前回、悪の組織の怪人のデザインについて、
「仮面ライダー」のショッカー・ゲルショッカーの怪人群について
検証してみた。
今回は前回に続き「仮面ライダーV3」、
デストロンの怪人群について見ていきたい。
デストロン怪人は、第1話から順に
「ハサミジャガー」、「カメバズーカ」、「イカファイア」ときて、
「動物」+「武器」か?となるのだが、
4体目の怪人は「テレビバエ」である。
どうやらデストロンの怪人作製のコンセプトは、
「動物」+「道具」ということらしい。
だがこの後、「動物」と組み合わされる道具を挙げていくと、
「マシンガン」、「ナイフ」、「ハンマー」、「ノコギリ」、
「レンズ」、「カミソリ」、「ピッケル」、「ジシャク」、
「ドリル」、「ボイラー」、「ミサイル」、「バーナー」、
「クサリガマ」と続いていくことになる。
パッと見た感じでは、物騒なアイテムや武器が多い。
「レンズ」、「ジシャク」、「ボイラー」などは、
物騒さを感じさせない、ごく普通の道具だが、
「マシンガン」、「ミサイル」、「クサリガマ」などは
完全に武器である。
「ナイフ」、「ハンマー」、「ノコギリ」、「カミソリ」、
「ピッケル」、「ドリル」、「バーナー」などは、
扱い方を間違えると、人を傷つける様な道具ばかりである。
ひょっとすると、怪人開発陣の中に
「タカ派」「ハト派」「中間派」といった
派閥があるのかも知れない。
この路線は、第30話でドクトルGが倒されるまで続く。
だが、第31話で新幹部・キバ男爵が着任すると、
怪人のデザインコンセプトが変わる。
「ドクロイノシシ」、「オニビセイウチ」、「ユキオオカミ」など、
「牙」を持つ動物がモチーフになる代わりに、
「道具」の要素がきれいに消えて無くなる。
「ドクロ」、「オニビ」、「ユキ」など、
何らかの枕詞はつくものの、そこに統一性は見出せない。
だが、当のキバ男爵が35話でV3に敗北、
「牙一族」は、わずか5話で退場してしまう。
キバ男爵に変わってデストロン幹部となったのが、ツバサ大僧正だ。
当然、怪人のデザインも一新され、
「火炎コンドル」、「木霊ムササビ」、「殺人ドクガーラ」など、
「飛行」する生物をモチーフにした怪人がメインになる。
やはり「道具」の要素は0である。
だが、このツバサ大僧正も40話でV3に敗北、
「ツバサ軍団」も、わずか5話ほどでの退場となる。
続いてデストロン幹部となったのが、ヨロイ元帥。
これが最後のデストロン大幹部となるのだが、
当然、彼の着任に伴って怪人デザインの一新が図られ、
「ガルマジロン」、「カマクビガメ」、「カタツブラー」など、
「甲羅」「殻」を持つ生物が、怪人のモチーフになる。
この後もその路線で行くのかな?と思っていると、
「サイタンク」、「シーラカンスキッド」、「オニヒトデ」など、
全く「甲羅」も「殻」もない生物がモチーフとなった怪人が続き、
そのままヨロイ元帥も敗北、デストロンは壊滅してしまう。
決して多くない「ヨロイ族」であったが、
終盤、デザインコンセプトが一貫できなかったのは、
度重なる敗北ですでに組織が疲弊し切っており、
怪人製作現場もまともに機能していなかったものと思われる。
このデストロンでは、幹部によって
怪人のデザインコンセプトが変わるという変化が見られた。
怪人の製作において、現場責任者である幹部の発言力が
高かったのだろう。
ただ、そうなると怪人のクオリティが
幹部のセンスによって左右されるようになり、
結果として、キバ男爵、ツバサ大僧正の早期敗北に繋がった。
無能な上司が、現場に口出ししすぎるとこうなるという、
まさに見本の様な組織であった。
続く「仮面ライダーX」、ゴッド機関の怪人デザインは、
大きく前期、後期に分けることが出来る。
前期は「ネプチューン」、「ヘラクレス」、「メドウサ」といった、
ギリシャ神話をモチーフにした怪人群が製作された。
前期の幹部にしても「アポロガイスト」と、
これまたギリシャ神話のアポロが、モチーフとなっていた。
これらは神話怪人と呼ばれている。
動植物をモチーフにしていたショッカー、ゲルショッカー、
デストロンとは違い、なかなかオシャレな所がある。
後期に入ると、デザインコンセプトは一新される。
「ジンギスカンコンドル」、「ガマゴエモン」、
「サソリジェロニモ」と、
実在の人物と、動物を掛け合わせた、
悪人軍団と呼ばれる怪人たちが、用いられるようになる。
悪人軍団、と銘打ってはいるものの、
ジンギスカンやジェロニモなど、悪人と言い難い人物まで
モチーフになっている。
さらにこの悪人軍団の中には、
「ルパン」、「ファントマ」などの架空の人物や、
「フランケン」、「ドラキュラ」といった
人外のモンスターも含まれていた他、
「バイキング」といった、
個人以外をモチーフにしたものもあり、
デザインコンセプトのブレを感じさせる。
「ヒットラー」や「カポネ」など、
割と近代の人間もモチーフになっており、
クレームがつかなかったのか、気になる所である。
「仮面ライダーアマゾン」には、ゲドン、ガランダー帝国という
2つの悪の組織が出てくる。
この2組織は、活動時期が重なることはなかったのだが、
怪人については、どちらの組織でも
「獣人」と呼ばれるものを使っていた。
この点を考えると、ゲドンとガランダー帝国には、
緊密な繋がりがあり、ゲドンの壊滅後、
その怪人製作班を、ガランダーが受け継いだものと思われる。
「クモ獣人」、「獣人吸血コウモリ」、「カマキリ獣人」と、
基本的に動物をモチーフにしているようである。
しかし「獣人」の「獣」には、
「全身が毛で覆われ、四つ足で歩く動物」
という意味がある。
そういう意味では、「クモ」も「吸血コウモリ」も「カマキリ」も、
決して「獣」とは言い難いモチーフである。
「獣人」というネーミングには、「獣」の意味はなく、
ただ「動物」という程度のニュアンスなのかも知れない。
だが、ガランダーの「獣人」の中には
この「動物」の範疇からも逸脱した「キノコ獣人」が存在する。
ゲドン、ガランダーを通じ、本来の意味での「獣」が
「獣人」のモチーフとなっていたのは、
「モグラ」、「ヤマアラシ」、「黒ネコ」、
「モモンガー」くらいのものである。
トラやライオン、クマなど、
もっと強そうな動物をモチーフにすればいいものを、
どうしてこんな小動物ばかりをモチーフに選んだのか、
そのセンスには首をひねらざるを得ない。
アマゾンライダーは日本語の不自由なライダーであったが、
同じように敵組織のゲドンやガランダー帝国も、
ちゃんと日本語を理解していなかったのかも知れない。
今回は「V3」「X」「アマゾン」の怪人について、
そのデザインコンセプトなどについて検証した。
次回は「ストロンガー」以降の組織について、
同様に、分析・検証を進めていきたい。