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記憶に残る「船」〜オアシス・オブ・ザ・シーズ

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ここまで、5回にわたって、
自分の知る中で、特に印象深く記憶に残っている「船」を
紹介して来た。

ここまでに紹介した「船」は、5隻ともすでに現役を引退した
いわば「過去」の「船」であった。
今回紹介する「オアシス・オブ・ザ・シーズ」はそれらと違い、
現在、第一線において活躍している現役の「船」になる。

かつて「船」といえば、外国旅行に出かける場合、
どうしても欠かすことの出来ない乗り物であった。
特に、四方を海に囲まれた島国である日本の場合、
本州、北海道、四国、九州間の移動の場合でさえ、
「船」を利用しなければ、
行き来することが出来なかった。
いざ外国に出かけていく、ということになった場合、
まず何より最初に考えるべきことは、
国際便の出ている港から、外国へ向かう船に
乗らなければならないということだったのである。

人類の歴史が始まって以降、
ずっと続いて来たこの状況が一変したのは、
1960年代になって、ジェット旅客機による移動が
一般的なものになってからである。
現在では、日本国内の移動においてさえ、
ジェット旅客機が頻繁に利用されるようになり、
船による旅客の移動というのは、
ほとんど行なわれなくなってしまっている。
しかしまあ、考えてみれば、これも無理のないことである。
例えば、東京から北海道や九州へ出かけていく場合、
フェリーなど「船」を利用してこれを移動しようと思えば、
まるまる一昼夜ほどの時間が必要になってくる。
これが飛行機を使えば、わずか数時間の移動時間ですむ。
何か用事があって、遠方へ出かけていく場合、
船であれば、まるまる3~4日、
時間をかけることを考えておかなければならないが、
飛行機であれば、上手くいけば日帰りで事をすませることが出来る。
これだけ、所要時間に差があるのであれば、
船ではなく、飛行機を利用しようという気になるのも、
無理のないことだろう。

人の移動手段としての「船」は、近年、急激に衰退していったが、
その代わりに、人気を集めるようになったのが、
「船」に乗ること、そのものを楽しむクルージングである。
「船」によって目的地に移動するのではなく、
「船」に乗ること自体を目的とするクルージングには、
それまでの船旅で使われていた「客船」とは違う性能が求められた。

「クルージング船」と「客船」の大きな違いの1つは、
喫水線の深さだろう。
一般的に「クルージング船」の喫水は、
「客船」に比べると、随分と浅くなっている。
そうでなければ、小さな港や波止場に入ることが出来ないからだ。
また「客船」に比べれば、海が見える客室を
より多く用意しなければならない。
目的地につくまでの間の、仮の寝室でさえあれば良い「客船」と違い、
「クルージング船」の船室は、
観光ホテルや旅館の部屋に近い性質を求められる。
そのため、船室から大海原をゆっくりと眺めることの出来るだけの
最低限のロケーションが必要になってくるのである。
新世代の「クルージング船」の設計においては、
娯楽と快適さを追求することに、
よりいっそうの重点が置かれるようになった。

この「クルージング船」の極めつけとも言える船が、
「オアシス・オブ・ザ・シーズ」である。
この船は、アメリカのロイヤル・カリビアン・インターナショナルが
所有している世界最大の「クルージング船」、
オアシス級のネームシップとなっている。
全長が361m、幅が64m、高さが72m、
総トン数は22万5千tというから、その巨大さが分かるだろう。
(ちなみに、以前紹介した世界最大の豪華客船
 「タイタニック号」は全長269m、幅28m、高さ53m、
 総トン数4万6千tである)
姉妹船には2番船である「アリュール・オブ・ザ・シーズ」、
3番船である「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」があり、
現在、4隻目も建造が進んでいる。
ちなみに「アリュール」の全長は「オアシス」よりも55ミリ長く、
(この長さの差は、両船の測定時の
 鋼材の温度差によるものとされている)
「ハーモニー」はスペック上では全長362mとなっているので、
厳密に言えば、おなじ「オアシス級」の中では、
「オアシス」は、微妙な差ながら一番小型ということになる。

新世代の「クルージング船」である「オアシス級」には、
従来の「客船」などで使われていた推進システムとは違ったものが、
搭載されている。
従来の「船」の多くでは、エンジンなり電動機なりがシャフトを回し、
このシャフトが船体を貫通して船尾下部に飛び出しており、
その先にスクリュープロペラがついているというのが、
一般的な仕組みであった。
このスクリューの後ろには、巨大な板状の舵があり、
この舵の角度を変えることにより水流を変化させ、
「船」の進行方向を変えるようになっていた。
だが、この「オアシス級」では、アジポッドと呼ばれる
スクリューのついた突起が船体から飛び出しており、
このポッドの角度を変えることによって、
船体の進行方向を変える仕組みになっている。
さらにスクリューの向いている向きについても、
従来の船の様に、船の後尾で後ろ向きにつけられているのではなく、
アジポッドの前方、進行方向の一番先端を向いて取り付けられており、
スクリュープロペラの前方には、余計なものがない構造になっている。
スクリュープロペラにあたる水流を妨げるものが全く無いため、
従来の構造の推進装置より、
5%も推進効率を高めることに成功している。 
また、このアジポッド推進装置以外にも、舳先部分には
小型のスラスターが4基、取り付けられており、
狭いスペースでも小回りが効くようになっている。

だが、この「オアシス級」の最大の特徴は、
その巨大な船体内に満載された、様々な娯楽のための施設群である。
なんといっても、この「オアシス級」には
5492人の乗客が乗り込むことが出来る。
これだけの人数の乗客を楽しませるだけの施設、
ということなのだから、勢い、その数も種類も膨大なものになる。
10カ所を超えるレストラン、4面のプール、ジャクージ、
2面のサーフィン用プール、店舗、劇場、スポーツ施設にジム、
何千本もの樹木が植えられたセントラルパークなどなど。
はっきりいって、自分の住んでいるたつの市よりも、
娯楽施設は充実しているといっていいだろう。
もちろん、これらの施設を運営する乗員たちの数も膨大で、
なんと2384人もの人間が、この船の乗員として乗り込んでいる。
この「オアシス級」がクルージング航海をしている間、
実に8000人もの人間が、この船の上で生活しているのである。
もう、ここまでの規模になると、
「船」というよりはひとつの町である。
旅客の運搬という、大きな仕事を失った船は、
1つの娯楽施設「クルージング船」として巨大化していき、
ついには水上を移動する、ひとつの娯楽都市として
生まれ変わったのである。

ここまで、6回にわたり様々な「船」について書いてきた。
人間の歴史の最初期から用いられ、
その発展に大きく貢献して来た「船」。
表面積の7割が水面に覆われている地球という星に住む我々にとって、
「船」というのは、欠かすことの出来ない乗り物である。
これからも、今回紹介した6隻の様に、
人々の記憶に強く残る、変わった船、新しい船が登場してくるだろう。
自分も1人の「船」好きとして、
それらの登場を楽しみに待ちたい。

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