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能楽「高砂」

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これまで4回ほど、結婚式に出席した。

一番最初のものは、まだ4、5歳くらいのことで、記憶には残っていない。

次が、いとこの結婚式で、残る2つは友人のものだ。

少なくとも、記憶に残っている分だけを思い出してみると、

どれも普通の結婚式で、その流れは似たようなものだった。

どの結婚式にも共通していたのが、友人や親族による、

音楽演奏、あるいは歌の披露である。

かつて書いた通り、自分は音楽に関しては全く素人以下なので、

そういう真似をしようという発想すらないのだが、

これはずいぶんと昔から、行なわれていたものらしい。

現代のように音楽が多様化する前、つまり庶民の娯楽としての音楽が

まだ貧弱だった頃、この結婚式での音楽といえば、能楽の謡が多かったようだ。

もちろん現代に比べ、曲数が極端に少なかった時代、

結婚式に適していて、それなりに品格のある曲など、そうはなかった。

そういう時代において、選ばれることの多かった曲が

能楽「高砂」の謡だ。

今回は、この能楽「高砂」について書いていく。

能楽「高砂」の高砂とは、兵庫県高砂市のこと、つまり地名だ。

この能楽のストーリーは、高砂を舞台に繰り広げられる。

繰り広げられる、などというと波瀾万丈の物語をイメージするが、

ストーリー自体は極めておとなしいものだ。

簡単にあらすじを書き出してみる。

肥後の国、阿蘇宮の神主・友成が播州高砂の浦にやってくる。

そこに1本の老松を見つけ、その根元を掃き清めている老夫婦に

その松のいわれを尋ねる。

老人は

「この松こそ、世に名高い高砂の松。この松と住吉の松は

 ”相生の松”と呼ばれています。

 私たち夫婦も、妻はこの浦の者。

 私は住吉の者で、遠く隔てて住んでいても、心は通いあっております」

と答えた。

友成は感心し、さらに「相生の松」について尋ねる。

これに老人は

「昔の人の申しますには、高砂というのは、上代の『万葉集』の時代を示し、

 住吉とは今のこの延喜の帝の時代をさします。

 かわらぬ緑を保つ松は、永久につきない和歌の道を表し、

 その繁栄は今も昔も変わりません」

と答えた。

そして、なお松のめでたさを語り、自分の正体が松の精であることを明かす。

松の精はそのまま船に乗り、住吉にて待つと告げて、去っていく。

それに次いで友成一行も、その場を去る。

やがて澄み渡った月明かりのもと、住吉の神が姿を現し、

太平の御代を祝福し、颯爽と舞う。

以上である。

どうだろうか。

旅の神主が、松の精の話を聞くだけのストーリーだ。

いまいち盛り上がりに欠ける物語ではないだろうか?

この手のストーリー展開、

つまり偶然出会った相手が、何かの謂れを語る、

後に、自分がその謂れの中に出てきた人物であることを明かす、

そこでかき消すように姿を消すか、舞を舞う、

というのは、能楽の定番だ。

この「高砂」は、その定番に沿った作りとなっている。

テーマが、長く変わらぬ夫婦の愛情についてであるし、

めでたい雰囲気があふれているので、結婚式向きの話ではある。

この中で歌われる謡が、結婚式で披露されても不思議はない。

もっとも現代では、この謡を歌える人間がほとんどいなくなっているので、

もしこの先、結婚式でこれを聞くことがあったら、それは貴重な体験だ。

結婚披露宴で、金屏風を背景に新郎新婦が座る、一段高くなった席を

「高砂」というが、それはこの能楽からきている。

つまり兵庫県民の場合、「高砂」というのは、なじみのある

あの「高砂」だということだ。

ちなみに、ある本で「相生の松」を「相生市の松」として、

「高砂の松」と「相生の松」が夫婦である、としている説明を見たが、

これは間違いだ。

確かに近くに「相生」という地名はあるが、

これを「あいおい」と呼ぶようになったのは20世紀初頭のことであり、

それ以前は「おお」、あるいは「あう」と呼ばれていた。

「高砂」は地名であるが、「相生」は地名ではない。

現在、高砂市の高砂神社に「相生の松」の片割れが植わっている。

高砂に生えていることから、「妻の松」ということだろう。

夫である「住吉の松」は確認できなかった。

かつて住吉は松の名所だったそうだが、江戸の天明の頃に、

松が大量に枯れたことがあり、そのころから松を植えるようになった。

「夫の松」は多難であったらしい。

現在でも「松苗神事」という松の苗を植える神事が、住吉大社で行なわれている。

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