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登山中の災害

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今月の25日、ネパールを大地震が襲った。
日ごとに、報告される使者・行方不明者の数は
増えていっており、
30日現在では、死者の数は5000人を超えたという。
国連は28日、ネパールの人口の約30%にあたる
800万人が被災したと発表、
いかに今回の地震の被害が、大きかったかというのがわかる。

ごく一般的な日本人にとって、
「ネパール」という国はインドと中国に挟まれた、
東西に細長い国にすぎない。
だが、自分のように「山好き」な一面を持つ人間にとっては、
「ネパール」はヒマラヤ山脈を背にして、
8000m峰をいくつも持ち、
何より世界最高峰のエベレストのある、
ある意味で「憧れの国」である。
当然、ヒマラヤやエベレストを目的とした登山客や、
これらの雄大な眺めを目的とした観光客も多く、
「ネパール」にとって、
これらの観光は大きな収入源になっている。
今回起こったこの大地震は、
このヒマラヤ、エベレストを目的にしている登山客や、
観光客をも、数多く巻き込んだのである。

4月25日に起こった地震、さらに後に起こった余震により、
エベレストのベースキャンプ付近で大規模な雪崩が複数回発生し、
巻き込まれた登山客が18名死亡した。
ロイター通信ではこれを、
「エベレスト史上、最悪の惨事」と見出しをつけて伝えた。
昨年の4月には、雪崩で16名の死者・行方不明者を出した
事故が起こっており、
今回の地震による事故は、これを上回る被害となった。
現地のニュースでは、死者22名、
行方不明者217名と報道されており、
さらなる被害者の増加が懸念される。

雪山登山には、大なり小なり
「雪崩」の危険がついて回るものだが、今回のように
地震によって引き起こされるケースというのは多くない。
大方の場合、「雪崩」は積雪が一定量を超えると、
自然発生的に起きるものであり、
今回の場合、地震という全山的な要因によって
「雪崩」が引き起こされたため、
より規模の大きなものになったのだろう。
地震は事前の予想もしにくいため、
避難等の連絡が行なわれることもほとんど無く、
結果として無防備な登山客が、
大規模雪崩に巻き込まれることになってしまったのだ。

今回のケースは、やや特殊なものであり、
そうそう頻繁に起こるような事故ではないのだが、
登山中に「全く予期していなかった災害」に
巻き込まれるということは、あり得ることである。
我が国でも昨年、御嶽山の噴火に大勢の登山客が巻き込まれ、
甚大な被害を出したことは記憶に新しい。
後になって、火山性地震が2週間前から増加していた、
という情報が出てきたが、
噴火当日の噴火警戒レベルは「平常」を示すレベル1であり、
被害に合った登山者たちは、
全員が全く無警戒だった所で、噴火に遭遇した。
「噴火予知」というのが、学者であっても容易でない点から、
こればかりは運が悪かったとしかいいようのない事故であった。

この「御嶽山噴火」のような大規模なレベルのものでなくても、
登山中に、「全く予想できない災害」に出くわすことがある。
火山の噴火の他にも、ネパールで起きたような地震は、
日本ではいつ起こったとしても、不思議ではないからである。
日本は、世界の中でも指折りの地震大国だ。
他の国の数倍、数十倍もの頻度で地震が起こっている。
外国人が恐怖で泣きわめくような地震が起きても、
日本人は平気な顔をしていた、なんて話も良く聞く。
それだけ地震が起こるのだから、
登山中に地震が起こることも、充分に起こりうる事態である。
もし、それが雪山で起こった場合、
今回のように大規模な雪崩が発生する危険性がある。
ただでさえ歩きにくい雪上を移動しているため、
雪崩が迫って来たとしても、何も出来ないことの方が多い。
雪のない山であったとしても、崖崩れや落石の危険性はあるし、
急な下りや細いトラバース道、
刃の上をわたるような峰歩きの際は、
激しく地面が揺れることは、即、滑落に繋がってしまう。

また「山火事」なども、登山中に出くわす危険のある災害だ。
と、いうよりは山の中にいない限り、
「山火事」というのは、それほど恐ろしいものではない。
住宅地に火が迫ってくるという恐怖はあるものの、
最悪の場合は家を捨てて逃げ出せば、
死ぬようなことは起こらない。
ところが登山中に「山火事」に遭遇すると、
途端に命が危険に晒される。
何より恐ろしいのは、登山中で山の中にいるため、
正しい情報が何も入ってこないことである。
一体、どの方向で燃えているのか?
どれくらいの規模の「山火事」なのか?
肝心なことが何もわからないのである。
普段、良く登っているような山ならともかく、
初めて上る山で「山火事」に遭遇すれば、
最悪の事態も充分に考えられる。

「雷」なども、予想の難しい災害だ。
もちろん、夏の午後を警戒したり、天気予報を見ておくなど
ある程度の予想をたてられる「雷」ではあるが、
実際、こんな時期にこんな所で?というような場所で、
空がゴロゴロと鳴り出すこともある。
(さすがにそういう場合は、落雷が起こることも少ないが)
木々の中を歩いているときはともかく、
森林限界の上で遭遇すれば、
心底キモの冷える状況である。

山の中で「災害」にあうことは滅多にない。
(あくまでも事前に天気予報などで下調べをしておいて
 山に入ったら、という前提でだが……)
ただ、どれだけ警戒していても、
「災害」との遭遇が0になることはあり得ない。
どうしたって人間には予想しきれない
「災害」が存在しているからである。 
これすら完全に避けたいのであれば、
山に登るのを止めるしかない。
実際に「御嶽山噴火」の際には、
「火山に登る以上、噴火の危険は常にある」とか、
「火山に登るなんて、危険なことをした奴が悪い」などという、
論調の意見が幅を利かせていたが、
基本的には全て「後出し」の戯言である。

反感を買うのを承知でいえば、
人間は自由意志で生きる動物なので、
常に「危険」を背負っている。
程度にもよるだろうが、「危険」と「自由」を量りにかけた場合、
「自由」が重いのが人間であり、
だからこそ歴史の上で、
「自由」を求めるために「危険」な戦いも恐れなかったのである。
少なくとも避け得ぬ「危険」を恐れて、
「自由」を捨てる者は人間ではなく、家畜である。
家畜の戯言に人間が耳を貸す必要はなく、
黙って肉だけ差し出させておけば良いのである。

随分と話がそれてしまったが、
今回、エベレストの地震によって発生した
雪崩に巻き込まれて亡くなった人たちには、
当然、何も落ち度はない。
ただただ、運が悪かっただけである。

「そんな所に行く奴が悪い」なんていう、戯言が出てくる前に、
それだけはしっかりと言い切っておきたい。

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