前に、仮面ライダーの映画について書いたことがあった。
平成ライダーVS昭和ライダー。
旧世代と新世代の対決だった。
今、改めて考えてみると、すごい分類の仕方である。
放映していた時期の年号で分けるというのは、
西暦しか存在しない国では、全く理解できないことだろう。
日本には、有名なヒーローシリーズが3つある。
ウルトラシリーズ。
ライダーシリーズ。
戦隊シリーズ。
これらはどれも昭和期に第1作が放映され、
以降、同じシリーズが作られ続けてきた。
この中で、昭和、平成という区別がないのは、戦隊シリーズだけだ。
と、いうのも戦隊シリーズは第1作の「秘密戦隊ゴレンジャー」から、
現在放映中の「烈車戦隊トッキュウジャー」まで、
休みなしに、毎年作られ続けているからだ。
昭和から平成という、年号が変わった時期にも、
変わらずに戦隊シリーズは放映され続けており、
そのため昭和、平成の区切りがつけにくい。
ウルトラシリーズとライダーシリーズは、途中に放映していない期間がある。
ウルトラシリーズは、昭和から平成に切り替わる時には、
作品を放映しておらず、
ライダーシリーズは「仮面ライダーBlack RX」を放映中であった。
この「仮面ライダーBlack RX」は、放映開始時が昭和であったため、
昭和ライダーということになっている。
面白いことに、ウルトラシリーズも、ライダーシリーズも、
昭和から平成の転換期に、大きな変化があった。
従来のシリーズと、全くつながりのない新シリーズが、立ち上がったのである。
ウルトラシリーズの場合、
それまでのウルトラマンは、全て「宇宙人」という設定であったが、
平成シリーズ「ウルトラマンティガ」では、宇宙人という設定は無くなり、
地球の古代文明に関連した、光の巨人という設定に変更されていた。
それまでの、ウルトラマン=宇宙人、という設定が無くなり、
従来のファンの動揺は大きかった。
制作側としても、大きな賭けであったろうと思う。
過去作品とのつながりを断ってしまえば、
シリーズ物の最大の利点、かつてのヒーローを共演させることによって、
旧作ファンを取り込む、という手段が使えなくなるからだ。
しかも、この「ウルトラマンティガ」は、デザイン上でも、
それまでのウルトラシリーズにはない、新機軸を取り込んでいた。
ボディーカラーを、赤とシルバーだけでなく、
それまでにない、ブルーを取り入れたのだ。
さらに状況に応じて、体色を変化させることにより、
マルチタイプ、パワータイプ、スピードタイプと、
タイプチェンジするようになったのである。
これはウルトラシリーズでは、初の試みであった。
突きつけられた新機軸、そのギャップに翻弄されるファンたち。
その不安なファンの気持ちを、さらに暗くさせたのは、
ウルトラマンに変身する主人公ダイゴを、
アイドルグループV6のメンバー、長野博が演じるという情報だ。
正直、ジャニーズかよ……、という空気があった。
が、これらの不安は、「ウルトラマンティガ」が放映されると、
全て吹っ飛んでしまった。
古代遺跡の石像と主人公が融合し、ウルトラマンになるというのは、
今までのシリーズにない謎を含んでいたし、
タイプチェンジは、スーツアクターが入れ替わることで、体つきも変わり、
パワー感、スピード感が強調されていて、迫力があった。
なにより、長野博の好演は素晴らしく、
ジャニーズがどうとか言う偏見は、すぐに無くなった。
それまでのウルトラマンとは違う、ウルトラマンの力を手に入れた人間、
それに関わってくる使命感や、悩みというものを、見事に演じきっていた。
それまでのシリーズの遺産を使わず、全くの新機軸に挑戦した「ティガ」。
全編を通してシナリオの完成度も高く、
主人公のダイゴだけではなく、そのまわりを固めるキャラクターたちも、
実に丁寧に描かれていた。
TVシリーズでは初となった、悪のウルトラマンとの対決。
主人公と同じようにウルトラマンの力を手に入れつつも、
それを自らの欲望のために使おうとした、イービルティガとの戦いは、
まさに人間と人間の戦いだった。
さらに最終回に3話を費やすスタイルも、この「ティガ」が最初だった。
古代文明を滅ぼした「闇」が復活し、地球を覆う。
ダイゴの正体に感づいていた、隊長たちの制止を振り切り、
邪神ガタノゾーアに戦いを挑む、ウルトラマンティガ。
だが、その力の差は大きく、ウルトラマンは破れ、元の石像に戻ってしまう。
石像を再びウルトラマンにもどすため、仲間たちは必死で作戦を展開する。
しかし、後少しの所で作戦は失敗、万事休すに思われたその時……。
この「ティガ」の成功により、後に平成ウルトラシリーズと呼ばれる
シリーズが始まった。
それはまさに、ウルトラシリーズにおける、新時代の始まりであり、
ターニングポイントであった。
この「ウルトラマンティガ」によって、ウルトラシリーズは生まれ変わった。
まさに、もうひとつの第1作「ウルトラマン」だった。