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デコイ

投稿日:

半月ほど前、友人と一緒に市内の山に登ったのだが、
山から下りてきて、ふと近くの池が目についた。

狩猟をしている別の友人に、
「獲物がいる山や池があったら、教えてくれ」
と頼まれていたので、
池に鴨でもいないかと思って、覗いてみた。
すると、ちょうど自分の足元、
コンクリートブロック斜面のすぐ傍に、
結構な大きさの鴨が3匹、浮かんでいるではないか。
思わず「おっ」と声をあげてしまったのだが、
全く逃げるような素振りすらない。
波にあわせるように、ゆらゆらと揺れて浮かんでいる。

次第に、ちょっとおかしいな?と感じ始めた。
角度からいえば、向こうから、こちらも丸見えの筈だ。
いくら猟銃を持っておらず、
殺気がないといっても、
普通の鴨なら、慌ててバサバサと飛び立つか、
岸から離れて、池の中央に泳いでいく筈だ。
気になって、池の斜面を下りていくと、
鴨に触れるほど接近することが出来た。
これだけ人間が近づいても、鴨はピクリとも動かない。
よくよく見てみれば、
身体の中央に一本、継ぎ目が見えた。
まるで、あしゅら男爵だ。
なんのことはない。
そこに浮かんでいた3匹の鴨は、
ただの「デコイ」だったのである。

「デコイ」というのは、普段、あまり聞かない言葉だ。
英語で「decoy」。
意味は、おびき寄せる仕掛け・罠、おとり、となっている。
もともとはオランダ語の「de kooi」であり、
これはそのまま「鴨の囮」という意味になる。
この語源のとおり、大方の場合は
狩猟用の鴨の人形を指すことが多い。
しかし、鴨の人形が囮になるというのは、
一体どういうことだろう?

囮を使って獲物を捕るというと、
まず一番に思い浮かぶのは、
「鮎の友釣り」ではないだろうか。
これは仕掛けにアユを一匹引っ掛けて川の中を泳がせ、
縄張り意識の強いアユが、この囮に攻撃してくるのを、
囮アユにつけている掛け針で引っ掛ける、という釣りだ。
だが、鴨猟で使われるデコイは、
これとは全く違う用途で使われている。
と、いうのも、鴨のような集団生活をする鳥は、
仲間を見つけると、自然とそこに集まってくる習性がある。
仲間がいるということで安心し、
警戒心を解いてしまうのだ。
この習性を利用し、
鴨そっくりな人形を浮かべておき、
この人形を仲間と勘違いした鴨が近くに寄ってきた所を、
「バンッ」とやるワケである。
なかなかに、えげつないやり方だ。

この「鴨人形」の歴史は、
17世紀のオランダまでしか遡れない。
確かに「デコイ」の語源が、
オランダ語であることから考えても、
「鴨人形」を使った狩猟が始まったのは、
その辺りだと考えるのが自然だ。
ここからヨーロッパ各国、
さらには大西洋を渡り、アメリカへと広がっていった。

猟銃を使わない鴨猟では、
生きた鴨や、アヒルなどを囮に使う方法もあり、
宮内庁が行事として行なっている鴨猟でも、
生きた鴨を囮として、鴨を誘い込み、
これを網ですくうというものも存在している。
つまり17世紀以前にも、鴨やアヒルを囮に使って
獲物(これも鴨だ)をおびき寄せる猟は、
行なわれていた可能性は高い。
ここから、囮に生きた鳥ではなく、
人形を使う発想が生まれたのだろう。
釣りの話になるが、
同じような偽のエサを使うルアー釣りは、
このデコイよりも、早い時代から実用化されている。
あるいは、このルアーこそが
デコイの発想の元だったのかもしれない。

このヨーロッパで生まれた「デコイ」が、
アメリカに移入され、ここでバードカービングという
一種の木彫りが生み出された。
「バード」は、そのまま「鳥」の意味、
「カービング」は、「彫刻」という意味になる。
つまりは「鳥の彫刻」である。
ナイフや彫刻刀、グラインダーなどを使って木材を加工、
エアーブラシなどを使って彩色して、作り上げる。
目に、ガラス玉などを埋め込むなど、
細部にわたって、リアルさを追求している。
狩猟の際、「囮」として使うために作られていたが、
現在では一種のインテリアとして、
部屋の中に飾ることもある。
19世紀になると、
工場でのデコイの大量生産が始まり、
手工業で木材を加工する、
「バードカービング」は衰退していった。
さらに、畜産による食肉の大量生産が可能になり、
「鴨猟」そのものも、衰退していくことになった。
現在では、「バードカービング」も「鴨猟」も、
趣味のひとつとして楽しまれているのみである。

この寒い時期、わりとあちこちの池や川で
鴨など、渡り鳥の姿を見ることが出来る。
だが、調べてみると、渡り鳥などが大量にいるのは、
そのほとんどが禁猟区内の池であり、川である。
さすがに彼らも、自分の命がかかっている以上、
そうやすやすとハンター達のうろついている
場所には近づかないようだ。

そんな鴨たちの警戒心を緩めようという「デコイ」。
しかし、自分の見た池の様子からすると、
あまり目覚ましい効果は無いようである。

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