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人工地震

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6月18日、大阪で大きな地震が発生した。

大阪北部を震源地としたこの地震は、最大震度6弱、
マグニチュード6.1を記録した、直下型の地震であった。
震源は、大阪府北部を東西に延びる活断層「有馬ー高槻断層帯」の
南と見られ、ニュースによれば、この地域で記録を取り始めてから
震度6という地震が起こったのは初めてのことだという。
(あくまで、公式に記録を取り始めてからということで、
 それ以前では1596年に発生したとされる
 「慶長伏見地震」(推定M7.5)などもある)
政府の地震調査研究推進本部は、この断層帯で今後30年以内に
M7.5程度の地震が起きる確率を、
ほぼ0~0.03%と計算していたということだから、
当分、ここでは大きな地震は起きないと見ていたわけだ。
(もっとも、今回の地震はM7.5は無かったのだが……)
そういう情報を信じていた人たちからすれば、
今回の地震は、まさに手痛い不意打ちを食らったようなものだろう。
もっとも、大阪から近い神戸で「阪神大震災」が発生し、
それ以降も「東日本大震災」や「熊本地震」など
大きな地震災害が起こっており、大きな津波被害が予想される
「南海トラフ地震」についても、近いうちに発生すると
いわれている状況であるから、当該地域に住む人々が
それほど地震等に対して甘い考えを持っていたとも思えない。

さて、こういう大きな災害が発生した場合、
特に注意を払わないといけないのが、デマ情報である。
かつての地震では、「地震によって動物園のライオンが逃げ出した」
などというデマ情報が拡散され、大きな反響を呼んだ。
後にこのデマ情報をSNSに発信した人物が、
偽計業務妨害の疑いで逮捕されたのだが、
逮捕された人物は地震の発生した地域の住民ではなく、
全く地震に関係のない地域の住民であった。
今回の地震では、「地震によってシマウマが逃げた」というデマ情報が
流され話題になったが、ひょっとするとこの情報を流した人物も
後に逮捕されるのかも知れない。

この手のデマ情報と少し趣が違っているのが、
「今回の地震は人工地震によるものだ」というものだ。
この手の「人工地震」ネタは、大きな地震が発生するたびに出回る。
大体、この手のネタはパターン化しており、
黒幕が日本政府かアメリカ政府というのが鉄板である。
当然、今回の地震においても、これを「人工地震」だとする声が上がり、
それに同調する者、批判する者、笑い飛ばす者など、反応も様々だ。

さて、ここで問題になるのが「人工地震」という言葉だ。
単純な言葉の意味でとらえると、これは人の手によって
引き起こされた「地震」ということになる。
ただ、よくよく調べてみると、この「人工地震」の中には
「地震」そのものを引き起こすことを目的として発生させられた「地震」と、
別の目的を達成しようとして、副次的に発生した「地震」がある。
後者の例としては、土木工事の際の発破作業で発生したものや、
地下核実験で発生した「地震」などが挙げられる。
これらの例に関しては、「地震」そのものは完全な副産物であるため、
果たして「人工地震」に含めてしまっていいのかどうかは疑問なのだが、
「人工地震」という言葉を調べてみると、
こういった例も数多く紹介されているため、一応、取り上げることにした。

これとは逆の、「地震」発生を目的とした、
純粋な「人工地震」というのはどういうものだろうか?
もちろん、科学的見地から「地震」のメカニズム解明のために
「人工地震」を発生させる研究をするというのは、あり得ることである。
ただ、発生させるモノがモノだけに、場合によっては広範囲に
甚大な被害を生むような結果にもなりかねない。
そういう意味では、「人工地震」(特に大規模なもの)を起こすのは、
障害が大きいといえる。
ただ、小規模な「地震」を発生させ、そこから生じた
ある種の波(地震波)を観測することによって、
地中の構造などを調査するというようなことは行なわれており、
こちらの方は、「人工地震」を科学的な研究のための手段として扱っている。
現在、「人工地震」が研究されているのは、
こういった科学的な研究の一環としてのものだけの様である。

さて、今回の地震の際に発生した「人工地震」説に話を戻そう。
これらひと通りの「人工地震」説は、主としてインターネットの
SNSを中心にして広まっているらしい。
先に書いた、ライオンやシマウマが逃げ出したという話と
全く同じパターンである。
ざっと、一連の書き込みを見てみると、誰かが主張した
「今回の地震は、政府による人工地震だ」という意見に
様々な意見が寄せられる形で発展している。
この主張に賛同する者、批判する者、バカにする者など、
様々な立場からの意見が寄せられているが、
よくよく賛同者の書き込みを見ていると、
微妙な違和感を感じるものも、かなりある。
恐らくは、純粋に「人工地震」説を信じているのではなく、
悪ふざけの一環で、これに賛同しているのではないだろうか。
もちろん、本気で「人工地震」説を信じているものもあり、
彼らの中には、大阪の地下で核爆発が起こったなんてことを
言っているものもある。
たしかに核実験の際、その核爆発に伴って大きな地震が起こることがある。
そのマグニチュードはM4~7まで幅広い。
これをひっくり返して考えてみれば、このレベルの「人工地震」を
引き起こすためには、核爆発クラスの力が必要だということである。
現在、人類が核爆発クラスの力を瞬間的に発生させようと思えば、
これはもう、核爆発を起こすくらいしか手は無い。
(だからこそ、いつまでたっても核兵器が無くならないのだ)
現在の日本で、そこまで極秘裏に、かつ非道な目的で
核を使用しようとすれば、その情報が全く漏れ出ないというのは考えにくい。

「人工地震」について調べてみても、一部の科学的なものを除けば、
かなり荒唐無稽なものが多い。
「地震で動物園のライオンが逃げ出した」というデマで逮捕者が出ても、
「地震が人工地震である」という話で逮捕者が出ないのは、
「ライオン」の話に比べて、明らかにその信憑性が低いからだろう。
誰もそんな話は信じず、パニックや混乱を引き起こす力も無い。
恐らくはこれが、警察としての公式見解なのかも知れない。
(まあ、「人工地震」の話は「ライオン」の話に比べて、
 あきらかにパニック等を引き起こしにくい話ではあるが……)

いずれにしても「人工地震」自体、全く発展性を感じさせない分野であり、
全く生産性のないものであることだけは、確かである。

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