
By: Jun OHWADA
ちょっと前に、ネットのニュース記事を読んでいたら、
こういうタイトルの記事があった。
「24時間TVは感動ポルノだ」
24時間TVというのは、知っている。
これは自分が子供のころからあった番組で、
要は24時間、ダラダラと続ける特別番組のことである。
「愛は地球を救う」をキャッチフレーズにした、
慈善・チャリティーを謳った番組で、
番組放送中は、頻繁に募金の募集をやっていた気がする。
よくいくスーパーマーケットの中にも、
この番組の募金箱が設置されたりすることもあり、
TVという枠を超えた、一種の大イベントの態がある。
個人的に好きか嫌いかでいえば、
はっきりと嫌いな番組であった。
番組の「偽善性」が〜、などというわけではなく、
この24時間テレビが放送されると、
毎日楽しみにしていた、アニメや特撮番組の再放送が
中止になっていたからで、
場合によっては、本放送の子供番組までお休みになっていた。
こういうマネをしていては、子供の支持は得られない。
当然、子供心に24時間TVに対する嫌悪感が刷り込まれ、
これをそのまま、この歳まで持ち越してしまった。
また、我が家の両親も、特にこの番組を見る様なこともなく、
この番組をやっているときは、
他のチャンネルを見るようにしていたので、
結局、我が家の3兄弟は24時間TVを見ることのないまま、
大人になっていったのである。
「三つ子の魂、百まで」というが、
そういう育ち方をしてきたせいか、この歳になっても
改めて24時間TVを見ようという気は、沸いてこない。
話がそれたが、今回のポイントは「24時間TV」の方ではなく、
「感動ポルノ」の方である。
「感動ポルノ」って何だ?
自分たちの世代に「ポルノ」の意味は?と聞くと、
多分、100人中100人が「エロ」と答えるだろう。
ひょっとしたら、ロックバンドの「ポルノグラフィティ」と
答える人もいるかも知れないが、
自分たちの世代では、ごく僅かではないだろうか?
英和辞典で「ポルノ」という言葉を引いてみると、
「porno」単体では項が存在しておらず、
「porno-grapher」と「porno-graphy」の2つの項しかなかった。
それぞれ「エロ作家、春画作家」と
「好色文学、春画、エロ本」の意味である。
これから考えても「ポルノ」=「エロ」というのは、
割と的を射た答えのようである。
ここから「感動ポルノ」という言葉の意味を考えてみると、
これは「感動的なエロ」ということになるだろうか?
ちょっと意味が不明だが、
感動の涙が流れるほどにエロいということだろうか。
24時間TV……、いつのまにそんな「エロ」路線に……。
近年、24時間TVもマンネリ気味で、
視聴率が落ちてきている、なんていう話も聞いていたが、
まさかそういう方向で、テコ入れを図るとは思わなかった。
これからは「愛は地球を救う」ではなく、
「エロは地球を救う」がキャッチコピーになるというのか。
もちろん、そんなはずはない。
つまり、ここでいう「ポルノ」というのは、
今までの「エロ」という意味での「ポルノ」と、
違う意味で使われているのだ。
最初に「感動ポルノ」という言葉を使った人間にいわせれば、
この「ポルノ」という言葉には、
「ある特定の人たちをモノ扱いして、
他の人が得をするようになっている」
という様な意味を込めているらしい。
たしかに、従来の「エロ」の意味であったとしても、
被写体(これはあくまでも「ポルノグラフィティ」の場合だが)
を1つのモノとして考えれば、
それの載った写真なり本なりを、売ったり買ったりすることによって、
他の人が「得」をする構造になっているといえる。
まあ、早い話、誰かをネタにして一儲けすることを、
「ポルノ」と言い切っているわけだ。
この意味でいうと、「感動ポルノ」をいうのは、
誰かに「感動」的なことをやらせ、
それをネタにして一儲けする、という様な意味になるだろうか。
先の「24時間TVは感動ポルノだ」の発言など、
24時間TVの企画で、身体障害者に様々なことをやらせ、
それを感動的な話に仕立て上げて、一儲けを企むという様なことを、
暗に批判した言葉、としてもいいかもしれない。
従来の「エロ」の意味でのポルノが、
余り良い意味ではないものの、
どこか明るく滑稽な感じがするのに比べ、
この「感動ポルノ」のポルノは、
感動を扱っているはずなのに、ひどく暗く、
汚らしいものの様に感じるのは、
たとえそれが感動目的であるとはいえ、
障害者を見せ物にしているという構図ゆえ、だろうか?
昨今、この意味で「ポルノ」という言葉が使われることが、
多くなってきているようだ。
この「感動ポルノ」の他にも、
・フードポルノ
・キャリアポルノ
・愛国ポルノ
なんていうものもあるらしい。
「フードポルノ」なんていわれれば、
これまでは「おっぱいプリン」なんていうのを
思い浮かべたりしていたし、
「キャリアポルノ」なんていわれれば、
キャリアウーマンのポルノ写真?とか考えていただろう。
「フードポルノ」というのは、SNSなどに
美味しそうな食べ物の画像を投稿して、
第3者の食欲を刺激するもの、ということらしいし、
「キャリアポルノ」というのは、
自己啓発書などを読んで、実際には何も変わっていないのに、
自分がレベルアップしたように錯覚することを指すらしい。
「愛国ポルノ」というのは、
日本の凄さを礼賛する様なTV番組や本を見て、
いい気分になる、というものらしい。
この「いい気分になる」というのが、
「ポルノ」の本質をついている様な気がする。
エロい写真などを見て「いい気分」になる。
感動的な番組などを見て「いい気分」になる。
うまそうな食べ物の写真を見て「いい気分」になる。
自己啓発書を読んで、成長した様な「いい気分」になる。
日本の凄さを聞いて「いい気分」になる。
そう考えると、これからも色々な「ポルノ」が
生まれてきそうである。