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大阪都構想

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つい先日まで、あるTVコマーシャルが頻繁に流れていた。

大阪市の二重行政を解消すべく立ち上げられた、
「大阪都構想」の是非を問う、住民投票の告知と、
賛成・反対、それぞれの陣営のTVコマーシャルのようだった。
……ようだったと、わりといい加減な感想になるのには
大きな理由がある。
自分が住んでいるのは、兵庫県の西部・たつの市で、
今回の住民投票には、全く関係がないからである。
維新の会の橋下代表が「大阪都構想」への支持を訴えても、
反対派がこれに激しい反論を加えても、
兵庫県民である自分には全く関係がなく、
1票を投じる権利すら、持っていないからである。
いわば、完全な対岸の火事であり、
自分は完全な観客、いや野次馬である。
そんな関係のないたつの市にまで、
「大阪都構想」の住民投票を告知する
TVコマーシャルを流していたのだから、
大阪府近隣の各自治体の住民も、
自分と同じ気持ちを持っていたのではないだろうか?

5月17日に行なわれた住民投票の結果、
わずかに反対派が賛成派を上回り、
「大阪都構想」については、ノーが突きつけられる形となった。
維新の会の創始者で、「大阪都構想」を推進していた橋下市長は、
今季限りでの引退を表明、
以降は政治の世界には関わらないと発表した。
(もともと、住民投票で「大阪都構想」が否定されれば、
 今季限りで現役を引退、政治の世界から身を引くことは
 明言していた)
ただ、開票速報を見ている限りでは、
賛成派・反対派ともに、全くの五分といっていい情勢で、
どこかのバランスがちょっとでも狂っていれば、
賛成派の勝利もあり得たほどの、接戦であった。
今回の勝者となった反対派にしても、
住民のほぼ半数が、
大阪市の解体を望んでいたという現実を突きつけられては、
あまりいい気分の勝利では無いだろう。

この「大阪都構想」、
特に大きく騒がれ始めたのが、
橋下大阪府知事就任以来のことなので、
彼の作り出したものと思ってしまいがちだが、
調べてみると、この「大阪都」については、
昭和28年(1953年)の大阪府議会にて、
大阪府・市を廃止して大阪都を設置し、
市内に都市区を設置する、とされている。
その内容が、現在のものと同じかどうかはわからないが、
今から50年以上も前に「大阪都」という言葉が、
公式の場に持ち出されていたのである。
その約半世紀後の2000年、
当時の太田大阪府知事は、
大阪府と大阪市の統合を掲げた、大阪新都構想を唱え、
2001年の「大阪府行政計画」の中で、
「大阪都」という言葉を使った。
大阪府を「大阪都」に、という発想は、
決して新しいものではなかったのである。
「府」で満足せず、首都・東京と同じ
「都」を名乗ろうと考える辺りは、
東京に匹敵しうる、大都市であるという自負だろうか。

日本の歴史を顧みた場合、
大阪が日本の首都として、機能していた時期は短い。
天皇の代替わりごとに、
機内で遷都を繰り返していた奈良時代以前。
京都に天皇・政治機能が存在していた平安時代。
武士による鎌倉幕府設立によって、
政治機能が鎌倉に移った鎌倉時代。
再び、京都に天皇・政治機能が存在することになった室町時代。
京都に天皇、江戸に幕府という政治機能が別れた江戸時代。
東京に天皇・政治機能が移った明治時代以降。
……。
大阪がないじゃないか、と思われるかも知れないが、
奈良時代以前に大阪府域に遷都した際と、
室町時代と江戸時代の間、豊臣秀吉がいたわずかな期間だけ、
大阪に政治機能が存在していたのである。
(後者に関しては、天皇は京都にいた)
奈良、京都、鎌倉、江戸と比べてみても、
その政治機能が存在していた時期は、驚くほどに短い。
そんな大阪が、現在のような大都市になったきっかけは、
大阪が奈良・京都からもっとも近い港であり、
海上交通・陸上交通の要衝であったからである。
地理的には物流の要、経済の拠点となる条件を満たしていた。
そこに目を付け、大阪に本拠地をおいたのが豊臣秀吉である。
彼は日本の経済の中心地となりうる大阪の可能性に気付き、
そこに本拠地をおき、日本を治めた。
後に江戸時代になり、政治の中心地は江戸へと移ったが、
経済の中心地は代わらず、大阪であり続けた。
「天下の台所」と呼ばれた大阪は、
海路と陸路の要衝という、地理的条件を生かし、
長く日本の経済の中心地であり続けたのである。
そういう意味では、現在でも経済の中心地となりうる大阪を、
「府」ではなく「都」としたとしても、
大きな違和感を感じることはないだろう。

仮に地震や火山の噴火などの天災で、
首都・東京が壊滅的な状況に陥った場合、
かりそめでも日本の首都として機能できる都市は、大阪だろう。
地震や火山など、強烈な災害の起こりうる日本では、
例え少ない可能性であっても、
首都が災害によって、機能を停止することも、
考えておかなければならない。
(もちろん、大きな災害によって
 壊滅的な被害を受ける可能性があるのは、
 大阪にしても同じことであるが……)
「大阪都構想」は、今回の住民投票によって
頓挫してしまったが、
大阪が、日本にとって重要な都市であることは変わりがない。

大阪市民の約半数の支持を得た「大阪都構想」が、
この後、どうなっていくのかはわからないが、
大阪府・大阪市のこれからの施政によっては、
再び、大阪市を無くしてしまう「大阪都構想」が
さらに大きな力を持つこともあり得る。

対岸の、我々兵庫県民としては、
のんびりと見物を決め込むだけである。

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