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動物 雑感、考察

カメ

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最近では少なくなってしまったが、
この時期、池や川の側を通ると、
何かが水の中に落ちる音が聞こえたものである。

それは、ボチャンとひとつだけのこともあったし、
ボチャ、ボチャ、ボチャと、続けて複数聞こえることもあった。
最初はそれが何の音か分からず、
音のする方を見てみるのだが、
池にいくつかの波紋がたっているだけで、
一体、何が水に落ちたのかはよくわからなかった。
しかし、毎回「その」音がするので、
そこを通るたびに注意して見ていれば、
水辺の石の上に、複数のカメが上っており、
これが人の気配を感じて、水の中に飛び込んでいるのであった。
石の上にいるカメは、1匹だけのときもあったが、
多くの場合、複数匹のカメが狭い石の上に
折り重なるようにして上っていた。
実際、大きなカメの上に、小さなカメが乗っている姿を
何回も目撃している。

これは「甲羅干し」である。
は虫類、つまり変温動物であるカメは、
恒温動物である我々人間と同じように、
自ら「熱」を作り出すことが出来ない。
そのため、カメは暇があれば水の中から出て、
日光に身体を当てて、その熱を吸収しているのである。
水辺の石の上などで、日に当たっているのは、
外敵などが表れた際、すぐさま水の中に飛び込んで
逃げることが出来るからである。
童話「ウサギとカメ」にもあるように、
カメは陸上においては、非常に動きの鈍い生物である。
しかしその反面、水の中においては
陸上とは比べものにならないほど、素早く動くことが出来る。
そのため、カメたちは有事の際に
すぐさま水の中へ逃げ込める場所で、
日光に当たっているのである。

現在、池や川で見かけることの出来るカメのほとんどが、
アカミミガメである。
これは頭部の耳があるような位置に、
赤い模様の入っているカメである。
これは別名ミドリガメとも呼ばれるカメで、
日本ではミシシッピアカミミガメを指すことが多い。
日本古来の在来種に比べ、甲羅、本体ともに
やや派手な模様がついている。
1960年代に大ブームを巻き起こし、
原産国のアメリカからペット用として大量に持ち込まれたが、
ブームが去った後、飼い切れなくなったアカミミガメたちは、
自然の中に捨てられることとなった。
歪んだペットブームの象徴のようなカメである。
非常に繁殖力が強く、日本在来種のカメを圧倒し、
各地でその数を増やしている。
日本国内のみならず、世界においても
「侵略的外来種ワースト100」に選ばれている。
勝手に外国へ売り飛ばされ、
その上で散々な汚名を着せられているのだから
これは気の毒というしかない。

一方、その外来種によって圧迫されているのが、
日本の在来種であるイシガメである。
これは、古代から日本に棲んでいる伝統的(?)なカメである。
もう1種、このイシガメの仲間で、姿形がよく似た
クサガメというのがいる。
こちらも、永らく古代からの在来種であると考えられていたが、
最近の研究により、江戸時代に
中国か朝鮮から渡ってきたという説が、一般的になっている。
なんでも、江戸時代以前の記録には
クサガメの記録が一切残されていないことが、
その根拠らしい。
イシガメとクサガメは姿がよく似ているが、
これを分別する大きな特徴がある。
このクサガメ、漢字で「臭亀」とも書くように、
この亀を捕まえると、足の付け根の部分から「臭い」匂いを放つ。
つまり、捕まえてみて臭うのがクサガメ、
臭わないのがイシガメと考えれば良い。
このイシガメもクサガメも、
アカミミガメが日本で繁殖するまでは
もっとも一般的なカメであったが、
開発による自然環境の減少、食用・薬用としての乱獲、
ペット用としての乱獲などが行なわれたため、
その数を大きく減らしてしまっている。
また、このカメたちには陸の上を歩いて
別の水場へ移動する性質があるのだが、
その際に車道などに出て、車に轢き殺されてしまう個体も多い。
陸上で素早く動くことの出来ない、
「カメ」という種族ならではの悲劇といえる。

淡水以外のカメでは、ウミガメがよく知られている。
日本でもっとも一般的なウミガメは、アカウミガメであるが、
淡水のカメに比べ、非常に大きく育つ。
最大で全長1m、体重180kgになる個体もいる。
あの浦島太郎で、太郎が竜宮城に行くために乗ったのが、
このアカウミガメであったと考えられる。
よくニュースなどで、砂浜に上がってきて産卵するウミガメと、
それを保護する活動などが紹介されているが、
かつてはこれを捕え、食用にしていたようである。
砂浜に上がったウミガメは、
それこそ淡水製のカメよりも動きが遅いため、
簡単に捕まえることが出来たのだろう。
肉、卵は食用にされ、また甲羅などを工芸品の原料とした。
古代人たちにとっては、
いとも簡単に捕まえることが出来るウミガメは、
まさに格好の食料だったのだろう。
(ただ、江戸時代以前は、
 鶏卵すら食べる習慣がなかったことを考えると、
 ウミガメの卵を食べるという風習も、
 それほど長い歴史があるとは思えない)
現在では一種の観光資源にもなっており、
ウミガメを食べるというと、
「かわいそうだ」という声が聞こえてきそうである。

自分が子供のころには、うちの近くに小さなため池があり、
その池の石造りの取水口の所では、
何匹ものカメが重なりあうようにして、甲羅干しを行なっていた。
これを捕まえるのは、さすがに手だけでは不可能で、
柄の長い捕獲網を用意したものだ。
ただ、甲羅干しをしているカメの警戒心は強く、
足音をたてたり、姿をおおっぴらに見せてしまえば、
彼らはあっとう言う間に池の中に飛び込んでしまう。
だから、これを捕まえるときは、
いつも必要以上に大回りして、池の取水口に近づき、
それこそ生い茂る雑草の上を、匍匐前進するようにして
その距離を縮めていった。
そうしておいて、素早く網を伸ばし、
カメが飛び込んでいく先で、これを掬いとるのである。
蝉を捕るよりも、大変な思いをして捕まえるのだが、
捕まえたカメたちは、
重くて、黒くて、かっこわるく、オマケに臭かった。
だから、ちょっと地面の上を歩かせたり、
ひっくり返して遊んだ後、すぐに池の中に放り込んだ。
飼ってみたい、なんてことを思うことはなく、
あくまでも、捕まえて楽しむだけのものであった。

しかし、あれだけどこにでもいたカメたちは、
時代とともにどんどんと減っていき、
最近では、車道で轢死しているカメの姿すらも、
目にしなくなってしまった。
なんとも寂しい話だ。

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