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放射能除去装置

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先日、インターネットでニュースサイトを見ていたら、
とある詐欺事件の記事に目がいった。

「架空の「放射能除去装置」購入トラブル装い……
 82歳女性から850万円だまし取る 愛知県警」

もちろん、自分の目を引いたのは「放射能除去装置」というワードだ。
東日本大震災における福島第1原子力発電所の事故以降、
日本人にとっては、放射能というものが、わりと身近なものになった。
あの事故以前では、放射能といえば
遠くチェルノブイリでの原発事故などで、ある程度は飛散したものの
それもどこか遠くでの出来事、という認識しか持っておらず、
国内での「それ」は、あくまでも厳重に管理されており、
全く日常生活の中には、存在していないもののように思われていた。
ところが福島で原発事故が起こり、満足にその後始末が出来ず、
放射性物質が常時漏れ続けているような状況になり、
人々は否応無く、「放射能」というものに
向き合わざるを得なくなった。

原発の周辺地域では避難指示が出され、
多くの人が避難生活を余儀なくされた。
また、汚染された土などを取り除く「除染作業」というものの行なわれ、
その放射性物質を含んだ土をどこに置いておくのかで、揉めたりもした。
(この土のみならず、震災によって大量に発生した瓦礫も
 原発事故によって放射性物質を浴びることになり、
 これの処理を他県で行なおうとして、反対されることもあった)
現在でも、かなり広域な範囲が立ち入り制限されており、
これらがいつ、完全に解除されるのか?ということについては、
未だ全くめどが立っていない状況である。

ひとときは、付近の地域で生産された農産物や、漁獲物にも
放射性物質で汚染されているのでは?と疑心暗鬼になり、
福島県産など近隣の産地の生産物が売れなくなった。
「風評被害」という言葉が流行ったり、
食品に含まれる放射性物質を検査したりし始めたのも
このころのことであり、我がたつの市でも
名産品の手延べ素麺の天日での乾燥を控えるようになり、
これにやり過ぎだ、という批判が寄せられたこともあった。
まあ、地元だからかばうというワケでもないが、
あのころはまだ、飛散している放射性物質が
人間や食物にどのような影響を及ぼすのか全くデータがなく、
皆、手探りでこれに対応していたのである。
そういう状況下で、過敏な反応をしてしまったとしても、
誰もこれを責めることは出来ないだろう。

これらの一連の流れがあり、それによって
日本人の「放射能」へのスタンスも変わった。
それまでとは違い、かなり身近な危険として
これを捉えるようになった。
今回の「放射能除去装置」をネタにした詐欺事件もまた、
そういう下地があってこそ、成立した事件だといえる。

福島の原発事故が起きる前、「放射能除去装置」といえば、
アニメ「宇宙戦艦ヤマト」に出てくる「コスモクリーナーD」であった。
ガミラスの遊星爆弾によって、深刻な放射能汚染に陥り、
人類滅亡を待つだけだった人類に届けられたメッセージ。
それが、地球から14万8千光年離れた
大マゼラン星雲にある惑星「イスカンダル」まで、
放射能除去装置「コスモクリーナーD」を取りに来い、というものだった。
放射能汚染によって、人類滅亡まで後1年と追いつめられた人類は、
メッセージに同封されていた設計図から波動エンジンを完成させ、
これを搭載した宇宙戦艦ヤマトを建造。
滅亡に瀕した地球を救うため、
ヤマトはイスカンダルへの旅に出るというのが
「宇宙戦艦ヤマト」のストーリーである。
「放射能除去装置」というのは、
いわば「ヤマト」のストーリーの根幹を成す最重要アイテムである。
少なくとも「ヤマト」のストーリーの中では、
およそ200年後の2199年においても、
地球人類はこの「放射能除去装置」を自作することは出来ず、
これを貰うために、片道14万8千光年という、
これまた人類史上初の光速宇宙船による
未曾有の大冒険を余儀なくされるわけだが、
このストーリーからすると「放射能除去装置」というのは、
ある意味、光速を越える技術(波動エンジン)よりも
難しいという風にも捉えられる。
そんなアニメの世界ですら、超絶的な技術である「放射能除去装置」が、
よりにもよって詐欺事件のネタに使われ、
あまつさえ、それを信じる人がいたということは、
なかなか衝撃的な事件である。

現在、インターネット検索で「放射能除去装置」というワードで
画像検索をかけてみると、おおよそ半分近くが
「ヤマト」の「コスモクリーナーD」の画像である。
さらに残りの半分の画像のうち、その半分が
何らかの「ヤマト」関連の画像である。
この結果から見ても「放射能除去装置」といえば、
「ヤマト」に登場するアレという認識は、間違っているわけではない。
しかし、そんな圧倒的な「ヤマト」関連の画像に紛れて、
工場のプラント的な画像や、金属製の筒のようなものの画像などが
散見できる。
そう。
これらが現在、地球人が自らの手によって作り出した
「放射能除去装置」である。
まあ、よくよく調べてみると、これらのほとんどは
「放射能」そのものを除去するのではなく、
水に含まれている「放射性物質」を取り除くだけのものである。
まあ、ぶっちゃけていえば、ちょっと変わった浄水器といっていい。
「ヤマト」の「コスモクリーナーD」が、
わずか一軒家ほどの大きさの機械1つで、地球全体を覆って
地下深くまで染み込んでいた「放射能」汚染を
あっとう言う間に除去してしまった性能に比べれば、
その除去能力など、ゼロに等しい。
(しかも、コスモクリーナーDは、地球中の汚染された物質を吸い込み
 これから放射能を除去して吐き出すという行程を
 行なったわけではないようだ。
 劇中の描写を見ている限りでは、機械を始動した途端、
 辺りの放射能がスッと消え去っている。
 その描写を信じる限りでは、放射能を取り除いたというよりは、
 何らかのエネルギーで中和し、無害化したという風にさえ見える。
 もちろん、物理的に放射能が中和できるのかどうかは知らないし、
 それがいわゆる、アニメの嘘であるといわれれば、それまでだが……)
そんな微々たる(ヤマトのアレに比べれば)能力しか無い
地球製の「放射能除去装置」であるが、
恐らく、今回の詐欺事件で取り上げられたのも、
この手の「放射能除去装置」であろう。
日本は、世界で唯一の核兵器の被爆国であり、
核や放射能については、戦争教育などによって
過敏なほどに「恐ろしいもの」というイメージを持っている。
今回の詐欺事件は、そういう日本人の意識の急所を突いた
狡猾なものだったのかも知れない。

まあ、いずれにしても、「放射能除去装置」なんてものは
まだまだ充分な実用性を持ったものではなく、
(少なくとも、福島の事故現場で活用されているモノの
 効果を見る限りでは……)
精々が良く出来た浄水器、といった程度である。
そのことを良く頭に刻んでおいた上で、
「放射能除去装置」を謳った詐欺などに、引っかからないようにしたい。

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