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セミたち〜その1

更新日:

By: t-mizo

我が家がまだ、借家暮らしだったころ、
家から50mも離れていない場所に、1本の桜の木が生えていた。

2〜3mの急な斜面(崖?)の上に生えており、
その周りには、他の木は1本も生えていない。
どうしてそんな場所に、
1本だけ桜の木が生えていたのかわからないが、
春にはきれいに花を咲かせていたので、
ひょっとすると、その花を目当てで切り倒されるのを
逃れていたのかも知れない。

しかし残念なことに、その桜の「花」の記憶は
ほとんど残っていない。
その桜の木について思い出されるのは、
やたらと蝉がとまっている木だった、ということである。
地面から1.5mぐらいの高さまでは、
太い1本の幹であり、
夏になるとそこに多くの蝉がとまっていた。
幼稚園の年長組か、小学生の低学年のころには
蝉を「獲る」ことを覚えた。
「獲る」といっても、捕虫網を使った捕獲ではなく、
木の幹にとまっている蝉を、
手でパッと押さえて捕まえるのである。
最初は捕まえた蝉をしげしげと見つめ、
すぐに逃がしていたのだが、そんな自分の姿を見て
プラスチック製の小さな虫かごが買い与えられた。

自分は捕まえた蝉をその中に入れ、
しげしげと見つめて、夏を過ごした。
もっとも、蝉を捕まえて飼育するなんていうことはせず、
ただ、透明なプラスチックの箱の中に入っている蝉を
のんびりと見つめているだけである。
観察に飽きれば、ふたを開けて蝉を飛ばす。
虫かごから解放されたセミたちは、
それこそ一目散に飛び去っていく。
その様子が結構面白かった。

蝉を手で捕るには、ちょっとしたコツがいる。
柄の長い捕虫網で獲るのと違い、
かなり蝉に近づけなければならない。
これが第1のポイントである。
ドタドタと足音をたてて近づいていくのは、もちろんNGだが、
抜き足、差し足で近づいていく必要もない。
普通にトコトコと歩いて、近づけばいいのである。
それでも気付かれないときは、気付かれないものである。
……いや、蝉がこちらに気付いたかどうかなんて、
分かるわけがないじゃない、と思われるかも知れない。
実は簡単に分かるのだ。
木に近づいて、蝉が「鳴く」のを止めた場合、
その蝉はこちらに気付いていると思っていい。
こちらに気付いて、警戒しているのだ。
しかし、そのまま何もせずにしばらく置いておくと、
泣き止んでいた蝉たちも、再び鳴きはじめる。
こちらが「敵」ではないと、認識したのである。
後は幹に張り付いている蝉を、よく調べ、
どの蝉を狙うかを決める。
西播地方に生息している蝉に、
どんな種類のものがいるのかはわからないが、
よく知られている蝉だと、5種類である。
アブラゼミ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、
クマゼミ、ヒグラシの5種類だ。
この5種類の中で、ヒグラシだけは捕まえたことがない。
ヒグラシが鳴き出す時間帯には、
すでに家に帰っていたからだ。
そうなると、子供時代の自分の獲物は
ヒグラシを除く4種類だったということになる。

この4種類の中で、例の桜の木で一番たくさん獲れたのが、
ニイニイゼミである。
2〜3㎝ほどの小さい蝉で、とりあえずこの蝉は数が多かった。
見た目には地味な色合いの蝉で、桜の木の幹に止まっていると
きれいに保護色となり、真正面からでは見つけにくい。
チー、チー、あるいは、ジー、ジー、と鳴くのだが、
ニイニイゼミというのは、どうもこの鳴き声から来ているらしい。
自分の獲る蝉のうち、7〜8割はこのニイニイゼミであった。
松尾芭蕉の俳句、「閑けさや 岩にしみいる 蝉の声」で
謳われている蝉が、このニイニイゼミだといわれる。
それだけ馴染み深い蝉だということだろう。

残り2〜3割のほとんどを占めていたのは、アブラゼミである。
羽根が茶色く、背中が黒い、あまり美しくない蝉である。
美しくはないものの、羽根に全く透明感のない蝉というのは
世界的に見ても大変珍しい。
ジリジリと、油で何か揚げているような声で鳴くので、
「油蝉」→「アブラゼミ」と名前がついた。
おそらく、日本においてはもっとも一般的な蝉だろう。

クマゼミはかなり大型の蝉である。
体長は最大で7㎝ほどにもなり、日本の蝉の中でも
もっとも大型の蝉の1つである。
「シャシャシャ」や「センセンセン」、または「ジー」と鳴く。
主に午前中に鳴く蝉である。
身体が黒く、大きいために「熊蝉」→「クマゼミ」となった。

ミンミンゼミは蝉の中のスターだ。
「ミーンミンミンミン……」と鳴いている声を聞くと、
いかにも夏が来たなー、という気分になる。
体長はほぼアブラゼミと同じくらいだが、
その羽根は透き通っていて、
体色は黒地に緑色の模様が入っている。
中には身体がほとんど緑色をしたミンミンゼミもいる。
こういった緑色の部分の多い固体は、
見た目にも非常に美しい。

この4種類のうち、ミンミンゼミやクマゼミがいた場合、
まず最優先でこれらを捕まえる。
なかなか捕まえることの出来ない、レアな蝉だからだ。
(あくまでも子供目線の話である)
そして、これらの蝉を捕獲するのに成功すれば、
その日は他の蝉を捕らず、その蝉だけを見て過ごす。
ミンミンゼミとクマゼミは、そういう扱いの蝉である。
しかし、ほとんどの場合、この2種類の姿はない。
いつも桜の木の幹にとまっているのは、
アブラゼミとニイニイゼミである。
アブラゼミはたまにいないこともあったが、
ニイニイゼミは、いつ行っても何匹かとまっていた。
従って、優先順位的には
アブラゼミ→ニイニイゼミということになる。
この優先順位に従って、捕まえる蝉を決める。

後は、いよいよ蝉の捕獲に入るのだが、
それはまた、次回である。

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