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桔梗

更新日:

うちの裏には、1本の椎の木が生えており、
その根元に、1株の桔梗が生えている。

生えている場所から考えて、キチンと植えたものではなく、
恐らくどこからかタネが運ばれてきて、
勝手に芽吹いたものだろう。
1年草ではなく多年草なので、
毎年同じ場所で、同じように花を咲かせている。
そんな桔梗の花が、今年もいつの間にか咲いていた。
薄紫色の星形の花は、この季節に咲く花とは思えないほど
清涼感に溢れている。
花は何本も咲いているので、気が向いたときにはこれを切って、
1輪ざしの花瓶に入れ、玄関の靴箱の上に飾っている。
凛としたその姿は、玄関の雰囲気を引き締めてくれる。

花の季節が終わってしまえば、
地上に残っている部分は、枯れてしまうだけである。
そうなると、見た目にも美しくないので、
花が咲かなくなるとすぐに、
鎌できっちりと刈り取ってしまう。
こんな風に雑に扱っていれば、そのうちに枯れてしまうかな?
とも思うのだが、もともと、どこからかタネが運ばれてきて
勝手に生えてきた花である。
いわば、雑草の1つである。
まあ、枯れたら枯れたときか、なんて風に考えていた。

それが、ちょっと具合が違ってきたのは、
インターネットで「桔梗」について調べてみてからだ。
最初は花の名前がわからず、それっぽい花の名前を入力して、
出てきた花の写真を見ながら、咲いている花と見比べていた。
そうすると「桔梗」の写真が、家の裏で咲いている花と一致した。
そこで「桔梗」について調べてみると、
その説明文の中にこんな言葉があった。

「園芸店などでは、ごく当たり前に苗が見られますが、
 野生のものは減少傾向にあり、環境省のレッドデータでは、
 絶滅危惧Ⅱ類(UV)に指定されています」

え?あれ、絶滅危惧種なの?
剪定ばさみで切って花瓶にさしたり、
鎌でゴソッと刈り取ったりしていたんだけど、
ひょっとして、あれってマズかったのか?
普通、家の庭に生えているのなら園芸種だろうが、
我が家のは、どこからともなくタネが運ばれてきて
勝手に生えてきている。
自分としても、毎年花を咲かせる「雑草」という
扱いをしていたわけだし、
「園芸種」というよりは「野生種」といっていいだろう。
高山植物など、貴重な植物を採取したりすれば、
罰則が適応されるらしいが、
この場合はどういうことになるのだろうか?
生えているのは私有地(うちの裏庭)だし、
かといって栽培しているわけでもないし……。
調べてみた所、庭に勝手に生えてきた桔梗の扱いに関しては、
それっぽい情報が出てこなかった。
(当たり前か)
さしあたって、改めて水をやったりなどするつもりはないが、
根っこから掘り起こしたりするのは、
止めておいた方が良さそうだ。

桔梗は、キク目キキョウ科キキョウ属に属する多年草だ。
山野の陽当たりの良い所に育つ。
だが、うちの裏庭に生えている辺り、
少々陽当たりが悪いくらいでも、問題なく育つようだ。
日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアなどの
いわゆる極東地域に分布している。
高さは40〜100㎝、根は太く黄白色をしている。
つぼみの状態では、花びら同士がピッタリとくっついているため、
開花直前の桔梗は、風船のように見える。
そのため英語では「バルーン・フラワー」と呼ばれる。
つぼみは最初、緑色をしているが徐々に青紫色へと変わっていく。
6〜9月ごろに風船が弾けるようにして星形の花が咲く。
野生のものは青紫色をしているが、
園芸種の中には白色やピンク色をしたものもある。
さらに園芸種には、丈の低いもの、
花が二重になって咲くもの、
つぼみのままほとんど咲かない種など、
様々な種類がある。

名前の由来は、漢名である「桔梗(きちこう)」を
音読みで「ききょう」と呼んだことがはじまりとされる。
もともとは、「桔梗」ではなく「朝顔」と呼ばれており、
「万葉集」にある山上憶良の歌で「朝貌の花」というのは、
「桔梗」のことであるとされている。
じゃあ、現在の「朝顔」は一体なんだったんだ?
ということになるのだが、
奈良時代に初めて日本に持ち込まれた「朝顔」は、
当初、タネが薬用として用いられており、
その名を「牽牛子(けんごし)」と呼ばれていた。
恐らく当時は、花の名前にしても「牽牛子の花」と
呼ばれていたのではないだろうか?
この「牽牛子」が、朝、きれいな花を咲かせることから、
いつのまにやら「朝顔」と呼ばれるようになった。
「桔梗」から、その名前を奪った形になる。
「牽牛子」に「朝顔」の名前を奪われた「桔梗」は、
恐らくそれまでにも使われていたであろう
「桔梗」という名前で呼ばれるようになっていった。
また、平安時代の書物には「ありのひふき」という名前も
記されている。
「蟻の火噴き」である。
これは、蟻が「桔梗」の花に噛みつくと、
蟻酸の効果によって、花が赤く変色することから
つけられた名前である。
ただ、うちに咲いている「桔梗」を見ている限りでは、
蟻が好んで「桔梗」の花を食べるということはないため、
わざわざ蟻を捕まえて、無理矢理花を噛ませたものと思われる。
暇を持て余した、平安貴族の遊びだったのかも知れない。

漢方の世界では、太い根を干して咳や喉の薬にする。
これはサポニンという成分によるもので、
この成分は昆虫にとって有害なため、
もともとは虫害から身を守るためのものだと考えられる。
「桔梗根」という名前で生薬として用いられ、
根が太く、中身が充実しており、
エグミの強いものが良品とされる。
食用にもなり、若芽はからし和えや酢の物、バターいためなど、
花は天ぷらとして食べることが出来る。
韓国のキムチの中には、「桔梗」の根を使ったものがあり、
これはトラジキムチと呼ばれる。

うちの裏庭に生えている1株の桔梗だが、
調べてみると、随分と色々なことが明らかになった。
花も、若芽も、食べることが出来ること。
根っこは漢方の生薬として使えること。
この2つだけならば、かなりの有用植物ということになるのだが、
「絶滅危惧種」というのが、
色々やってみようという好奇心をくじく。

とりあえず、あまり手を付けず、放っておくのが良いようである。

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