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ターンオーバー

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先日、インターネットのニュースサイトを見ていると、
こんな見出しが目に飛び込んできた。

『悪天のアメリカで魚の大量死 原因は?』

6月13日、アメリカ・コロラド州の池の中で、
数百匹の魚が死んでいるのが見つかった。
この池には8種類の魚が生息していたが、
生き残っている魚は1匹もいなかったそうである。

この手の魚の大量死は、日本でも時折、起こっている。
場所も池のみならず、川や海、はては水族館の水槽の中でさえ、
この魚の大量死というのは発生している。
もちろん、それぞれの大量死の原因というのは様々である。
池などの閉鎖された環境であれば、水不足などによる酸欠死もありうるし、
川などであれば、工場などからの薬品の流出が疑われる。
これらの原因と全く無関係そうな海でさえ、
気候の急激な変化による海水温の急変や、
浜への大量打ち上げなどによって魚の大量死は発生している。
人間が毎日、徹底的に管理しているはずの水族館の水槽ですら
魚の大量死は発生するのだから、
まさにその原因は、多種多様であるといっていいだろう。

今回のニュースに話を戻すと、今回の大量死の原因は「雹」だという。

当時、現場周辺では、発達した積乱雲が発生しており、
雷雨、大雨、テニスボール大の雹(ひょう)等が観測されていた。
専門家は魚が大量死した理由を、大粒の雹が大量に降り、
池の中の冷水と温水がかき混ぜられ、
水中の酸素が不足したためではないかと推測している。
テニスボール大の雹が降った場合、
その平均落下速度は時速100kmにも上り、
これが水の中に落ちると、池に強い衝撃を与えることになる。
この衝撃が、池の中の環境を一気に変えてしまったというのだ。

話を聞いていると、なるほど、そういうものなのか、と思ってしまう。
通常であれば、テニスボール大の雹が
時速100kmで降り注ぐなどということは、まずあり得ないといっていい。
その降り注ぐ雹が、池に、というか、池に生息している魚たちに
どれだけの影響を与えるのかということは、ちょっと想像しにくい。
とりあえず、大きな氷の塊が大量に降ってきたのだから、
池の中の水温が急激に低下したであろうことは想像がつく。
池の中の水温がどれだけ急に変化するかは、降った雹の量と
池の水深や貯水量にも関わってくるだろうが、
それらによっては、10度や20度の水温変化は起こりうるのではないか?
魚がどれくらい急激な温度変化に耐えられるのか?というのは
ハッキリしないが、それほどの激しい水温変化は、
自然界では滅多に起こることではないだろう。

ただ、今回の記事を読む限りでは、魚の大量死の原因は水温変化ではなく、
池の水がかき混ぜられることによって起こった、
水中の酸素不足となっている。
つまり低体温症による死ではなく、窒息死だというのだ。

実は、このように池の水がかき混ぜられることによって、
水中の酸素が不足したりするような現象は、自然界の中でも
わりと普通に起こっている。
バス釣りなど、野池での釣りに興味のある人なら
聞いたことがあるであろうその現象の名を「ターンオーバー」という。

この池などの水がかき混ぜられる「ターンオーバー」は、
季節的には、秋から冬にかけての時期に、起こりやすいといわれている。
その原理を簡単に説明すると、こうだ。

基本的に水の移動の無い池などの静水では、
水はくっきりと階層に別れることになる。
まず、空気に面しており、気温や降雨の影響を受けやすい表層部。
その下にある、比較的水質の安定した普通の水のある中層部。
さらにその下にある、酸素が少なく汚れなども多い水のある下層部。
基本的に水も、温かい部分は上に、冷たい部分は底の方に移動するので、
基本的に池などでは、水の上下の移動はほとんど起こらず、
仮に起こったとしても、上層と中層の間でわずかに起きるくらいで、
下層の水はほとんど動くことがなく、澱みが多く、酸素の少ない水となる。

しかし、秋から冬にかけて、急激に空気が冷えるようなことがあると、
その空気に冷やされた表層の水が、底へと沈み込む現象が起こる。
これが「ターンオーバー」である。
「ターンオーバー」の中でもこの時期に起きるものは、
特に「フォールターンオーバー」と呼ばれる。
(ターンオーバー自体は、突然気温が下がり、
 表層の温度が急激に下がって水が動けば発生するため、
 特に秋だけのもの、というわけではない)
水の移動が起こり、下層にたまっていた澱み、酸素の少ない水が
池全体に広がると、結果として池の酸素が不足することになる。
(それでも、完全に酸素が無くなるわけではないので、
 魚が死ぬようなことは起こらないが、強烈に活性が落ちるため、
 魚はほとんど釣れなくなると考えていい)
さらに澱んだ水が表層にまで上がってくるため、
悪臭が漂うという様なことも起こる。
池の表面を、竿先などで軽くかきまわしてやると、
水の澱みが無い場合は泡もすぐに消えてしまうが、
水の澱みがひどい場合、いつまでも泡が消えずに残ることになる。
釣果を挙げたい場合、そういうポイントは
サッサと見切った方が良いだろう。

さて、今回のコロラド州の池の場合、ニュースを聞く限りでは
雹が降ることによって池の水の移動が起こり、
一種の「ターンオーバー」状態に陥ったと思われる。
ただ、先にも書いた通り、「ターンオーバー」自体は自然の中でも
普通に起きる現象であり、それによって魚が全滅したなんていう話は
聞かない。
もちろん、大量の雹によって、池の水が急激に下がったことも
考えられるので、この魚の大量死は
これらの条件が重なることによって、
引き起こされたものではないだろうか?

いずれにしても、池の様な閉じられた場所での環境の激変は
ときに恐ろしい結果を引き起こすこともある。
これもまた、自然界の「怖さ」の1つである。

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