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特撮、テレビ

スパイダーマン

投稿日:

By: *Yaco*

あれは、小学生か中学生ぐらいのころだったと思うのだが、
ちょうど夕方の6時くらいから、アニメ版の「スパイダーマン」を
放送していた。

たしか、サンテレビだった。
アメリカで放送されていたアニメ「スパイダーマン」に
日本語のセリフをつけたもので、当時の自分が見ても
ひと昔前のフィルムだった。
いつも見ている日本のアニメーションとは、
根本的な所で「何か」が違っており、
それはそれで楽しいアニメであった。
(今、思い起こしてみると、それは「トムとジェリー」や
 「トランスフォーマー」など、アメリカ産アニメーションに
 共通するものだったので、やはり文化的な違いから来る
 「違和感」だったのかも知れない)
調べてみた所、どうも自分が見ていたのは
1967年から1970年にかけて、アメリカで放送されていた
アニメシリーズだったようで、
日本では1970年代から1980年代にかけて、
放映されていたらしい。

そのストーリーについては、あまり詳しいことを覚えていない。
記憶が正しければ、確かカメラマンの青年が
スパイダーマンに変身(変装)して、毎回、悪人たちと戦っていた。
手首の部分から発射される糸を、何かに引っ掛けて、
まるでターザンの様にスイングしながら移動する。
大方の場合、ニューヨークの町並みを下に見ながら
スイスイとスイングしていたが、
はたして糸の先が何に引っかかっているのか、
毎回、不思議に思っていた記憶がある。
オープニングテーマなどは、完全にアメリカ版そのままで、
子供の耳には「スパイダーマン」という単語しか、
聞き取ることは出来なかったが、
結構、かっこいい曲であった。

それから十年か二十年後、
アメリカで「スパイダーマン」の映画が製作された。
こちらはアニメーションではなく、実写映画だったのだが、
CGをふんだんに使用することにより、ニューヨークの摩天楼を
スイスイとスイング移動するスパイダーマンが再現された。
スパイダーマン誕生のシーンから映像化されており、
ああ、子供のころに見ていたスパイダーマンには、
こんなバックグラウンドがあったのかと、感動したものである。
この映画化が好評だったのか、
映画「スパイダーマン」はシリーズ化され、
現在、数本の映画が、レンタルビデオ店などに並んでいる。

さて、ここまではいい。
ここまでで取り上げた「スパイダーマン」は、
我々が、ごく普通に思い浮かべる「スパイダーマン」だ。
いわば、本家「スパイダーマン」といっていい。
日本には、もうひとつ「スパイダーマン」がある。
1978年、東映がTVシリーズとして製作した
「スパイダーマン」である。
もちろん、名前が同じだけの、
全く別のキャラクターというわけではなく、
我々が良く知る、赤と青の全身タイツに身を包んだ
あの「スパイダーマン」だ。
……。
これを読んでいる人の中には、
ちょっと混乱している人もいるかもしれない。
だが、東映の製作したヒーロー番組の1つとして、
あのアメリカンヒーロー「スパイダーマン」があるのである。
一体、それはどんな番組だったのだろうか?

実は、かつて東映とマーベル・コッミク社の間で、
「5年間にわたり、お互いのキャラクターを自由に使用してよい」
という契約が交わされていた時期があり、
(調べてみた所、3年間という話もあった)
その期間中に、東映がマーベル・コミック社のキャラクターの中から
「スパイダーマン」を選び、これをヒーロー番組として
製作することになった。
問題は、契約の中に
「お互いのキャラクターを自由に使用してよい」
という一節があることだ。
これを言葉通りに受け取れば、別段、
アメリカ版の「スパイダーマン」に準拠していなくても、
極端な話、悪役として登場させてもいいようにも、受け取れる。
(もちろん、実際にはその辺り、
 もっと細かい取り決めがあったのかもしれないが……)
この「自由にしてよい」という、取り決めに従って、
日本の特撮ヒーローテイストをミックスさせて生み出されたのが、
東映版「スパイダーマン」というわけなのである。

さて、日本の特撮ヒーローテイストが取り入れられたというが、
具体的には、どのような設定の変更が行われたのか?

まず、舞台はアメリカではなく、日本である。
スパイダーマンに変身するのも、アメリカ人のカメラマンではなく、
日本人のオートレーサーへと変更された。
まあ、これは当然だろう。
日本国内で製作する以上、ここの所は変更しておかないと、
番組が作りにくくて仕方が無い。
アメリカ版の「スパイダーマン」が、
特殊なクモに噛まれて超人的な力を得たのに対し、
東映版「スパイダーマン」では、
宇宙人・スパイダー星人からクモの能力と、
強化服スパイダープロテクターを始めとする、各種装備を与えられる。
思わず、何だ、スパイダー星人って!?と突っ込みたくなるが、
このスパイダー星人はすぐに死んでしまうので、
物語にはほとんど登場しない。
この「スパイダーマン」が戦うのが、銀河系を荒し回る侵略者で、
かつてスパイダー星を滅ぼした「鉄十字団」である。
そのネーミングからは、全く宇宙っぽさを感じないのだが、
一応、地球侵略を狙う宇宙人ということになる。
まあ、地球侵略を謳ってはいるものの、
いつも活動しているのは、東京近辺の地域に限られているので、
勢力的には、それほど大きいものではないのかもしれない。

この「鉄十字団」が、毎回、マシーンベムと呼ばれる
「怪人」を繰り出し、これとスパイダーマンが戦うというのが、
基本的な番組のストーリー構成である。
「怪人」の他にも、一般戦闘員が登場するのだが、
これらは「仮面ライダー」のショッカー戦闘員と同じく、
ひと山いくらのヤラレ役である。
スパイダーマンがこれらと戦い、ひととおり倒してしまうと、
突如として「怪人」が巨大化する。
そんな能力があるのなら、最初から巨大化して暴れ回った方が、
よほど効率的に地球侵略が出来ると思うのだが、
毎回、番組の終盤に至るまで、巨大化することは無い。
一方、これと戦うスパイダーマンは、巨大化することが出来ない。
当然、そのままの状態ではサイズ差がありすぎて、
まともに戦うことも出来ない。
では、どうするのか?というと、スパイダー星人から貰った
巨大宇宙戦艦マーベラーを呼び寄せるのである。
スパイダーマンは、このマーベラーに乗り込み、
この宇宙戦艦を巨大ロボット・レオパルドンへと変形させる。
このレオパルドンを操り、巨大化した敵の「怪人」に
トドメを刺すのである。

基本的なストーリーラインに、
日本とアメリカの違いがあることは仕様が無い。
アメリカ版アニメでは、様々な敵と戦っていたスパイダーマンだが、
東映版では、「鉄十字団」という組織との間に因縁が生じ、
この組織との戦いにのみ終始しているワケだが、
この辺りは、チャンバラ時代劇から続く、日本のヒーローものの
1つのお約束といえる展開なので、
ここにツッコミを入れるのは無粋というものだろう。
また、アメリカ版と違い、毎回、登場シーンでは派手な見栄を切り、
毎回、工夫を凝らした名乗りを上げているのだが、
これもまた、日本のヒーローとしては1つのお約束なので、
見て見ぬ振りをするのが、大人の対応というものだ。
敵が宇宙人という点はちょっと引っかかるが、
「怪人」が出てくる点に関しては、アメリカ版アニメでも、
日本のものとは違いがあるものの、
似たような存在の者は出てきていたので、そうおかしなことでもない。

だが、この「怪人」が、いきなり巨大化するというのは、
いくら何でもやり過ぎである。
これと対抗するために、スパイダーマンが巨大ロボットを操縦する
というのも、やはり違和感が拭いきれない。
そこまで、独特の戦闘スタイルで
スタイリッシュにかっこよく戦っていたものが、
ロボットに乗った途端、そのスタイリッシュさが無くなり、
ドタドタとした特撮巨大ロボット特有の、泥臭い戦いになってしまう。

日本の特撮ヒーロー番組というのは、
玩具メーカーをメインスポンサーにしていることもあり、
どうしてもそちらからの意見を取り入れなければならないワケだが、
この東映版スパイダーマンに巨大変形ロボットが登場したのも、
そういう事情があったようである。
(実際、変形ロボット玩具・レオパルドンは良く売れたようだ)
もしこれが、昭和の時代ではなく平成の現代だったとしたら、
スパイダーマンが別の形態にフォームチェンジしたり、
スパイダーマン2号が現れたり、
ロボットの2号機が登場していたかもしれない。
そんなことにならず、巨大ロボットの登場だけですんだというのは、
果たして幸運だったのか、どうなのか?

この東映版スパイダーマン、前述した
「5年間はお互いのキャラクターを自由に使用してよい」
という契約があったため、この期間が過ぎてからは、
これを扱うのが、非常に面倒な作品になってしまった。
そのため、再放送も無く、映像化もされることが無かったのだが、
21世紀になってようやく、DVDボックスが販売された。

このDVD以外では、まともに番組を見ることが出来ない、
非常にレア度の高い、特撮作品なのである。

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