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燃費偽装

更新日:

ちょうど、我が家がイタチ捕獲作戦で熱くなっていたころ、
世間では「三菱自動車」の、燃費偽装問題で熱くなっていた。

自分がこの件について詳しいことを聞いたのは、
軽トラを借りてきてくれた弟と一緒に、昼飯を食べたときである。
弟は、自動車関連の仕事をしているので、
ある程度、業界の事情に通じており、
こちらの知らないようなことまで、色々と教えてくれた。

あれは、ちょうど1匹目のイタチを捕獲したころのことだ。
TVでは、連日、三菱自動車の燃費偽装問題が
トップニュースで報じられていた。
どこのマスコミも、一様に三菱自動車へ
激しいバッシングを繰り返しており、
徹底的にこれを糾弾している状況だった。
もちろん、ここまで激しく叩かれるのには、それだけの理由がある。

三菱自動車はかつて、自社製品の不具合を
運輸省(現・国土交通省)へ報告せず、
ひた隠しに、隠蔽し続けていたことがあった。
いわゆる「三菱リコール隠し事件」である。
この「リコール隠し」は、23年間の長きに渡って、
10車種以上、69万台の規模で行なわれていた。
この件では、不具合のあったトラックが
走行中に車輪脱落を起こし、近くにいた歩行者を死亡させる事件や、
制御不能に陥ったトラックが事故を起こし、
運転手が死亡するなど、人的被害も出た。
すでにこの事故以前に、国から全ての不具合情報を
開示するように求められていたが、
その際においても尚、一部の情報を隠匿していたため、
当時の三菱自動車からは、逮捕者が出るまでの事態となった。
ユーザーのみならず、全く無関係な一般人まで
死なせてしまう事故を起こしたのだから、
当時の世間は、激怒したといっていい。
三菱自動車の評判は地に堕ち、その売り上げは激減した。
当然のことである。
誰が、そんないい加減な会社の車に乗りたいと思うだろう。
この一連の不祥事により、
国土交通省からは、1週間に1回の報告義務を課せられ、
警察庁からは、車両入札における指名禁止の措置を受けた。
国土交通省にしてみれば、自分たちの情報開示請求に従わず、
人命に関わるような被害を出したわけだから、
いっそのこと、潰してしまいたいくらいの気持ちは
あったかも知れない。
この一件により、三菱自動車は廃業の危機に陥ったが、
三菱グループによる様々な救済を受け、
何とか存続することとなった。

この一連の「リコール隠し」事件で騒がれたのが、
2000~2004年にかけてである。
この事件から約15年、ようやくこの事件が
過去のものになりつつあったときに起こった、
今回の「燃費偽装」である。
前回の「リコール隠し」の一件では、
三菱自動車関係者からの内部告発があり、
それによって、一連の問題が世の中に出た。
事は重大であったが、一応、
会社内の自浄作用が働いたといってもいい。
だが、今回の「燃費偽装」では、業務提携し、
自動車の供給を受けていた日産自動車の方から、
疑惑の声が上がり、そちらの方から一件が表に出た。
今回の件では、三菱自動車の自浄作用は
全く働かなかったのである。
これは、前回の「リコール隠し」に比べれば、
やっていることが重大ではない、
という認識があったのかもしれない。

ともあれ、あの15年前の事件を覚えている人間は多い。
なんといっても、車に詳しくない自分でさえ、
よく覚えているほどの事件なのだ。
「また、やりやがった!」というのが、
前回の事件を知っている人間の、素直な感想であっただろう。

今回の事件は、燃費データの改ざんである。
まあ、ほとんどの自動車では、カタログに載っている「燃費」と、
実際に走ってみた際の「燃費」の間には、
大きな開きがあるのが普通だ。
これは、カタログに載せる「燃費」を測定する際、
屋内のシャシーダイナモ上で、一定の空気抵抗を与えた状態で、
最適燃費速度に達した状態から、測定を開始しているからである。
早い話、実際の走行条件とは全く違う状態で
計測しているわけなのだが、
これは、国がそういう条件で「燃費」を計算しなさいと
決めていることなので、各自動車メーカーは
それに則った条件で「燃費」を計測して、
そこで出た数字を国に報告し、カタログに載せているのである。
もちろん、各社ともに同じ条件で「燃費」を計測しているわけだから、
それぞれのカタログを付き合わせ、「燃費」を比較できるわけだ。
三菱自動車は、その条件を満たさない状態、
早い話が「いい数字がでるような状態」で「燃費」を計測し、
その数字を国に報告、カタログに載せていたわけである。

それが発覚したのは、次期モデルの開発にあたり、
日産自動車が当該車種の燃費データを測定してみた所、
三菱自動車のデータと余りに乖離していたためである。
そのため、日産から三菱に通報があり、一件が明るみに出た。
当初は、「燃費偽装」は軽自動車4車種ということだったが、
次第にアレも、コレも、ということになり、
ついには、ほとんど全車種で
「燃費偽装」していたことが明らかになった。
まあ、一度覚えてしまったイカサマのウマ味が、
爆発的に全車種へと広まっていくのは、当然なことかも知れない。

どうやら弟の周りにも、三菱車を所有している人間が
何人かいるようで、その人たちも混乱しているようである。
「燃費」が変わることになれば、当然、
それまで受けることのできていた「減税」なども無くなり
維持費も大きく変わってくる。
メーカーへの信頼が無くなり、
車を手放そうという人も出てくるだろうが、
中古車ショップにしても、そんな曰く付きの車を
高値で買い取るとも思えず、
安く買いたたかれることにもなりかねない。
まさに、踏んだり蹴ったりというのは、こういうことをいうのだろう。

弟の言によれば、今回の一件で、
さすがに三菱自動車も存続していくことは難しい、
恐らくは、三菱グループからも見放され、
にっちもさっちも行かなくなるが、
同じく今回の一件に関わった日産自動車あたりが、
三菱自動車を傘下に入れるのではないだろうか、ということであった。
その後、まさに弟の予想通りに事が運んだわけだが、
弟にいわせれば、日産自動車は三菱の電気自動車技術や
ハイブリット技術などを手に入れて、さらに企業規模で
業界第1位のトヨタ自動車に迫るつもりだろう、ともいっていた。
まさにその通りになっているのを見て、
さすがに業界の事情に詳しいなと、感心してしまった。

ひょっとしたら第2、第3の
三菱自動車が出てくるかも知れない、と言っていたが、
実はコレについても、スズキが規定の方法で
「燃費」を測定していなかったことを明らかにした。
スズキ自体は、誤差の範囲、問題なし、としているが、
国からの調査が入り、その結果が出るまでは、
何ともいえないだろう。

これを機に、車の「燃費」は全て、
国の機関で測定するような、構造改革が望まれる。

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