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クラゲ

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By: ume-y

子供のころ、我が家は他所の家より頻繁に海水浴に行っていた。

ひと夏のうちに4〜5回ほども行っていた記憶があるので、
我が家で夏のレジャーといえば、海というのが鉄板であった。
これは、ひとえに父親が潜りが好きだったからだろう。
子供たちが浅い所で泳いでいるのを尻目に、
父親は1人、岩場の磯の方へ泳いでいき、
そこに潜ってサザエを採るというのが、毎回の定番であった。
現在だと、結構うるさいことを言われそうな所だが、
自分が子供だった当時は、まだその辺りが緩かったのかも知れない。
このとき、潜って獲ったサザエが、
その日の晩、父親の酒の肴になるわけだから、
父親にとっては二重の楽しみである。
サザエが大量に獲れたときには、
そのおこぼれが家族にも回って来ていたので、
自分も子供のころには、随分とサザエの壷焼きを食べた記憶がある。

まあ、父親がそんな感じだったので、
海で泳ぐ機会は相当数あったのだが、
ついぞ、泳ぎの方については、父親から教えてもらった記憶が無い。
自分の泳ぎについては全くの我流で、
弟と妹に浮き輪をとられてからは、木材などに掴まりながら泳ぎ、
いつの間にやらか、かなり自由自在に泳げるようになっていた。
もちろん、そうなるまでには何度か危ない目にもあったのだが、
そういう場合にも父親は、離れた岩場でサザエを採っていたので、
なんとか自分の力だけで切り抜けて来たわけだ。
そういう意味では、全く自覚はなかったものの
なかなかタフな子供だったわけである。

さて、そんな子供時代。
ひとつ、ミョーなことがあった。
海で泳いでいると、たまに体のどこかが
ピリッとした痛みに襲われることがあった。
どこが痛くなるかというのは決まっておらず、
手足なり胴体なりのどこかが、まるでトゲでも刺さったように
チクチクと傷み出すのである。
どういうわけか、首から上が痛くなることは無く、
いつも痛みを感じるのは、首から下のどこかだったわけだが、
突然、ピリッと痛みが走ったかと思うと、
そのままトゲでも刺さっているかのような、微妙な痛みが続いた。
てっきり本当にトゲが刺さっているのだろうと、
傷む箇所を触ってみるのだが、
もちろん、そこにはトゲなど刺さっていない。
原因がサッパリ分からず、従って、全く対策も何もとれなかったのだが
日によって、全く痛くならないこともあれば、
日によって、複数箇所が痛くなることもあった。
全く原因が思い当たらず、
それほど深刻な状態になることも無かったので
海ってそういうもんなのかなー、と勝手に納得していた。

これを読んでいる人の中には、
もうすでに気付いている人もいるかも知れないが、
これは「クラゲ」の仕業である。
水の上に顔を出して泳いでいる人間の目には、
水面下にいる「クラゲ」の姿は、ほとんど見えないといっていい。
つまり、「クラゲ」がいることに気付かず、
いつの間にやら、これに接触して刺されていた、というのが
子供のころの痛みの正体だったわけである。
それが「クラゲ」によるものであることに気付いたのは、
相当、年月が経ってからのことであった。
もちろん、子供のころの自分が「クラゲ」のことを
知らなかったわけでもないし、
「クラゲ」が人を刺すということについても、ちゃんと知識はあった。
では、どうして自分の痛みと、
「クラゲ」が繋がらなかったのかというと、
これはひとえに、子供のころ、自分が抱いていた
「クラゲ」に対するイメージのためである。

子供のころ、小学校から配られた「夏休みの注意」には、
海で泳ぐ場合のことについても、注意事項が書かれており、
その中でも、「クラゲ」の危険については、
イラスト入りで注意を呼びかけてあった。
そのイラストを見る限りでは、「クラゲ」に刺された人間は、
全身に痺れが走って動けなくなり、
泳げなくなって溺れるというような描かれ方をしていた。
子供のころの自分は、これをそのまま受け取った。
つまり、「クラゲ」に刺された人間は、全身が痺れてしまって
全く泳げなくなると、信じていたのである。
すなわち、ちくちくとトゲが刺さったように傷むだけのそれを、
「クラゲ」と結びつけることが出来なかったのである。

「クラゲ」は、海で漂っている、透明で、プカプカ浮いて、
触手が生えている生き物の総称である。
……。
随分といい加減な説明じゃないか、と突っ込まれそうだ。
いつもであれば、○○科○○属に属する○○生物だ、
なんていう書き方をするのだが、今回はそれが出来ない。
何故なら、同じようにプカプカ浮いている透明な「クラゲ」であっても
生物学上の分類としては、全く違うものという場合があるからである。
もともと日本人は、上記の、透明で、プカプカ浮いて、触手が生えていて、
海を漂っているものをひとまとめにして「クラゲ」と呼んでいたので、
今回の説明は、それに準じているということになる。
まあ、現在でも、これを同じような認識で、
海を漂っている触手付きの透明な生物を「クラゲ」と呼んでも、
普通に生活していく上では、全く問題はないだろう。
体はゼラチン質で出来ており、実に体の90%以上が水分で出来ている。
人間の場合、体に含まれている水分は、成人で60%ほどなので
一見すると、「クラゲ」は圧倒的に水分が多そうに思えるが、
子供の場合はこれが70%、赤ちゃんで75%と、
若ければ若いほど、体の水分は多くなっている。
ちなみに胎児の状態では、体重の約90%が水分となり、
「クラゲ」とほぼ、同じくらいの水分量になる。

海を漂っているように見える「クラゲ」だが、
全く遊泳能力がないわけではない。
ほとんどの「クラゲ」は、傘の部分に筋肉があり、
これを使って傘を開いたり、閉じたりすることによって
水中を移動する。
ただ、常時、泳ぎ続けているというワケではなく、
多くの「クラゲ」は、時折傘を動かして潮の流れに乗り、
海中を漂っている。
そのため、流れの無い水槽内では、常時泳ぎ続けていなければならず、
これをずっと続けていると、やがて弱って死んでしまう。
これを避けるため、多くの水族館などでは
水槽内に流れを作り、「クラゲ」の過ごしやすい環境を用意している。

さて、ようやく、水中で感じるチクチクとした痛みが
「クラゲ」に刺されたものであることに気がついたのだが、
残念ながら、泳ぎながらこれを見つけ、避けるというのは
かなり難しい。
結局の所、それが「クラゲ」によるものであるということが
分かった後も、これを完全に防ぐ方法というのは無く、
せいぜい出来るのは、「クラゲ」が増え始める時期からは
海に入らないことくらいである。
まあ、結局、刺されてもチクチクするだけ、ということで、
あまり気にせずに海に入っていたわけだが、
「クラゲ」の種類によっては、実は命に関わって来ることもある。

そういう確率を少しでも減らすためには、
「クラゲ」の少ない時期を選んで、海に入るしか無いようだ。

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