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電子レンジ〜その2

投稿日:

By: yoppy

前回、「電子レンジ」が人類初の
「熱伝導」によらない、
調理用加熱装置であることを書いた。
「電子レンジ」の加熱の秘密は、
マイクロ波(電磁波)にあり、
これが食材の中に含まれている水分子を
振動させることによって、加熱するのである。
今回は「電子レンジ」のキモである、
この電磁波と、「電子レンジ」の仕組みについて
書いていく。

さて、ひとことで電磁波といっても、
パッとイメージするのは難しい。
ほとんどの電磁波は、人間の目には見えないからだ。
……。
「ほとんど」と前置きした。
つまり、電磁波の中には、
人間の目でも見えるものがある、ということである。

電磁波はその波長の長さによって、様々な特徴を持つ。
もっとも波長の長いものが「電波」で、
これは波長が長いため、多少の障害物があっても、
進んでいくことが出来る。
これより波長が短くなると「光」になる。
この「光」は、物質に吸収されたり、発熱させたりする。
我々が見ることの出来る「可視光線」も「光」である。
この「光」の中には、人の目には見えない
「赤外線」や「紫外線」も含まれている。
「可視光線」の波長が長くなれば「赤外線」になり、
「可視光線」の波長が短くなれば「紫外線」になる。
さらに波長が短くなると、「X線」や「γ線」になる。
ここらあたりにくると、物質を透過するようになる。
これを利用し、物質の内部の映像を写し取るのが、
レントゲン写真やCTスキャンの原理である。

「電子レンジ」に使われているマイクロ波は、
このうちの「電波」のひとつで、
「電波」の中で、もっとも波長が短いものである。
従って、電子レンジの中を飛び回っているマイクロ波を、
目で確認することは出来ない。
マイクロ波の利用分野は広く、
「電子レンジ」のようなマイクロ波加熱の他にも、
衛星放送やレーダーなどにも使われている。

前回書いたように、電子レンジで使われるマイクロ波は
24億5千万ヘルツのモノで、
これが水分子を1秒間に24億5千万回振動させて、
急速に食材を加熱する。
「電子レンジ」に使われているマイクロ波の特徴として、
水の分子を振動させて加熱させる、というものの他に、
金属にぶつかると跳ね返る、というものと、
陶器、磁器、ガラス、紙、ある種のプラスチックを
ほとんど透過してしまうというものがある。
この素材的な特徴を生かし、
「電子レンジ」内部は金属で覆われているのである。
……。
いやいや、ちょっと待て、という声が聞こえてきそうだ。
そう、電磁レンジの内部、上下左右と奥の5面は
確かに金属製である。
しかし、開閉扉となっている手前の部分、
ここの所は、ほとんど全ての「電子レンジ」で、
ガラスが使われており、中が見えるようになっている。
もし、「電子レンジ」のマイクロ波が
ガラスを透過するのなら、
ここの所から、マイクロ波は全て外に出てしまう筈である。
「電子レンジ」の中を覗き込んでいれば、
ここから溢れ出たマイクロ波によって、
目や顔が沸騰してしまう筈だ。
しかし、実際に電子レンジの中を見ていた人が、
沸騰してしまったという話は聞いたことがない。
これはどういうことなのか?

よーく、「電子レンジ」の開閉扉の
ガラス部分を見てみると、
目の小さな金網があることに気がつくだろう。
この金網が、マイクロ波が外へ飛び出すのを
防いでいるのである。
いやいや、金網にも穴が空いているんだから
その穴から外へ飛び出すんじゃないの?と
思われるかもしれないが、
実はあの金網の穴は、マイクロ波の波長より小さいために
マイクロ波を外へ漏らさず、跳ね返してしまうのである。
同じ電磁波であっても、
「可視光線」はさらに波長が小さいため、
あの穴から外へ飛び出し、
「電子レンジ」内の様子を人の目に見せてくれる。
つまりフタを閉めた「電子レンジ」内は、
全面マイクロ波を反射する密封状態となり、
この密封状態の中をマイクロ波が飛び回ることにより、
中に置かれた食材を加熱するのである。

ここで、根源的な疑問が起こる。
あの箱の中で、マイクロ波が乱反射して
食材を加熱することはわかった。
しかし、そもそものマイクロ波は
一体どこから出ているのだろう?

電子レンジの内部には、マイクロ波を発振する
電子管発振器が取り付けられている。
これをマグネトロンという。
このマグネトロンから発振されたマイクロ波は、
導波管と呼ばれる金属製の筒の中を進み、
電子レンジ内へと運ばれる。
マイクロ波は、電子レンジ内を乱反射し、
中に置かれている食材の水分を振動させ加熱させる。
こうして、電子レンジ内に送り込まれたマイクロ波は、
ほぼ100%食材を加熱することのみに使われ、
熱へと変換される。
食材以外、マイクロ波を熱に変換するものがない
電子レンジ内では、
エネルギーは無駄に空気中に放出される事なく、
全て食材の加熱にのみ使われる。
(加熱された食材から、
 食器や空気中への熱伝導は起こる)
「電子レンジ」は非常に効率のいい、
調理用加熱器具なのである。

今回は、電子レンジのキモである電磁波と、
電子レンジの仕組みについて書いた。
次回は「電子レンジ」の誕生と、
その歴史について書いていく。

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