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バリゾーゴン

更新日:

今回は、ある映画の話である。

と、いっても、自分はその映画を見たことがない。
まあ、正確に言えば、今回の記事を書こうと思い立った際に、
動画サイトにて、その映画のタイトルを検索してみて、
その映画の一部分だけではあるが、見ることが出来た。
常識で考えれば、こんな状況でその映画について書くなんていうのは
あり得ない話である。
まあ、自分はその映画を見にはいかなかったのだが、
妹や弟をはじめ、自分の周りの人間が何人か、この映画を見に行った。
そしてこの映画を見に行った人間に感想を聞いた所、
感想を聞いた人間が全て、腹立たしげに「酷い映画だった」と吐き捨てた。
これは大概なことである。
普通、どんなにくだらない映画を見ても、
全員が全員、ここまで怒りを見せる映画というのはない。
少なくとも、自分が今までに見に行った映画の中には無かった。
だから、逆に、映画を見に行っていないにも関わらず、
その映画のことは、強く自分の記憶に残ることになった。
そう。
その問題の映画のタイトルこそが、「バリゾーゴン」なのである。

もう20年ほど前になるだろうか。
龍野市内にある映画のポスターが、大量に貼られた。
キツネのような顔をした女性たちと、
キツネの面をかぶった男性の描かれた、気味の悪いポスター。
ポスターの上部分には、

「原発のある村。
 女教員は便槽の若い青年の腐乱死体を愛していた…」

と、キャッチコピーが書かれている。
前回の「汲取式トイレ」の話で書いたように、
「便槽(べんそう)」とは、汲取式トイレにおける
し尿タンクのことである。
正直、わけのわからない文章だ。
汚いのか不気味なのか、あるいは笑えるのか?
ポスターの下部分には、

「渡邊文樹監督作品 バリゾーゴン」

と、映画のタイトル名が書いてあった。
自分が目にしたポスターに、書かれていたかどうかは
覚えていないのだが、ポスターの中には手書きで
「失神者、続出!」
などという煽り文句が書き込まれていたらしい。
上映は、普通の映画館ではなく、
市民会館の大ホールで行なわれるようで、
1日限り、というか1回限りの上映だったようだ。
映画といえば「怪獣映画」、というくらいの
非常にアレな映画観しか持っていない自分は、
このポスターを見ても、全く興味を引かれなかったのだが、
自分と違ってマトモな映画観を持っている人間は、
結構、このポスターによって興味を引かれたようだ。
身近なところでは、自分の妹と弟が、
このポスターに引かれたのか、この映画を見に行くことになった。

そして、映画が終わって帰ってきた妹と弟の感想が、
先述した通りの、怒りの酷評であった。
話を聞いてみると、この「バリゾーゴン」という映画は、
ストーリーがあって、役者がそれを演じている、
いわゆる普通の映画ではなく、実在の事件を取り上げた
ドキュメンタリー映画のようであった。
一応、再現ドラマ的なものもあるらしいのだが、
それとは別に、監督自身が事件の関係者に突撃取材した映像なども
多く含まれていたらしい。
その取材にしても、監督の一方的で強圧的なものだったようで、
それを見た妹たちも、それに強い不快感を感じたようだ。
さらには、再現ドラマの質も低く、
映画そのものの構成もめちゃくちゃであったらしく、
その辺りが、さらに視聴者の怒りを買った原因らしい。

この「バリゾーゴン」という映画は、先に書いたように
実在の事件を取り上げて、監督が事件関係者に突撃取材したり、
ヘタクソな役者を集めて、再現ドラマを作ったりし、
これらの映像素材を編集したものになっている。
その事件というのが、1989年2月28日に起こった
「福島女性教員宅便槽内怪死事件」である。
この事件の詳細については、また次回にでも取り上げるとして、
非常にバッサリと事件の内容を説明すると、
ある小学校の女教師の住んでいた教員住宅の、
汲取式トイレの便槽内から、男性の死体が発見されたというものである。
どうコメントしていいのかよく分からない、
非常にコメントし辛い事件なのだが、
まあ、この事件の概要を聞いて、全ての人が思う感想は1つだろう。
すなわち「なんで、よりにもよって、そんな所で死んでんの?」。
状況から、男性は屋外の汲取口から便槽内に侵入し、
そこが思った以上に狭く、動けなくなってしまい、
そのままそこで凍死するに至った、と考えられた。
汲取口は直径36㎝と狭く、
死体を引き出すことが出来なかったため、
死体を取り出すために、ショベルカーで便槽周りを掘り返して
便槽を破壊しなければならなかった。
警察はこれを、男性が覗き目的で便槽内に侵入した、と判断した。
ただ、現場にはいくつか不審な点もあったため、
事件後、他殺説なども流れた。
問題の男性が原発関連の企業で働いていたこと、
村長選挙で応援演説などをしたことなどから、
複雑な背景を持つ、謀殺なのではないか?との声も聞かれたのだが、
結局、警察の判断はくつがえることはなかった。

そう。
この「バリゾーゴン」という映画は、この事件が事故ではなく、
殺人事件であるという視点の元に作られているのである。
この事実を踏まえてみれば、ポスターの上部に書かれていた

「女教師は便槽の若い青年の腐乱死体を愛していた」

というキャッチコピーも、ある程度、
事件を踏まえて作られていることが分かる。
(ちなみに女教師と男性が
 恋愛関係であったというワケでは無さそうだし、
 男性の死体も腐乱していたわけでも無さそうだ)
だが、ポスターのイラストについては全く意味不明だ。
映画のポスターには、不気味なタッチで、
キツネ目の女性や少女が6人、キツネの面を着けた男性が1人、
描き込まれているのだが、こちらの方はどれも
事件とは関係無さそうである。
恐らくは、映画の内容とは全く関係のないイラストを用いて、
なんとか映画ポスターの体裁を整えただけのものなのだろう。

調べてみた所、この映画の上映は監督自身が日本中を回り、
龍野の場合と同じように、大量のポスターと
「失神者、続出!」と言ったような刺激的な煽り文句で人を集め、
自主上映の形で、行なわれていたらしく、
龍野市の場合と同じようなケースが、全国で見られた。
面白いのは、どこの会場でも龍野と同じように観客の不評を買い、
場所によっては「カネ返せ!」コールが上がったと言う所だ。
まだ、その当時は、今のようにインターネットが普及しておらず、
映画の評判などが手軽に調べられなかったため、
このような自主上映会を繰り返すことが出来たのだろう。
映画のタイトルである「バリゾーゴン(罵詈雑言)」というのは、
上映の後、観客から罵詈雑言を浴びせられる、
という意味だったのだろうか?

監督の渡邊文樹という人物について調べてみた所、
その作風は、大体、このような実在の事件を
ドキュメンタリーとして取り上げたものや、
社会的なテーマを取り上げたものが多い。
その作品のほとんどは、この「バリゾーゴン」と同じような
自主上映でやっているようである。

次回は、この「バリゾーゴン」の元となった事件、
「福島女性教員宅便槽内怪死事件」について取り上げてみる。

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