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ウルトラファイト

更新日:

「ウルトラマン」が、ギネスブックに載っている。

なんでも、「もっとも派生作品が多いTV番組」ということで、
ギネスに認定されたらしい。
もっともこれは、ここ最近のことではなく、数年前のことだ。
「ウルトラマン」の恐ろしい所は、
「もっとも派生作品が多いTV番組」として、
ギネスブックに認定された後も、
さらに派生作品が生み出されている所だ。

ここで、「派生作品」って、なんだ?と、
思っている人もいるかも知れない。
わかりやすくいえば、「ウルトラマン」を元にして
作られた作品たちということで、
ここには「ウルトラマン」の後番組である
「ウルトラセブン」を始め、
我々が「ウルトラマン」シリーズとして認識している、
全ての作品が網羅されている。
もちろん、派生作品ということなので、
正統な「ウルトラマン」シリーズのみならず、
初のアニメ作品である「ザ・ウルトラマン」や、
可愛らしいキャラクターアニメ「ウルトラマンキッズ」なども
その作品群の中に含まれているし、
さらにはバラエティ色の強い「うるころ」や、
「ウルトラゾーン」、「カネゴン」なども含まれている。
この辺りは、シリーズの人気につけ込んだ派生作品といえる。
「ウルトラ」シリーズの最大の利点である
「キャラクター」を生かし、生み出された番組たちである。
この辺りの番組については、比較的最近のものなので、
その存在を知っている人もいるだろう。

しかし、この派生作品のリストを見ていると、
いくつかワケのわからない作品が存在する。
それが「ウルトラファイト」と「レッドマン」である。
今回は、この「ウルトラファイト」の方について書いていく。

「ウルトラファイト」は、時系列で言えば
「ウルトラセブン」と「帰ってきたウルトラマン」の間に
放映された番組である。

「ウルトラマン」の放映期間が
1966年7月から1967年4月まで、
「ウルトラセブン」の放映期間が
1967年10月から1968年の9月までである。
間に6ヶ月ほどの空白期間があるが、
この期間には、同じ円谷プロ製作の
「キャプテンウルトラ」が放映されていた。
もちろんこれは、「ウルトラマン」シリーズには含まれない。

そして「帰ってきたウルトラマン」の放映が始まったのが、
1971年の4月のことであるから、
実に「ウルトラセブン」の放映終了から3年ほど、
空白期間が存在していることになる。
「ウルトラファイト」はこの空白期間である、
1970年9月から放映が始まり、
1971年9月まで1年間、全253回放映されている。
放映期間の後半5ヶ月分ほどが、
「帰ってきたウルトラマン」の放映期間とかぶっている点、
さらにわずか1年間の放映期間にも関わらず、
全253回という多大な放映回数を記録している点は、
注目しておくべき点である。

まず、253回という放映回数について説明しておこう。
これは「ウルトラファイト」が、月曜から金曜までの夕方に
毎日放送されていたからである。
さらに、1回の放映時間はたった5分間であったため、
1週間分の「ウルトラファイト」を全て寄せ集めても、
「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」の、1回の放映分にも
ならないのである。
はたして、この5分間番組「ウルトラファイト」とは、
一体、どのような番組だったのだろうか?

それを語るには、まず、「ウルトラファイト」が
どういう状況で作られたのかを、知らなければならない。

「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と、
大ヒット作品を生み出した円谷プロだったが、
その後に製作した「マイティジャック」も「怪奇大作戦」も、
視聴率の不振によって、打ち切られてしまっていた。
危機的な状況に陥った円谷プロは、
「現金支出0の番組を作ろう」というコンセプトの元、
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の戦闘シーンだけを
抜き焼きして、5分間番組を制作した。
これこそが「ウルトラファイト」である。
これだけなら「ウルトラファイト」は、
ごく普通の再編集番組として知られるだけだっただろう。
しかし、当初、130本製作される予定だったのだが、
意外に上手く編集できる素材が少なく、その足りない分を
何らかの方法で、埋めなければならなくなってしまった。
彼らは「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の撮影に使用した
着ぐるみに加え、アトラクション用の着ぐるみを使い、
新たな戦闘シーンを撮影し、これにナレーションをつけて
その穴埋めにしたのである。

つまり「ウルトラファイト」には、
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の戦闘シーンを
再編集した抜き焼き版と、
使い古した着ぐるみを使い、新たな戦闘シーンを撮影した
新撮版と、同じ番組の中で、全く赴きの違う2種類が
放映されていたことになる。
抜き焼き版には、大きな問題はない。
元の番組からの再編集なのだから、これは当然である。
問題は新撮版だ。
先述したように、この番組のコンセプトは
「現金支出0の番組」であった。
新しく撮影を行うことになったとしても、
当時の円谷プロに、充分な予算があったわけではない。
それは如実に、作品の質の上に現れることとなった。

まず、新撮に使われた着ぐるみは、基本的に全てボロボロである。
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の撮影で使われたものが
すでにボロボロであるのは当たり前だが、
アトラクション用の着ぐるみにしても、元々出来が良くない上に
度重なるアトラクションでボロボロになっており、
それらを使って、新たにアクションを撮影するものだから、
さらに着ぐるみは傷むこととなり、
もう、それはそれは見苦しい出来映えの映像となった。

さらに金がないのだから、光学合成や特撮など使えるはずもなく、
基本的に怪獣たちの戦いは、肉弾戦のみである。
ウルトラセブンの変身シーンもなく、
アイスラッガーを飛ばすこともなく、
エメリウム光線を発射することもなく、
戦いが終わって、飛び去ることもない。
セットを組む金ものないので、セブンも怪獣も
どこかの野原か、海岸で殴り合うのみである。
ストーリーも無いに等しく、基本的にはそこら辺を歩いている
セブンなり怪獣なりが、他の怪獣に遭遇し、
いきなり戦いが始まるのが、常であった。
勝負は2〜3分でカタがつき、それで番組は終了である。

……。
それ、見ていて面白いの?という声が聞こえてきそうだが、
実はそれなりに面白いのである。
戦闘の間中、どこかのどかなBGMが流れ、
まるでプロレス実況のようなナレーションがつく。
これが、なんともいえない独特の雰囲気を
作り出していたのである。

ただ、公的にはやはり評判が悪かったようで、
雑誌などには、「円谷プロの出涸らし商法」などとも書かれた。
しかし、それでも、
毎日テレビ画面に怪獣を登場させた効果は大きく、
それがいわゆる「第2次怪獣ブーム」を生むきっかけとなり、
「帰ってきたウルトラマン」を生むきっかけともなったのである。

「ウルトラファイト」は、長くメディア化されず、
幻の作品ということになっていたが、
最近では、動画サイトなどに、
その映像が挙げられていることもある。

興味のある人は、見てみるのも良いだろう。

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