。
明代に専権を奮った宦官が、
自分の一党の者に「九千歳」と叫ばせていたという。
皇帝の「万歳」に匹敵するほどの権力を持っていると、
アピールする目的があったのだろうが、
返って小者臭さを強調する結果になっている。
それはともあれ、そのような変形も
存在していたということは、
少なくとも明代以前から、
「万歳」が使われていたということだろう。

この「万歳」という言葉が、
いつ日本に入ってきたのかは明らかではないが、
我々にもなじみ深い、
両腕を振り上げる「万歳」が使われ始めたのは、
明治22年(1889年)2月11日、
大日本憲法発布の日のことである。
天皇陛下が青山練兵場での観兵式に行幸される際、
この国家的祝賀に対し、
「何か陛下をお讃えする方法はないか?」
ということになった。
それまでの「最敬礼」以上の方法を模索したのだ。
日本以外の諸外国では、
元首を讃える枕詞が決められていたのだが、
明治維新によって誕生し、
まだそれほどの歴史のない当時の日本政府には、
これにあたるものがなかったのだ。

当初は「奉賀」という言葉を、
3回繰り返す予定だったが、
実際に学生に叫ばせてみると、
繰り返しているうちに「アホウガー」と聞こえてくる。
さすがにこれはまずい、ということで、
次の候補として「萬歳」が挙った。
「萬」というのは「万」と同じ意味であり、
つまりここで「万歳」が候補となった。
が、実はこの「萬歳」、
読み方が「バンザイ」ではなかった。
古来の発音では、これは「バンゼイ」であり、
「バンゼイ、バンゼイ、バンゼイ」となった。
しかしどうも「ゼイ」という響きが
すっきりしていないということで、
次にこれを「マンザイ」と読み替えた。
つまり、三唱するならば
「マンザイ、マンザイ、マンザイ」となる。
現代人ならば思わず、
吉本かっ!と突っ込んでしまいそうだが、
当時は、吉本興業はまだ存在していない。
ただ当時、三河漫才(萬歳)というものが存在しており、
これとかぶってしまっているということで、
この「マンザイ」も没となった。
そこでさらにこれを読み替え、
ついに「バンザイ」が誕生する。

ちなみにこのとき、「万歳」の練習・本番を行なったのは、
当時の帝国大学の学生であり、
これは現在の東京大学にあたる。
つまり日本で最初の「万歳」は、
東大の学生によって行なわれたということである。
同じ年、帝国大学秋期陸上大運動会において
皇太子殿下をお迎えした際にも「万歳」を三唱し、
以来、帝国大学では天皇陛下・皇族以外には
「万歳」を実施しないと決まった。

さて、「万歳」と叫ぶようになった経緯はわかったが、
もうひとつ残っている疑問は、
どうしてこれを「3回」繰り返すのかということである。
調べてみると、この「3回」というのは、
欧米の習慣を真似たようで、
例えば当時のイギリスでは、同じような場合に
「ホウレー、ホウレー、ホウレー」とやっていたらしい。
つまり「万歳」というのは中国から、
「三唱」というのは欧米から持ち込まれたものだったのだ。
まさに和洋折衷ならぬ、中洋折衷である。

後の使われ方はともかく、
少なくともその誕生時において、
「万歳」というのは、
天皇陛下の長寿を祝福・祈願する意味で、
行なわれたものだったのである。
よく戦時中を描いた映画やドラマの中では、
「天皇陛下バンザーイ!」という言葉が出てきて、
それにあわせて特攻機が敵戦艦に突撃したりしているが、
あれは「万歳」の使用法としては、
もっとも本来的なものなのである。
ただ、「バンザーイ!」と叫びながら
特攻を仕掛けたおかげで、
海外では特攻のことを「バンザイアタック」と翻訳した。
「バンザイアタック」なんて聞くと、
日本人の感覚からすると、
「めでたい攻撃?」と思ってしまいそうだ。

だがそう考えると、学校行事で
「万歳三唱」をしていたというのは、
ちょっとした驚きである。
日本の教育機関というのは、
「日教組」という組織に見られるように、
いわゆる「左翼」的な傾向が強い。
彼らは軍、戦争、天皇などをイメージさせるものには、
これでもかというほど攻撃を加え、反発する。
(卒業式などでの国家不斉唱もコレである)
「万歳三唱」など、
彼らが一番に噛みついていてもおかしくない。

そうなっていないのは、なぜなのだろうか?
「万歳」の謎である。

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