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動物 雑感、考察

トビ

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By: machu.

ここの所、うちの周りで「トビ」を見かけるようになった。

見かける頻度や、個体のサイズなどから見るに、
複数の「トビ」がいるわけではなく、
どこからか1匹だけ、流れてきたようである。

自分が小学生ぐらいの頃、うちの周りでも
よく円を描くように滑空しているを見かけたり、
あの独特の鳴き声を聞いたりしたものだが、
いつの間にやら「トビ」は姿を消し、
もう20年以上、その姿を見かけることはなくなっていた。
そう考えると、じつに数十年ぶりに
「トビ」が帰ってきた、ということになる。
汚れた川をキレイにしていった結果、
アユやサケが遡上してくるようになったというのは、
ニュース番組などでも、よく取り上げられることであるが、
田舎の空に「トビ」が帰って来たということには、
ニュース性は無いのだろうか?

「トビ」は、タカ目タカ科に属する猛禽類の一種である。
形の上では、タカやワシに非常に似た形状をしているが、
基本的にタカ、ワシ、トビは、どれもタカ目タカ科の鳥なので、
元々非常に近しい関係にある。
この3種の見分け方として、もっとも簡単なものは、
その大きさによる分類だ。
基本的にはタカが、もっとも身体が小さく、
ワシが、もっとも身体が大きい。
トビは大体この2種の中間くらいのサイズと考えればいい。
この3種の中で、もっとも我々の身近にいるのが
「トビ」ということになる。

「トビ」という名前の由来は、
「遠く飛いる(とおくひいる)」から来ている。
そういうことなら、大体の鳥が
「トビ」になるじゃん、となりそうだが、
円を描きながら滑空し、上空へ昇って行く姿が、
この名前の元となったらしい。
英語では「Black kite」となり、
直訳すれば「黒い凧」である。
風を受け、滑空しながら天に昇っていく姿が、
「凧」のように見えたのかも知れない。
(ちなみに「kite」には、それだけで「トビ」の意味もある)

我々の目にする「トビ」の大きな特徴は、
・ほとんど羽ばたかず、滑空する様な形で円を描くように飛ぶ
・「ピーヒョロロロロ~」と独特の鳴き声をあげる
という2つだろう。
猛禽類であるため、当然、昆虫やネズミなどの小型ほ乳類、
ヘビやトカゲなどのは虫類や、カエルなどの両生類を
かっこよく捕まえることもあるのだが、
よほど注意して「トビ」を見ていないと、
そういう場面を目にすることは出来ない。
だが、「トビ」の狩りのシーンを目にすることが少ない理由は、
もう1つある。
実は「トビ」は、先に書いた様に、
生きている小動物を捕まえる他に、
すでに死んでいる動物の死骸をあさったり、
人里近くでは、人間の出した生ゴミをあさったりもする。
食事のうちのかなりの部分を、
こういった「あさり」行為に頼っているため、
その結果として、狩りによって食物を得る比率は低くなっている。
この「あさり」行為は、同じタカ目タカ科である
タカもワシも行なうことは無い。
タカもワシも、全ての食物を「狩り」によって得ている。
「トビ」だけが、この「あさり」行為を行なう。
本来的にいえば、食べるものの幅が広いというのは、
生きていく上では非常に有利なことで、
むしろ生物としては優秀だといえるのだが、
何せ、やっていることが「死骸あさり」と「ゴミあさり」だ。
人間の目から見たら、これらは卑しい行為ということになる。
そのため「トビ」は、タカ、ワシなどからは一段落ちる鳥として、
評価を下げる結果になってしまった。
現在でも、河口、海岸、河川などといった、
動物の死骸があることが多い場所で
「トビ」を見かけることが多い。
そのため、「トビ」は「掃除屋」などといった、
不名誉な呼び方をされることもある。
ただ近年では、人間の食べ物の味を覚えた「トビ」が、
野外にいる人間の持っている弁当や肉まん、
ハンバーガーやサンドイッチなどを強奪する事故も起こっている。
やっていることは、猿並みであるが、
猿に比べると、鋭い爪とクチバシがある分だけ、危険も多い。
実際に食べ物を取られる際に、怪我を負うという事故も起こり、
さらにはペットとして連れられていた小型犬が、
「トビ」に攫われるという事故も起こっている。
「トンビに油揚げをさらわれる」なんていう諺があることから見て、
過去にも同じ様な事故は起こっていたらしい。
中型で、死骸やゴミを食べるとはいえ、相手は猛禽類なのだ。
野外で飲食をする際に、近くに「トビ」がいるようであれば、
充分にこれを警戒しておきたい。

先に書いたように、我々が飛んでいる「トビ」の姿を見る場合、
大きく円を描くように滑空していることが多い。
実は「トビ」がこのように滑空している場所は、
上昇気流が起こっていることが多く、
彼らはそれに乗って、高度を上げようとしている。
意外に羽ばたいて飛ぶのが、ヘタクソなのかも知れない。

さて「トビ」という言葉で検索をかけると、
鳥の「トビ」と同じか、それ以上の数で「鳶職」が表示される。
「鳶職」というのは、建築業において
高所作業を行なう職人のことで、
この「鳶職」の「鳶」という字は、
そのまま鳥の「トビ」のことである。
そういう風に聞くと、ああ、鳥の「トビ」の様に、
高い所を跳び回っているから「鳶職」なんだな、
と思ってしまうのだが、実はそうではない。
彼らは、棒の先に金属製の鉤のついた道具を使っているのだが、
この鉤の部分が「トビ」のクチバシに似ているため、
「鳶口」と呼ばれているのだ。
つまり、「鳶口」を使う職人ということで、
「鳶職」ということになったのである。
多少回りくどくなってはいるものの、「鳶職」の「鳶」は、
結局、「トビ」に由来しているということだ。
(ちなみに、梁から梁へ飛び回ったので、
 「鳶」になった、という説もある)

ここ近年、うちのまわりでは様々な動物が帰ってきた。
多くの赤とんぼが飛び、川では亀が甲羅干しをしている。
そして今度は空に弧を描く「トビ」が戻ってきた。
一時期、いなくなっていた、
これらの動物が復活しているというのは、
それだけたつの市近辺の自然が回復している、ということだろうか。
(うちの周りを見るだけでは、とてもそうは思えないが……)

果たして次は何が帰ってくるのか?
大いに期待しながら、それを待ちたい。

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