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駅そば

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「駅そば」と呼ばれるものは、日本全国に存在している。

基本的には駅の構内において、蕎麦を提供している店、
あるいは、その店で提供されている蕎麦を指す言葉だ。
基本的にはかなり安価な蕎麦で、
いわゆる立ち食い蕎麦に、近いものになっている。
もちろん、蕎麦は和蕎麦であり、
温かいツユに入った「かけそば」の形を取っているのが、
定番の姿である。

ところが姫路市を中心とした西播地方では、
「駅そば」といえば、JR姫路駅のホームにある
そば屋をさしている。
そば屋としてはかなり安価な部類に入り、
もっとも安いもので1杯360円、
(天ぷら駅そば、きつね駅そば)
もっとも高いものでも1杯440円である。
(カレー駅そば)
持ち帰りの駅そばも販売されており、
こちらは2人前入りで540円ということになっている。
この持ち帰り駅そばには、かき揚げも2枚ついており、
なかなかお得な、お持ち帰りセットになっている。
この店のホームページには、
写真入りのメニューがあり、
それを見ると、ある特徴に気付く。
3種類の麺が使われているのだ。
ひとつは「うどん」。
ひとつは「和そば」。
そして最後のひとつが「えきそば」である。
「うどん」はともかく、「和そば」と「えきそば」って、
何が違うというのだろうか?
ホームページの写真を見る限りでは、
「和そば」と「えきそば」で違っているのは、
「麺」そのものの「色」である。
「和そば」は普通の人が蕎麦として認識している、
蕎麦粉をねって麺状にした、ごく普通の蕎麦である。
それに対し、「えきそば」は「白」というよりかは、
薄い「黄色」をしている。
パッと見た感じ、これにもっとも近い麺は
ラーメンなどに使われる「中華麺」である。
そして実際に「えきそば」に使われている麺は、
見たままの「中華麺」なのである。
ラーメンなどに使われる「中華麺」が、
和蕎麦やうどんに使われる「和風だし」の中に入っている、
それこそが、西播地方で「えきそば」として知られている
麺料理なのである。

この「えきそば」が誕生したのは、
終戦後間もない昭和24年(1949年)のことだ。
終戦後の物資不足のおり、小麦粉は統制品にされ
自由に入手することは出来なかった。
その代わりに、そば粉とこんにゃく粉を混ぜて
「麺」を作り出した。
この「麺」は、「そば」というよりは
「うどん」に近いものだったようだ。
だが、このそば粉とこんにゃく粉の「うどん」は伸びやすく、
さらに腐敗が早いという弱点があった。
その後、小麦粉の統制がなくなった後も試行錯誤を重ね、
腐りにくい鹹水を使った「中華麺」を使い、
これと和風ダシを合わせた「えきそば」を作り上げた。
この当時、市内のうどん屋では、
うどん1杯が30円だったのが、
この「えきそば」は1杯50円であった。
エラい高価だな、と思う人もいるだろうが、
実はこれは「えきそば」を入れている
フタ付き容器の値段も合わせた価格であり、
これを店に返却すると、10円が返ってくるシステムであった。
つまり、実質的には1杯40円だったということである。
それでも、市内のうどん屋よりも3割ほど価格が上だったのは、
駅のホームという場所にカネがかかっており、
その分も価格に上乗せされていたからかも知れない。
そしてフタ付き容器に入れ、
その容器代も込みで販売していた所を見ると、
当時は、店で買った「えきそば」を持って列車に乗り、
列車の中でこれを食べる人がいたということだろう。

実は「えきそば」と同じ、
和風ダシの中に「中華麺」を入れたものは、
JR姫路駅のみならず、関西各地で食べることが出来る。
その場合は「えきそば」といわず、「黄そば」と呼ぶらしい。
実際、自分の通っていた高校の学食でも、
「そば」という名前で販売されていたのは、
和風ダシの中に「中華麺」の入った「黄そば」であった。
もっとも高校当時は、「黄そば」なんていう呼び方は知らず、
ただ普通に「そば」と呼んでいただけであった。
1杯100円で食べることの出来る「そば」は、
育ち盛りで腹ばかり減っていた高校生の自分にとって、
弁当を食べ終わった後、
もうちょっと食べたいという時に
手軽に食べられる1品であった。
この「黄そば」は、近畿地方を中心にして食べられているが、
その発祥がどこであるのかは、はっきりとしていない。
一説によれば、JR姫路駅の「えきそば」こそが、
「黄そば」の最初であるという話もある。
無論、この説には異論も多いのだが、
だからといって他に「黄そば」発祥の話があるわけでもない。
戦後、自然発生的に各地で誕生したという説もあるが、
正直それは疑わしいと思う。
自然発生的に誕生したのであれば、
日本各地で誕生していなければおかしい。
近畿地方でのみ食べられているということは、
どこか近畿地方で誕生して、それが広がったということだろう。
どこが元祖か分からないほど、一気に広がったというのは、
人が集まる「駅」という場所で
誕生したためではないだろうか?
そして大阪駅や京都駅という、
日本有数の巨大ターミナル駅ではなく、
姫路駅という「地方駅」で誕生したからこそ、
近畿地方のみに、広がったのではないだろうか?

現在、この「えきそば」は駅のみならず、
あちこちの食堂で販売されている。
自分の通っていた高校の食堂のように、
「そば」という名前で販売されている場合もあるが、
近年では「えきそば」の名前を冠して
販売していることもある。
駅とは全く関係の無い場所で
「えきそば」を販売するというのもおかしな話だが、
それだけ地域に根ざしたB級グルメとして、
認識されてきたということだろう。
最近ではスーパーなどでも、
レトルトやインスタントの「えきそば」が
販売されている始末である。

もちろんこれらを購入して
お手軽に「えきそば」を味わうのもいいだろう。
本物、元祖の「えきそば」は1杯360円と
かなり安価であるものの、
これを食べるには、JR姫路駅に赴かなければならない。
そうなると、「えきそば」の料金の他に、
乗車賃か入場料が、別途かかってくることになる。
(現在では、駅の外にも
 まねき食品が経営する、本家「えきそば」が出来ているので、
 こちらを利用することも出来るのだが……)

しかし、わざわざ駅に食べに行ったり、
スーパーでレトルトやインスタント食品を求めなくても、
「えきそば」「黄そば」は簡単に自作することが出来る。
スーパーの麺売り場には、茹で上げた中華麺や
袋入りの和風ダシが、ひとつ30〜50円ほどで販売されている。
これらを買って帰れば、
驚くほど安価に「えきそば」を作ることが出来る。
ともすれば、これに総菜コーナーにあるかき揚げを加えてもいい。
しかしそうして作ってみても、
やっぱり駅のホームで食べる味とは、
ひと味もふた味も違っている。

そこがやはり、本家の味ということなのかもしれない。

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