
By: Brandon Motz
前回、前々回と、モグラの生態を中心として書いてきた。
今回はそんなモグラの被害と、対策について書いていく。
ホームセンターの園芸コーナーに行くと、
モグラ対策グッズのコーナーがある。
風車のような形をした、振動によって、モグラを遠ざける器具。
モグラのいやがる臭いを発する、忌避剤。
各種用意されている捕獲器。
電子音を発するもの。
機械仕掛けでハンマーを振るい、地面に埋め込んだパイプを叩くもの。
爆風を地中に送り込むもの。
ありとあらゆる手段を講じて、畑からモグラを追っ払おうとする。
前回、モグラが肉食であることを書いて、
根菜類が地中で齧られるのは、モグラの仕業ではないとした。
これはモグラのトンネルを使った、ネズミの仕業なのだ。
しかし、そもそもモグラがトンネルを掘らなければ、
ネズミが地中の根菜を齧るようなこともできないはずだ。
直接の原因であるネズミを封じるよりも、
まず、間接的な原因であるモグラにトンネルを掘らせないことで、
ネズミの被害を防ぐ。
これは理屈にあった考え方である。
さらに前回、モグラがトンネルを掘ることによって、
作物の根が空気に触れて乾き、
結果として枯死させてしまうこともある、とも書いた。
これは、モグラの直接的な被害である。
ただ、根菜が齧られるのとは違い、
こちらはモグラの被害だと、気づきにくい。
ともすれば、作物が病気にかかったと思い込み、
全く見当違いな対策をして、みすみす枯らしてしまうこともある。
モグラのいる畑で、突然作物が弱り始めた場合、
モグラによる被害の可能性についても、考えてみる必要がある。
畑で、モグラの痕跡を見つけることは簡単だ。
よーく見てみれば、モグラが浅い所にトンネルを掘り、
移動した跡が残っていることがある。
それでなくとも、場所によっては、
しっかりとモグラの穴があいていることもある。
大きな畑を、機械で耕起するような場合はともかく、
小さい畑を、鍬で耕起する場合、土の断面にモグラの穴があいているので、
すぐにモグラの存在を確認できる。
モグラの穴は簡単に見つかるが、これを追跡していくのは難しい。
昔、婆さんの畑でモグラの穴を追跡して、掘ってみたことがあるのだが、
縦横無尽に掘ってあるので、とても追い切れなかった。
うちの婆さんはモグラに対しては甘く、対策が何も無かったが、
不思議に根菜類が齧られるという被害は起きなかった。
恐らくは、モグラのトンネルを利用するネズミなどが、
近くにいなかったためと思われる。
根の乾燥による枯死については、起こっていたのかもしれないが、
残念ながら婆さんは、それがモグラの仕業だと気づかなかったのだろう。
そういうわけで、婆さんの畑にはモグラ対策グッズはなかったのだが、
近所の畑には、風車型のモグラ撃退器が設置されていた。
プロペラに、弓矢の羽根を組み合わせたような器具で、
この羽根の部分で風を掴み、プロペラの方向を変える。
自分が子供のころは、このモグラ撃退器が
あちこちの畑に立てられていた。
しかし昨今、このタイプのモグラ撃退器は見かけなくなった。
理由は簡単で、使用済みのペットボトルを使えば、
簡単にモグラ撃退器を作れるからだ。
現在、あちこちの畑でペットボトル風車が、からからと音をたてて回っている。
あれは全てモグラ撃退用の、簡易風車だ。
逆に言えば、あれが立ててある畑には、
多かれ少なかれモグラがいるということになる。
果たしてこれらは、有効に働いているのだろうか?
実はペットボトルの風車を含め、これらのグッズはほとんど効き目がない。
え、まさか?と思われるだろうが、
市販のグッズをよく見てみれば、大概「本道に設置してください」と書いてある。
モグラの掘るトンネルには、いくつか種類がある。
まず、モグラが普段の生活でよく通る、いわば「生活道」だ。
この他にモグラのトンネルには、巣に通じる「幹道」と、
餌を探して掘り進んだ「探餌道」というのがある。
このうち「幹道」はもっとも深い位置(といっても地下30~50cm)にあり、
いわばモグラの生命線ともいえるトンネルだ。
「生活道」と「探餌道」は、共にかなり浅い所にある。
「生活道」は普通の生活用のトンネルで、一日に何度も通る。
それにくらべて「探餌道」は餌を掘り探した跡なので、
一度使った後は、二度と使われることはない。
この中で「本道」と言えそうなのは、「生活道」と「幹道」だが、
「幹道」は深い位置にあるので、探し当てるのはまず不可能だ。
となると、グッズを仕掛けるべきは「生活道」ということになる。
ただ、現実的にはこの「生活道」を見極めるのが、困難なのだ。
つまり目の前のトンネルが、「生活道」なのか「探餌道」なのか、
見ただけではわからないのである。
結局、説明書には「本道に設置してください」と書いてあっても、
目の前にあるモグラの穴に、グッズを仕掛けることになってしまう。
これでは、効果も運任せで、全く効果がないことも多い。
では、うまく「生活道」にグッズを設置できたとして、
どれほどの効果があるのだろうか?
捕獲器のように、モグラを捕まえてしまうものはともかく、
音や振動でモグラを脅かすグッズの場合、
すぐにこれらを迂回するトンネルを掘られてしまう。
そうなると、グッズの効果もほとんど上がらない、ということになる。
実際に学者たちの実験では、すぐに迂回路を作られ、
モグラがいなくなることはなかった、という話もある。
モグラは人間が考えているより、ずっと図太い生き物なのだ。
そこの所は、前回の生態の所で書いたとおりだ。
ではせめて、どのようにすれば「生活道」と「探餌道」を見分けられるのか?
これが見分けられれば、少なくとも捕獲器などの効果は上がるはずだ。
次回は、この「生活道」と「探餌道」の見分け方について、書いていく。