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田倉牛神社

投稿日:

今年の元旦、早朝に的場山に登り、
初日の出を拝んだ後、初詣に行ったということを
以前の記事で書いた。

この際、初詣に行った神社が、
岡山県備前市にある「田倉牛神社」である。
たつの市の自宅から南下し、
国道2号線に出て、西に向かう。
相生市、赤穂市、上郡町と通過し、
船坂峠を越えて岡山県備前市に入る。
船坂峠を下った後、JR山陽本線に沿うようにして右折し、
そのまま山間を縫うようにして北西に走ると、
やがて「田倉牛神社」の看板が現れる。

車を停めて、踏切を渡り、参道を歩く。
踏切の側にはバス停があり、
そこには「牛神社入口」と書かれている。
参道らしきものは、山の方へと続いているのだが、
参道沿いに手水場、鳥居、売店がある以外は、
神社らしきものはなく、
道が山の中へと続いているだけである。
山の方を眺めてみても、
やはり社殿のようなものは何も見えず、
本当にこの山の中に神社があるのか?と、
いぶかしく思ってしまう。
それもそのはずで、
この「田倉牛神社」は社殿が存在せず、
神職もいない神社なのである。

「田倉牛神社」という名前からもわかるように、
この神社において「牛」というのは、
重要なキーワードである。
参道には「野上牛頭天王宮」と書かれた幟が立っており、
この神社の祭神が「牛頭天王」であることがわかる。
「牛頭天王」というのは、仏教の神様のひとつである。
神道と仏教が習合されていたころには、
スサノオノミコトとも同一視されていた。
その名の通り、牛の頭を持つ神様だ。
ミノタウロスとか、そういう類いの化け物ではない。
古来より、疫病等を防いでくれる神様として、
信仰されている。

江戸時代初期、流行病や天変地異から
氏子達を守ってもらうために、
「牛頭天王」が勧請されてきたのが、
「田倉牛神社」の始まりとされる。
江戸時代、岡山藩では農業振興策のひとつとして、
農家に牛を飼うことを奨励し、
その際、各村に一祠ずつ、祀らせるようにしたという。
ご神体は石で彫刻された牛で、
そのまわりには備前焼で作られた「牛」が、
山のように積み上げられている。
その数は10万とも20万とも言われ、
現在ではこれが神座となっている。
拝殿や社殿などは存在しておらず、
ただ、うずたかく積み上げられた
備前焼の「牛」の山があるだけである。
毎年、1月・5月・9月の5日に大祭が行われ、
これ以外の月でも、5日には多くの参拝者がある。
特に1月5日は初詣ということになり、
境内は参拝者で埋め尽くされる。

もともと牛の守護神、
農耕の神として信仰を集めていた神社だったが、
やがて五穀豊穣、家内安全、結婚、就職、入試、
交通安全、商売繁盛など、
時代とともにその信仰・祈願は増えていった。
現在では、なんでもありの万能感を感じさせている。

この「田倉牛神社」の面白い風習のひとつとして、
お参りする人は、備前焼で出来た小さな牛の像を
神様に献じるというものがある。
ひとつ献じる代わりに、
別の祈願者が献じた牛の像をひとつ持ち帰る。
つまり自分が持ってきた牛の像を、
積み上げられている牛の像とトレードするのだ。
そして大願成就の暁には、持ち帰った牛の像と、
さらにもうひとつの牛の像を足して、
倍返しにするというものである。
参道沿いにある売店では、
巫女さん達がこの備前焼きの牛を販売しており、
この神社のシステムに従うのなら、
ここで必ず牛の像をひとつ、購入することになる。
この「倍返し」システムによって、
牛は毎年、増え続けることになる。
先にも書いた通り、すでに10万体とも20万体とも
いわれるほどの牛の像が積み上げられていて、
参拝者はその中から1体、牛の像を持ち帰ることになる。
ただ、積み上げられた牛の像のまわりは、
格子状のフェンスで囲まれており、
実際に持ち帰れる牛の像は、フェンスの隙間から
手が届く範囲のものに限られる。
こういう風に言ってはなんだが、
1年間、自宅に飾って(?)おくのだから、
なるべく傷の無い、
気に入ったものを選ぶようにしよう。

つまり今年の初詣は、この「田倉牛神社」に、
去年持ち帰った牛の像を持って、
参拝しにきたというわけである。
元旦だったので、初詣の参拝客で
溢れかえっているのでは?と危惧していたのだが、
どういうわけか参拝客は少なく、
並んだり、順番待ちをすることもなく、
スムーズに参拝することが出来た。

どうもこの神社では、1月5日の大祭の方が、
参拝客は多くなるらしい。
当然、屋台なども2~3店しか出店しておらず、
元旦の神社としては、信じられないほど人は少ない。
去年は1月5日の大祭の日に参拝したため、
参道から溢れるほどの人並みで、
寒中、かなり時間をかけて参拝したのだが、
今年は驚くほどスムーズであった。

備前焼で出来ている牛の像の背中は、
やや無骨な肌触りと、独特の凹凸感が手に心地よい。
クセになる撫で心地だ。
床の間や、神棚などに飾っておくも良し、
また、デスクの上などに、
マスコットとして置いておくのもいいだろう。

1年間、大願成就を願いながら、
背中をナデナデしてあげよう。

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