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動物 時事

ウーパールーパー

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あの「ウーパールーパー」が、絶滅の危機に瀕しているという。

先日、ニュースサイトの見出しの中に
「ウーパールーパーが2年で絶滅の危機か、
 科学者らが再生に尽力」
というものがあった。

「ウーパールーパー」の通称で知られる「メキシコサンショウウオ」が、
その原産地であるメキシコの運河などから姿を消し、絶滅の危機に瀕している。
生息地の水質汚染や公害に加え、食欲旺盛な外来種の侵入、
市街地の拡大によって、その原種「メキシコサラマンダー」の生息している
メキシコのソチミルコ湖が埋め立てられてしまい、
急激にその数を減らしているというのだ。
ある科学者のモデルによれば、2020年にも絶滅する恐れがあるという。

後2年、いや、2018年がすでに11月も終わろうとしていることを考えると、すでに残された時間は、後1年ほどしかないのかも知れない。
「ウーパールーパー」絶滅まで、後わずかに1年……。
まるで「宇宙戦艦ヤマト」のナレーションのようだが、
それがガミラスのごとき外来種の攻撃だけでなく、
人間の環境破壊にも起因しているというのであるから、
話はややこしくなってくる。

しかし、そんな絶滅の危機に瀕している「ウーパールーパー」が、
現在でも、日本ではペットとして販売されている。
インターネットの通販サイトを調べてみれば、
ペット用の「ウーパールーパー」が1匹・2000円もしない値段で
販売されているではないか。
あまつされ、さらにネットで調べてみれば、
なんと「ウーパールーパー」を唐揚げや天ぷらにして食べる、
というような話もいくつか出てくるではないか。
画面にはこんがりとキツネ色に揚げられた「ウーパールーパー」の写真。
かつて一世を風靡した可愛い動物が、
まさかこんな姿になっているのを見る時が来るとは……。

もちろん、現在日本で販売されている「ウーパールーパー」が、
法律に反しているわけではない。
「ウーパールーパー」は、ワシントン条約によって
許可のない輸出入が禁止されているのだが、
現在、我々の周りに出回っている「ウーパールーパー」は、
原産国のメキシコで捕獲して輸入してきたものではなく、
日本国内で繁殖させ増やされた個体であるため、
このワシントン条約には引っかからないらしい。
早い話、完全養殖が確立しているというわけだ。
このため、ペット用として知られている
白やピンクの「ウーパールーパー」など(アルビノ種・自然界では希少種だが、
人間が繁殖させているうちに、定着させることに成功したようだ)は、
安価に日本中のペットショップで販売され、
あまつさえ、薬品などを使用せずに育てた個体が、
「食用」の銘目で、飲食店などに卸されているわけだ。

そんな状況のウラで、天然の「ウーパールーパー」は
ひっそりと危機的な状況を迎えていた、というわけである。

「ウーパールーパー」は、正式には
「メキシコサンショウウオ」と呼ばれる両生類である。
手足が生えていることから、一見した所でトカゲの仲間などと
勘違いする人もいるかも知れないが、品種でいえばカエル、イモリ
そしてサンショウウオなどの仲間になる。
この「メキシコサンショウウオ」の大きな特徴の1つが、
成長過程において「変態」を行なわず、幼形のまま成熟することである。
カエルで例えるのならば、オタマジャクシがそのままの形で
成長するようなものだ。
面白いことに、他のサンショウウオたちは、その成長過程において
「変態」を遂げるのであるが、「変態」前の姿が
この「ウーパールーパー」に似ているものも多いそうだ。
だからもし、何かの間違いでで「ウーパールーパー」が
「変態」を起こすのであれば、他のサンショウウオと似た姿に
なるものと思われる。
(実際にある種の薬品などを投与することによって、
 「ウーパールーパー」を「変態」させることも出来るらしい)

別名で「アホロートル」と呼ばれることもある。
日本人の感覚からすれば、「アホ」で「ロートル」なわけだから、
かなりひどいネーミングのように感じてしまうが、
もちろんこれは日本語ではないため、そのような意味合いはない。
「アホロートル」というのは、現地の言葉で
「水に遊ぶもの」という意味がある。
その響きとは違った(日本語的な)、実に美しい意味合いである。
「メキシコサンショウウオ」「アホロートル」と、
我々日本人には馴染みのない名前が並んだが、
我々にとって、もっともしっくり来る「ウーパールーパー」という名前は
どこからきたのか?
実は、この「ウーパールーパー」という名前は、
全く日本国内でのみ通用する呼び名であって、日本以外では通用しない。
何故なら、この「ウーパールーパー」という名前は、
日本でつけられた名前だからである。
この「ウーパールーパー」という名前が初めて使われたのは1985年、
あるインスタント焼きそばのTVCM内においてである。
そのときに考え出され、つけられた名前が「ウーパールーパー」であった。
(もともとは「スーパールーパー」となるはずだったのが、
 「スーパー○○」という名前があまりに多かったため、
 「ウーパー」になった、という話もあった)
そう、はっきりいってしまえば、これはこのメーカーが勝手につけた名前で、
動物の品種名というよりは、ニックネームに近いものだったわけだ。
いわば、日本でのみ通用する芸名といっていい。
ところが、そのTVCMをきっかけにして、
この「メキシコサンショウウオ」こと「アホロートル」が大ブレイクしたため、
それらの正式な名前を抑えて「ウーパールーパー」という名前が
大々的に一人歩きしていったのである。

その可愛らしい姿から、掌サイズの姿を想像することの多い
「ウーパールーパー」だが、実際には最大で30cmほどの大きさになる。
無論、形はあのままだ。
寿命も長く、上手く飼えば20年ほど生きる個体もいるらしい。
「絶滅に瀕している」というニュースを聞けば、
ああ、見た目通りにか弱い生物なんだ、と思ってしまうが、
実はこの「ウーパールーパー」、サンショウウオの仲間であるため、
同種同様に驚異的な再生能力を持っている。
手足や尻尾、エラなどが再生修復するのはもちろん、
傷ついた内蔵まで再生することが出来るという。
サンショウウオは、半分に引き裂いても元に戻る(実際には無理だろうが……)
再生力を持っていると信じられ、「ハンザキ(半裂)」と呼ばれることが
あるらしいが、それに匹敵する再生能力を持っているわけだ。
水棲の有尾類としては、水質汚染や高水温にも強く、
さらに先述の超再生能力と合わせて、
かなりしぶとい生物の様にも思えるのだが、
さすがに人間による環境破壊には抵抗し得ないらしい。

ペット、あるいは食用として、大いに流通している裏で、
天然の「ウーパールーパー」は今、絶滅の危機に瀕している。
もちろん、「種」としては人間の管理のもといくらでも増やせるわけだが、
だからといって、本来の自然の中で生きている「ウーパールーパー」が
絶滅してしまって良いわけはない。

なんとか、この絶滅の危機を乗り越えて、
「種」としての再生に期待したいものだ。

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