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雪山の噴火

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今月23日、群馬県草津白根山の本白根山が噴火した。

噴火した時間が午前10時ごろで、
なおかつ、すぐ近くに草津国際スキー場があって、
正にスキーシーズンのまっただ中であったこともあり、
現場は相当の混乱に陥ったようだ。
現場一帯に降り注いだ噴石によってケガ人が続出し、
これを受けて、当時訓練中だった自衛隊員が1人、命を落としている。

突然の火山の噴火、ということになると、
すぐに思い出されるのは、2014年に起きた御嶽山の噴火である。
噴火警戒レベル1(平常)という状況での突然の噴火であり、
行楽シーズンのお昼時という、考えられる限り
もっとも人の多い状況での噴火であったため、
多くの登山客がこれに巻き込まれ、
58名もの登山者が犠牲になった、戦後最大の火山災害である。
今回の草津白根山(本白根山)の噴火においても、
最初の噴火の時点では、噴火警戒レベルは1であり、
これが2に引き上げられたのは、おおよそ1時間後、
さらに3に引き上げられたのは、さらにその1時間後となっている。
後に発表されたことでは、23日の午前9時59分に
火山性の微動が発生し、これが約8分間続いたということなので、
恐らくは、これが噴火だったのだろうと考えられるが、
カメラの映像が無く、噴火かどうかが判断できなかったという。
そのため、噴火後、これをただちに知らせる
噴火速報を出すことが出来なかった。
確かに発表されている噴火映像は、現地にいたスキー客らが
携帯のカメラで撮影したらしいものや、
たまたま現地に設置してあった、スキー場のライブカメラ(?)の
ものだけである。
このライブカメラの映像では、噴火口付近の様子は分からず、
画面の右の方で起こっている噴火によって吐き出された黒い噴煙が、
噴石の落下と共に、流れてくる様子しか映っていなかった。
そういう状況であったためか、
実際に噴火が起こってから、噴火警戒レベルが3に上げられるまで、
実に2時間もの時間が経ってしまったというわけだ。
前回の御嶽山の噴火では、気象庁(?)の職員が会見で
半ばキレ気味に「火山の噴火の予測は難しい」と話していたが、
今回の噴火もまた、この話を印象づけるものとなった。

もう1つ、今回の噴火で難しかったことがある。
現場付近の地図を見てみれば分かるのだが、
たしかに草津白根山には火口があり、
これを見るための展望台も設置してあるのだが、
今回、噴火を起こしたのはそこではなく、
そこからグッと南側に下がった所にある本白根山だったという点だ。
今回の報道で出てきた、草津国際スキー場というのは
草津白根山と本白根山の間に、東西に細長く作られている。
気象庁の会見では、今回の火山性微動によって
噴火の可能性があると考えられていたのは草津白根山の方で、
本白根山の方は全くのノーマークであった。
もっともそれも無理は無い。
草津白根山の方は、ここ最近でも火山性の活動を見せており、
噴火警戒レベルが2に引き上げられたり、
噴火警報を出したりしていたのだが、
そこから南にある本白根山では、そういう傾向が見られなかったからだ。
記録によれば、本白根山は3000年程前に噴火した記録があるそうだが、
それ以降は、ずっと沈黙をし続けていたわけだから、
常人の感覚からすれば、もう、噴火活動は終わったと考えるのが
普通だろう。
これが全く予兆もなく、突然、噴火したのだから、
感覚としては背後から奇襲をかけられた様なものだ。
草津白根山の火口には、多くの監視カメラが向けられていたが、
今回の噴火は、その背後で起こったのである。

インターネットなどで流れた、本白根山の噴火映像は印象的であった。
この時期の雪山というのは、ほぼ、白一色の世界だといっていい。
地面は真っ白。
空も白く曇り、そこから真っ白い雪が落ちてくる。
遠くに見える山々は雪に煙り、わずかに灰色の色調を残す。
白で統一された、無彩色の世界とでも言おうか。
そんな白い世界に、やはり無彩色な、真っ黒な噴煙が吹き上がり、
白い世界を黒く浸食していく。
その黒い噴煙の中から、真っ黒な噴石が次々と降ってくる。
世界に全く彩りがないだけに、その映像は非現実的でさえある。
極寒の世界に吹き上がる灼熱の噴煙と、焼けた噴石。
正に天変地異といっていい。
そんなモノクロームな世界の中を、鮮やかな色彩のスキーウェアを
纏ったスキー客たちが逃げ惑う。
なんともチグハグな光景ではある。
思い返せば、御嶽山の噴火のときも、印象的な光景であった。
抜ける様な青空に吹き上がる巨大な噴煙。
その青空と噴煙の下を、やはり色鮮やかな登山服を纏った
登山客たちが逃げ惑う。
これまた、どこかチグハグさを感じさせる。
どちらの噴火にもチグハグさを感じるということは、
それだけ、火山の噴火というのが、
我々にとって非日常なのだということなのかも知れない。

マジメな話をすれば、今回の噴火に関しては、
相当に運が悪かったとしか言い様が無いだろう。
いくら活動している火山の近くだからといって、
3000年間、全く何も起こらなかった山まで警戒しろというのは、
さすがに無茶な話としかいえない。
3000年というのは、人間が警戒を解き、
ガードを下ろすのは当たり前の時間である。
そこの噴火を予想しろというのは、いくら何でもムチャ振りが過ぎるし、
登山者やスキー客に、これらを警戒しろというのも無茶な話だ。
これを警戒しないといけないのであれば、
富士山などは、いつ噴火してもおかしくない活火山の様なものだ。

こんな風に結論づけては批判も出るかも知れないが、
世の中には、どうしたって対応できない様な事態も存在する。
今回の噴火も、そういう事態の1つには違いない。
被害にあったスキー客などには一切責任は無く、
正直、気象庁に責任を問うのにも無理がある。
運が悪い。
そうとしか言い様が無い、噴火災害であった。

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