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ウルトラマンレオ

更新日:

本来、特撮ヒーローというのは、
そのヒーローが主役を務める番組内において、
もっとも活躍するものである。

後に、後輩ヒーローの番組にゲスト出演することがあったとしても、
大体の場合、後輩ヒーローのアシストに回ることが主で、
基本的には、後輩ヒーローを喰ってしまうほどの
大活躍をするなんていうことは、まず無いといっていい。
ウルトラマンにしろ、仮面ライダーにしろ、
先輩達がやってくるというのは、ちょっとしたサービスで、
苦戦している後輩を、ちょこっと助けて帰るだけの存在である。
ヒドい場合には、強敵に倒されることによって
敵の強さを表現するための「噛ませ犬」役にされたり、
敵に捕らわれて、主人公のピンチを招く、なんていうパターンもある。

いずれにしても、たったそれだけのゲスト出演でも
人気が取れるということは、それだけ先輩ヒーローは
自らが主役を張った番組で、
ネームバリューを確立させたということである。
後輩ヒーロー番組へのゲスト出演は、
その培ってきたネームバリューを、後輩ヒーローのために
切り売りしているといってもいいだろう。
当然、「噛ませ犬」役を振られてしまえば、
折角のネームバリューは著しく低下してしまうことになるし、
仮にそこそこ活躍できたとしても、
そこが後輩ヒーローの番組であれば、
結局、一番美味しい所は、後輩ヒーローが持っていくのが常である。

詰まる所、当然といえば当然なことであるが、
ヒーローの評価は自らが主役を張っている番組放映中が最高潮で、
それ以降は、ほとんど変わらない評価を受け続けるか、
あるいは「噛ませ犬」役を振られて、評価を落とすかしかない。
まあ、ここら辺は特撮ヒーローの宿命とでも言おうか。

だが、ウルトラシリーズの中に1人、
前述した先輩ヒーローパターンに当てはまらなかったヒーローがいる。
今回のタイトルである「ウルトラマンレオ」である。

「ウルトラマンレオ」は、1974年から1975年にかけて
放送された、特撮TV番組だ。
「ウルトラマン」シリーズであれば第6作目、
「ウルトラQ」も含めた「ウルトラ」シリーズであれば
第7作目ということになる。
「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を
第1期「ウルトラシリーズ」とするのであれば、
「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」
「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンレオ」は、
第2期「ウルトラシリーズ」ということになる。
「帰ってきたウルトラマン」以降、続いてきた
第2期「ウルトラシリーズ」の最終作品であり、
悪い言い方をすれば、その人気の低迷によって、
この国民的特撮シリーズを、一旦、終了させるに至った
「戦犯」という風に捉えられることもある。
「帰ってきたウルトラマン」から始まった、
先輩ヒーローのゲスト出演も、
作品を重ねるごとに豪華になり、回数も頻繁になっていった。
第2期「ウルトラ」シリーズ3作目、
「ウルトラマンタロウ」のときには、これが爛熟期を迎える。
先輩ヒーロたちの頻繁なゲスト出演に加え、
ウルトラの父、母という家族まで頻繁に登場して、
まさに絢爛豪華といっていいキャスティングであった。

そして、その反動、ぶり返しが「ウルトラマンレオ」に表れた。

明るく、絢爛豪華だったストーリーは、かなり暗めのものに変更され、
それまでとは違った、ハードな展開が続いていくことになる。
先輩ヒーローのゲスト出演は、第1話からあったものの、
先輩ヒーローであるウルトラセブンはマグマ星人と双子怪獣にやられ、
変身能力を失ってしまうことになる。
主人公のウルトラマンレオもまた、生まれ故郷を滅ぼされた
宇宙の孤児であり、戦士としての充分な実力が備わっていないことから
序盤では敗北を重ねながら、過酷な特訓により
危機を乗り越えていくことになる。
こんな危機的な状況でこそ、先輩ヒーローの頻繁なゲスト出演を
頼りにしたい所だが、「タロウ」であれだけ出てきた先輩たちは、
どういうわけか、全くといっていいほど、レオを助けに来ない。
恐らくは、レオを鍛えようというダン(セブン)の意志によって、
ウルトラ兄弟による応援を、固辞していたのかも知れない。
結果的に、それは地球人の被害者の増大という結末を招いた。
これもまた、レオのストーリーが暗くなった一因だろう。

しかし、ウルトラマンレオのストーリーを悲劇的にしているのは、
なんといっても、第40話で行なわれた突然の路線変更である。
「恐怖の円盤生物」シリーズと銘打たれたこのシリーズでは、
開始直後の5分ほどで、防衛隊であるMAC基地(宇宙ステーション)が
円盤生物に襲撃され、ゲン(レオ)以外の隊員たちが
全員死亡するのである。
もちろん、変身能力を失っていたダン(セブン)も行方不明となり、
ウルトラマンに変身できたレオのみが辛くも脱出、
地球へと逃れるのである。
いや、ウルトラマンに変身できるんだから、そのまま宇宙空間で
円盤生物と戦ってMAC基地を守れよ、と思うのだが、
レオは襲われている基地を放っておいて、地球へ逃げるのである。
突然のことにパニックになり、いざというときに
何も出来ないというのは良く聞く話だが、
レオもそういうパニックに陥ったのかも知れない。
だが、このとき円盤生物と戦わなかったレオの行動は、
さらに彼に悲劇をもたらすことになる。

MAC基地を壊滅させた円盤生物は、そのまま地球に降下、
町を襲撃する。
このときの襲撃によって、ゲン(レオ)のプライベートでの仲間たち、
恋人、後輩、仲の良かった子供たちが、1人を除き全員死亡する。
もし、レオがMAC基地襲撃の際に円盤生物と戦っていれば、
おそらくこの地球での悲劇も回避できたと思われる。
レギュラーメンバーが命を落とすストーリー展開は、
「帰ってきたウルトラマン」でもあったが、
防衛隊からプライベートな仲間まで、ほぼ全員死亡するというのは
いくらなんでもハードすぎる展開である。
ここから先は、最終回までレオ1人の戦いが続くことになる。
(もちろんアストラやキングが助けにきてはくれるのだが……)

こういうハードで暗い展開が受けなかったのか、
番組の視聴率は低迷し、第2期「ウルトラ」シリーズは
この「ウルトラマンレオ」を持って終了してしまう。
そういう経緯もあり、「ウルトラマンレオ」は、
「ウルトラ」シリーズを終了に追いやった戦犯として、
不名誉な語られ方をすることも多かったのである。
序盤で敗北を重ねたことや、仲間を守り切れなかったことなども併せ、
彼は歴代のウルトラ兄弟の中でも、
特に軽く見られる風潮があったのである。

だが番組終了後、30年以上のときを経て、彼に転機が訪れる。
きっかけは「ウルトラマンメビウス」へのゲスト出演だった。
彼にとっては初めての後輩ヒーロー番組へのゲスト出演だったのだが、
そこで彼は、甘えた所のあるメビウスを叩き伏せた後、厳しく叱咤し、
メビウスとその仲間たちに喝を入れる。
この「ウルトラマンメビウス」では、多くの先輩ウルトラマンの
ゲスト出演があったが、ここまで厳しい態度で接してきたのは、
レオただ1人であった。
ここで見せた、強さと厳しさがウケたのだろう。
後の映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」では、
ニューヒーローであるセブンの息子・ウルトラマンゼロの
師匠として登場、非常にオイしい立ち位置を手に入れる。
なんといってもゼロ登場以降は、ウルトラシリーズは
ゼロを中心にしたストーリーが非常に多くなり、
彼が大活躍を繰り広げることになるのだが、
その師匠であるレオもまた、ゼロの救援に駆けつけて共闘したりと、
その出番が格段に増えた。(父親であるセブンよりも)
しかもゼロの師匠という重要な立ち位置のせいか、
非常な強者として描かれており、
他のウルトラ兄弟がやられることがあっても、
レオが敗北するシーンというのは、全く無くなってしまった。
本編序盤で敗北を重ねていたとは思えないほどの、厚遇ぶりである。
そう。
ウルトラマンレオは、自らがもっとも活躍できる本編が終了した後、
本編以上の大活躍の場を手に入れた、
非常に希有な特撮ヒーローなのである。

さて、現在、シリーズ最新作である
ウルトラマンジード」が放映されているが、
このシリーズにも、ウルトラマンゼロがレギュラーとして出演している。
果たして彼の師匠であるレオが登場する機会はあるのか?
(カプセルとしては、すでに登場しているが……)
そしてゼロ以上に美味しい所をかっさらっていくのか?
これからの展開を待ちたい。

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