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白人至上主義

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先日、インターネットでニュースサイトを見ていたら、
「白人至上主義は、なぜアメリカで容認されないのか?」
というタイトルが目についた。

事の次第を説明すると、こうなる。
まず、今月の19日、アメリカ・ボストンで「言論の自由」を
騙った(本当に騙ったのかどうかは、ハッキリとはしていない)
ヘイトスピーチの集会が計画されたが、これに対し、
4万人規模の対抗デモ(アンチヘイトスピーチ)が開かれた。
問題の集会の方には数十人ほどしか参加者がいなかったため、
たちまち対抗デモに取り囲まれてしまい、早々に解散に追い込まれた。
この2つの団体の間には警官が入り、
直接的な衝突には至らなかったようだが、
もし、直接的な激突(暴動)が発生していれば、
集会側の数十人は、タダでは済まなかっただろう。
この2つの団体の争いの焦点になった、と考えられているのが、
「白人至上主義」である。
対抗デモ側は、この集会を「白人至上主義者」たちの集まりだとし、
これを許さないというスタンスであった。
一方の集会側は、「白人至上主義」とは無関係だと主張していたが、
その実際がどうであったのかは、わからない。
ただ、以前行なわれた同様の集会には、
「白人至上主義」を標榜する勢力が参加しており、
反対派との衝突が起こっている。
激突が起こる前に、警官が両者の間に入ったのも、
そういう前例があったためだろう。
その衝突事件では、トランプ大統領が「白人至上主義者」たちを
擁護している?とも受け取れそうな発言をしてしまい、
後で慌てて「白人至上主義者」たちを批判するコメントを発表した。
あのやりたい放題のトランプ大統領でさえ、
敏感にならざるを得ないほど、アメリカにおいて
「白人至上主義」というのは危険なものなのである。

「白人至上主義」。
まあ、これほどその主義の内容を、
端的に表している言葉もあるまい。
噛み砕いていえば、「白人が一番えらいんだぞ」という主義である。
タイトルでは、アメリカでこの「白人至上主義」が
どうして容認されないのか?という風に書かれていたが、
単純に考えれば、これは誰が考えても、
様々な人種が暮らしているアメリカ社会で、
それを言う方が、土台、無茶な話ということになる。

2010年の段階でいえば、アメリカ合衆国の総人口約3億人のうち、
白人は2億2千万人ほどおり、全体の7割ほどを占めている。
この次に多いのが、いわゆる黒人・アフリカ系の人たちで、
4000万人ほどの人が暮らしており、
全体に占める割合は12%ほどである。
その他の人種については、それぞれアメリカ合衆国の中では
5%を超えない程度の割合でしかない。
この社会構成の中で、「白人が一番えらいんだぞ」なんていったら、
全人口の3割を占める白人以外のアメリカ国民が、
大反発をするのは当たり前だろう。

日本でいえば、本州に住んでいる人口は全体の約8割だが、
もし本州人が「本州人が一番えらいんだぞ」などと発言すれば、
北海道人、四国人、九州人、沖縄人はもとより、
同じ本州人からも、猛烈なバッシングを受けるであろうことは
疑う余地のないことである。
この発言をしたのが政治家であれば、国民から袋だたきにされ、
即刻辞職に追い込まれるだろうし、
この発言をしたのが芸能人であれば、
スポンサーや視聴者から袋だたきにされて、
たちまち芸能界引退、ということになる。
仮にこの発言をしたのが一般人であったとしても、
周りの人たちから「アイツはちょっとおかしいんじゃないか?」と
陰口を叩かれ、距離をとられることになるだろう。

こういう風に考えてみれば、
「何故、アメリカで白人至上主義が容認されないのか?」
という言葉が、いかにも的外れであるように感じられる。

だが、である。
時計の針をぐいっと戻し、ヨーロッパ人達が
アメリカ大陸にやって来たころまで時を遡ると、
そこはもう、まごうことなき、「白人至上主義」の世界であった。
現在でこそ、世界中から厳しいバッシングを受ける「白人至上主義」も、
当時からしてみれば、世界の常識であり、
もともとアメリカ大陸で暮らしていた、
本当の意味でのアメリカ人たちは、
まともな人間扱いをされていなかったと表現した方が、
事実に即しているだろう。
インディアン・インディオなどと名付けられた人々は、
白人達によって、その土地や命を奪われていった。
さらに白人たちは、アフリカから黒人を連れて来て、
自らの奴隷として、彼らを使役した。
まさにアメリカの歴史の暗部といっていい部分である。
19世紀に、リンカーンによって奴隷解放宣言が行なわれ、
公式には一切の奴隷がその身分から解放されたが、
それまでの長い差別の歴史は、社会にすでに
癒し難い闇を作ってしまっていた。
奴隷解放宣言以降も、白人以外の人種への差別は
厳然として存在しており、21世紀となった現代でも尚、
白人警察官による黒人への不当な暴行など、
時折、この人種問題に起因していると思われる事件が起こっている。
この手の人種問題の根幹の所には、
現在でも一部の人間の中に厳然として残る
「白人至上主義」があると思っていい。

「白人至上主義者」たちにとっては、まさに自分たち(白人)は
神に選ばれた者たちである。
白人以外の人種については、全て悪魔のように思っている。
もちろん、この主義主張にしても、口にするだけであれば
せいぜい酔っぱらいの戯言程度のアタマの悪い発言と、
聞き流してやってもいいのだが、
これを根拠として差別や暴力が行なわれるということになれば、
これを看過することは出来ない。

この「白人至上主義」を標榜する団体として、
広く知られているものの
1つが「KKK(クー・クラックス・クラン)」だ。
彼らは、自らの正義の名の下に、黒人たちをリンチして撲殺したり、
その住居を放火したりと、無法の限りを働いた。
彼らは全身を白装束で固め、
頭をすっぽりと覆うような三角頭巾をかぶる。
反社会的な行動(というか、完全な犯罪行為)を行なうため、
その顔を隠し、素性を隠しているのである。
白装束に三角頭巾をかぶった姿は、
どうみても「仮面ライダー」に登場するショッカーの首領で、
ライダーに蹴り飛ばされて、爆発四散するのが
非常に似合いそうである。
もっとも、近年では「KKK」をはじめとする
「白人至上主義」を標榜する団体も、
その数を減らし、現在ではかなりの少数派になっているとも聞く。
実際に、先に書いた集会と対抗デモの話でも、
対抗デモ側に多くの白人が参加しており、
白人自身の意識が大きく変わって来ていることを感じさせる。

基本的に「白人至上主義」というのは、
白人の中にしか生まれない思想である。
彼らにしかこの思想は生み出すことが出来ず、
同時に彼らにしか、この思想を消し去ることも出来ない。
現実的に考えれば、この「白人至上主義」が
完全に消え去ることはないだろうが、
かつて、「白人至上主義」一色であったアメリカが、
「白人至上主義は、アメリカでは容認されない」と書かれるほどに、
彼らの意識が変わって来ているのだとすれば、
これは評価されるべき、アメリカの成長といえるだろう。

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