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特許〜その3

更新日:

前回前々回と、「特許」というものの仕組みと、
その性質などについて書いてきた。

アイデアの秘密は、全く守ってくれない「特許」。
誰でも簡単に目を通すことの出来る「特許」。
出願すれば、その可否に関わらず、公開されてしまう「特許」。
さらにいえば、「特許」を管轄している特許庁には
「特許」侵害を取り締まる、警察的な役割は存在しておらず、
自分の「特許」を侵害から守るためには、
裁判を起こすしか無い「特許」。
「特許」を持っていたとしても、結構、負けることのある裁判。
しかも、裁判の展開次第によっては、
「特許」を無効化されてしまうこともある。

よく、「特許」をとっておけば安心、などと
単純に思い込んでいる会社経営者がいるが、
ここに挙げたような、「特許」についての知識を持たず、
ただただ、「特許」をいう言葉だけで安心感を得ているとすれば、
これは非常に危険なことだ。
「特許」というのは、それを出せば悪人どもがひれ伏す
水戸黄門の印籠ではないのである。
……。
今、水戸黄門の印籠という例えを出した。
「特許」は水戸黄門の印籠ではない、と書いたばかりなのだが、
実は「特許」と水戸黄門の印籠は、
本質的に同じ弱点を持っている。
え?水戸黄門の印籠に弱点なんてあるの?と、思う人もいるだろうが、
もちろん、あの悪人どもがひれ伏す印籠にも弱点はある。
これから、その辺りのことについて書いていこう。

前回、前々回で、「特許」を出願したアイデアは、
その「特許」の可否を問わず、出願から1年半ほどで、
特許庁の「特許公報」のホームページ上で
公開されることになっていると書いた。
これは、インターネットに接続することさえ出来れば、
誰でも、どこからでも自由に、好きなだけ閲覧できる。
もちろん、これを閲覧するのにお金なども要らない。
かつて、この「特許公報」は分厚い紙の本であり、
一般人は気軽にこれを閲覧することが出来なかった。
専門家に頼めば、必要な箇所をコピーしてもらうことも出来たが、
これには結構な費用がかかっていたそうだ。
だが、インターネットの普及により、特許庁は
「特許公報」をホームページから閲覧できるようにして、
誰でも気軽に、「特許公報」を閲覧できるようになった。
「特許公報」のページには、ワードを入力するタイプの検索機能があり、
ここにジャンル、アイテム名、企業名などを入力すると、
たちどころに、そのワードに関連した情報が画面に一覧表示される。
後はその画面をスクロールしながら、
興味のある特許情報をクリックすれば、
画面にその「特許」についての情報が全て表示される、
という具合である。
たとえば、ここにライバル会社の名前を入力すれば、
ライバル会社の持っている「特許」が、ずらりと並び、
その「特許」の内容の詳細に至るまで、見ることが出来るのである。

自分が、ライバル会社の「特許」の内容を見れるということは、
ライバル会社もまた、自分の会社の「特許」内容を
見れるということでもある。
見れる以上は、それをマネすることも可能だろうし、
もし、相手がマネをしたのならば、「特許」侵害を言い立てて
裁判を起こすことになるだろう。
前にも書いたように、
特許庁には「特許」を守る警察的な働きは無いので、
「特許」が侵害された場合、裁判を起こさない限り、
相手の「特許」侵害をやめさせる手段は無い、ということになる。

だが、これなら、まだいいのである。
少なくとも、「特許」をパクった者を相手に
勝敗はともかく、裁判を仕掛け、自分の「特許」を押し立てて、
戦うことが出来る。
しかし、良く思い出してほしい。
「特許公報」は、インターネット上で公開されているのである。
インターネット上の情報は、日本国内だけでなく、
世界中から見ることが出来る。
アメリカからも、イギリスからも、中国からも、韓国からもだ。
問題はここだ。
「特許」は、日本の特許庁に出願され、
日本の特許庁によって、「特許」に認定されている。
当然、この「特許」が法的な効力を発揮するのは、
日本国内のみ、ということになる。
(この辺り、江戸幕府の支配している範囲内でしか
 その効力を発揮しない「印籠」に似通っている)
しかし、仮にこの「特許」侵害が国外で行なわれた場合、
この「特許」侵害に関しては、全く手を出すことが出来ない。
仮に、その「特許」と全く同じアイデアを、
全く、何のひねりもなしに用いたとしても、
仮に、その「特許」と全く同じアイデアを、
自分のアイデアとして、「特許」申請したとしても、
それが外国で行なわれている限り、それを阻止することは
どうやっても全く出来ないのである。
ここの所に、この「特許」システムの最大の欠陥がある。

仮に、韓国や中国などの人間が、日本の「特許公報」を見て、
それと全く同じ品物を作り上げたとする。
日本国内のことなら、
これに「特許」侵害を言い立てることが出来るが、
外国であれば、これが通用しない。
そのまま、自社の「特許」として、
その国の特許庁(に当たる組織)へ出願すれば、
それは何の苦もなく、「特許」を認められるだろう。
そうなると、悠々とその品物を生産することが出来る。
出来上がった品物は、日本の「特許」の情報を元に
作られているのだから、日本の品物と全く同じということになる。
この品物が、日本へと輸入され、販売されることになるのである。
中国も韓国も、最近は人件費が上がって来ている、といっても、
それでもまだ、日本のそれに比べれば安い。
その分だけ、品物の価格も安く販売することが出来る。
全く同じものが、より安い価格であるのだから、
日本製のオリジナルの品物は、全く売れなくなるだろう。
日本の「特許」保有者は、相手を「特許」侵害で訴えたい所だが、
相手は、日本国内で品物を生産していない。
それどころか相手の国では、全く同じものが「特許」として登録され、
保護されてしまっているのである。
そんなことが起こるのか?と、思う人がいるかも知れないが、
これは実際に、すでに起こっていることなのである。
中国、韓国などの大手メーカーは、
多くのパソコンを使って、
日本の「特許公報」のホームページにアクセスし、
そこに記されている様々なアイデアに目を通し、
有用なものを、どんどん自国で採用しているのである。
これらの大手メーカーでは、堂々と
「アイデアは、自分たちで考えるものではなく、
 他所から持って来るのものだ」
とコメントしているというから、恐ろしい。
こうして日本で「特許」申請されたアイデアたちは、
その可否に関わらず、インターネット上に公開され、
諸外国に、ドンドンと盗用されているのである。
そしてそれらを使った品物は、日本国内で作ったモノよりも
さらに安い価格で販売され、本来の「特許」の持ち主の品物を
売れなくさせているのである。

先に、日本の企業の中には、「特許」の出願数に
ノルマを課す所もあると書いたが、
これなど、やっていることは海外のライバル企業に
大切なアイデア、技術を垂れ流しているだけである。
多くの日本の企業は、「特許」を取得する、ということに対して、
もっともっと真剣に、慎重に取り組む必要がある。
さらに特許庁にしても、現在の様に「特許」情報を垂れ流すのでなく、
少なくとも自分の力の及ぶ範囲、つまり日本国内、
日本人のみだけが、これらの情報にアクセスできるように
システム・法律を改正するべきなのである。
現在のような、鍋の底に大穴の開いている状況では、
国内の企業がどんなに頑張った所で、まともな成果は上がらないだろう。
もちろん、これは企業のみならず、
科学者の研究成果に伴う「特許」についても同じである。

「特許」システムに大きな欠陥のある現在、
「特許」の取得には細心の注意と、万全の備えが必要である。
「特許」を取りたいからと、いきなり弁理士の所に駆け込むのではなく、
その前に「特許」関係に強い弁護士なり、法律家なりに相談し、
充分な知識を得た上で事を進めないと、
手痛いしっぺ返しを食らうことにもなりかねない。

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