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植物 雑感、考察

水仙

投稿日:

うちの庭で、花をつける植物は多いが、
この寒い時期に、花をつけるのが「水仙」である。

ちょうど隣家との境にある、塀の真下辺りに群生しており、
雑草がほとんど無くなるこの季節において、
貴重な庭の彩りになっている。
塀の下から勝手に生えてきているものの他にも、
小さな花壇の中に生えているものもある。
こちらの方も、特に手入れをすることがなくても、
勝手に生えてきて、勝手に花を咲かせている。
花壇に生えているものの、
正直、雑草と変わらない扱いである。

花が咲き終わり、
緑だった葉が枯れ、しおれたころになると、
葉だけを掴んで抜き取り、
畑の隅の雑草置き場においておく。
そうすれば、ほどなく葉は腐りきり、土に帰る。
結構、大仰な葉が生えてきているが、
根元の部分を鷲掴みにして引っ張ると、
葉と茎の部分のみが球根から外れ、
わりと楽に回収することが出来る。
地面の中に残った球根は、再び季節がやってくると
緑の葉を伸ばしはじめる。
自分は、枯れた葉を抜き取って捨てるだけで、
残った球根に水をやることも、
肥料をまいたりすることもない。
それじゃあ、他の雑草に負けてしまうんじゃないの?
と思われそうだが、水仙はなかなかに強い植物で、
水仙の周りには、ろくに雑草も生えてこない。
水仙には、人間に有害な「毒」が含まれているので、
ひょっとしたら、これが他の植物の繁茂を
抑えているのかもしれない。

「水仙」はヒガンバナ科スイセン属に属している
多年生草本の総称である。
我々のイメージする水仙といえば、
概ね、白い花か黄色い花をつけるものだが、
実際には多様な種類があり、色や形も様々である。
先に書いた通り、全草に毒を持っており、
鱗茎は特に毒性分が多い。
これは、同じヒガンバナ科であるヒガンバナと
同様である。
水仙の致死量は10gといわれており、
鱗茎を浅葱と間違えて食べて死亡したり、
葉をニラと間違えて食べ、中毒を起こすこともある。
症状としては、強い食中毒症状と、
接触性の皮膚炎症状が起こる。
食中毒症状によって、
食べたものが吐き出されることが多く、
意外と死に至るケースは少ないのだが、
もちろん、最初から口にしない方がいいのは当然である。

ちなみにうちの庭には、ニラと水仙が両方とも生えており、
たまにニラを収穫して食べることがあるが、
この2つを間違えたことはない。
ニラを摘んでいると、あの独特の臭いがするし、
うちに自生しているものでいえば、
葉の大きさが全く違う。
もちろん、葉の大きさについては、
ニラ、水仙両方の種類によっては
似通ってくることもあるかもしれないが、
「臭い」については、水仙は全くの無臭であるため、
「臭い」の無いニラを見つけた場合は、
食べない方が良いだろう。

原産地はスペイン、ポルトガルを中心とした、
地中海沿岸地域で、ここから世界中に広がっていった。
日本には、中国を経て、
ニホンスイセンが持ち込まれたが、
これがいつの時代のことであるかは、
はっきりとわかっていない。
室町時代以前には、
日本に持ち込まれていたらしく、
室町時代に記された「下学集」(1444年)には、
「雪中花」という言葉で、水仙の記述がある。
「水仙」というのは、水の精を表す漢名であり、
水の傍に咲いている姿を、仙人に例えたもので、
これは中国の古典に由来している。

学名は「ナルキッソス」であり、
これはギリシャ神話に登場する
美少年の名に由来している。
彼はその美しさから、様々な相手に言い寄られるが、
これらを全て高慢に拒否し、恨みを買った。
そのため、女神ネメシスによって、
水に映った自分の姿に恋させられてしまう。
彼はひたすら水面を見つめ続け、やがて憔悴して死ぬ。
話を聞いているだけでは、まるでバカのような話だ。
現在でも「自己性愛性」の強い人間を、
「ナルシスト」と表現することがあるが、
これは、この物語の主人公、
「ナルキッソス」に由来している。
水面を覗き込む「ナルキッソス」のように、
水辺でうつむきがちに咲くので、この名前が付けられた。
「水仙」にせよ、「ナルキッソス」にせよ、
その名前が、神話に由来しているのは
面白い共通点である。

日本では、主に海岸付近で群生していることが多く、
兵庫県淡路島の灘黒岩水仙郷や、
福井県越前海岸の群生地は、全国的に知られている。
園芸家の中には、水仙の球根が海流に乗って日本に流れ着き、
そのまま野生化したのではないか?という人もいる。
ヨーロッパ系の水仙が
日本に持ち込まれたのは明治以降で、
チューリップやヒヤシンスとともに、
ごく一般的な秋植え球根植物として、
大正末期から需要が増え、栽培が盛んになっていった。

うちの庭でたくましく自生しているように、
日本の気候風土にあった強い植物なので、
栽培は難しくない。
(と、いうよりは放っておいても勝手に育つ)
しっかりと葉が枯れてから、これを取り除くようにすれば、
葉の中に残っていた栄養が球根に回収され、
次のシーズンへの栄養となる。
実際、現在うちの庭に植わっている水仙も、
もう10年近く、手をかけていないのだが、
毎年、きれいな花を咲かせている。

全く手間のかからない、
初心者でも簡単に育てられる花ではあるが、
かえって、手間ひまかけたい園芸ファンにとっては、
物足りないかもしれない花である。

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