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クマ VS ヒト、時間無制限1本勝負〜その2

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前回に続き、今回もクマとヒトの遭遇・戦いについて、
ややプロレス的な視点から、見ていこう。

クマとの遭遇を避ける手段として、
「熊鈴」の是非が問われることがある。
これは、人工的な音(金属音・自然界には存在しない)を
出すことによってクマに人間の存在を知らしめ、
向こうに、こちらを避けてもらおうというものである。
直接的な戦いになる前に、
音の力を借りてこれを避けようというのである。
登山者や山菜採りに山に入る人の中には、
「熊鈴」のように金属音を出すものを身につけている人間の他に、
ポータブルラジオなどを大音量で鳴らし、歩いている人もいる。
音楽などをならし、揚々と歩いている姿は、
どこかプロレスの入場シーンを思い浮かべてしまう。
山菜採りなどの場合には、
リュックと一緒に大音量のラジオを置いておき、
その位置を分かりやすくする、という使い方もされているようだ。
ただ、このラジオが本当にクマ除けの役に立っているのか?
ということになると、「熊が人を襲うとき」の著者は疑問を呈している。
一例を挙げてみると、
「男性が死亡しているのが発見された。傍でラジオが大音量」
というものがある。
他の例を見ても、意外に重傷を負っている場合が多い。
どうも大音量でラジオを流していると、
その音で、クマの近付いて来る気配に気付かない、ということらしい。
まあ、移動中に鳴らしているのであればともかく、
定位置で鳴らし続けているのであれば、クマの方も警戒しつつ
こちらを観察する余裕が生まれる。
逆に人間の方には、ラジオが鳴っているから
クマは来ないという思い込みと、
常時、人の声が聞こえているということで、緊張感も消える。
結果として、緊張感を保っているクマと、
油断している人間という構図になり、
これが大きな事故に繋がるのかも知れない。

クマに出会った際、声を出して
これを威嚇しているパターンが結構ある。
いくつか例を挙げてみよう。
「キノコ採り中の女性2人が襲われて、共に顔に軽傷。
 大声を出したら去った」
「山菜採りの男性が顔に重傷、
 「コノヤロウ」と叫びながら、杖をふり回して撃退」
「栗拾いの男性が頭に重傷を負い、
 「このやろう、行け」と叫ぶと逃げた」
この3パターンでは、襲われて負傷した後、挙げた大声が
状況を変える大きなきっかけになっている。
危機的な状況にあっても、無理矢理大声を上げることで
気持ちを奮い立たせる効果もあり、
たかだか大声、などとバカに出来ないものがある。
クマは金属音などの高い音に敏感に反応するとされており、
何か手に金属製のもの(スコップやピッケル、バケツなど)を
持っていれば、これを打ち鳴らしてみるのもいい。
30分もクマとナガサ(山刀)で戦った男性は、終始、
「やるなー、このやろう、やるかー、ばかやろう」と、
叫んでいたという。
こうなってくると、もう、まるでプロレスのマイクアピールだ。
プロレスの場合、試合前後のみならず、
試合中にも声を挙げて、敵や観客にアピールすることがあるが、
このやり方は人間のみならず、クマにも有効らしい。
山中でクマに出会ってしまったら、パニックになり
声も出せなくなってしまうこともあるだろうが、
そこでなんとか声を絞り出せるかどうかは、
その後の運命を大きく変えることになるだろう。

音でクマを撃退するという場合、
ちょっと意外なものが使われていることに驚いた。
爆竹である。
タケノコ採りや山菜採りのプロが、クマ除けの方法として
もっともよく使っているのが、これなのである。
爆竹など、全く子供の玩具の様に思う人もいるかも知れないが、
ホームセンターなどでは、鳥や獣を追い払うための爆竹を
ちゃんと販売しているのである。
これらは子供用のものに比べると、
導火線なども固くしっかりとしており、火も消えにくい。
値段も安く、爆裂音は強烈に響くし、
使った後にはほんのりと火薬の臭いも漂い、
クマに銃をイメージさせることが出来る。
人家などの近くにクマが出没した場合でも、猟銃と違い、
誰でも扱うことが出来るため、その有効性は高いのだが、
いかんせん、火を扱うものだけに、乾燥しているときには
山火事等に気をつけなければならない。

プロレスでは、トップロープからの攻撃というのは
最高の見せ場である。
もちろん、クマと遭遇する山には
コーナーポストもトップロープも無いのだが、
その代わりに無数の木が生えている。
クマは意外に木登りが上手く、木の上に登って
実を毟って食べることも多い。
そうした場合に、折れた枝などが座布団状に固まることがある。
これが熊棚である。
山の中で山菜やクリなどを求めて歩き回る際、
どうしても水平方向や下方向に注意が行きがちになり、
頭上にクマがいるということは、思いもつかないことがほとんどだ。
だから全く気がつかないうちに、
クマの真下にいたなんてこともありうるわけだ。
そういう場合、クマに襲われる可能性も高くなる。
もちろん、プロレスの様にトップロープから
飛びかかって来ることは無い。
スルスルと木から下りてきて、攻撃を仕掛けて来るのである。
クマが木の上に登るときは、大概、木の実が不作のときなので、
自然とクマの攻撃性も高くなっており、かなり危険である。
攻撃に成功しヒトが倒れると、再びクマは木に上り、これをじっと見る。
そしてヒトが動き出すと、再び下りてきて、これを攻撃する。
こういう場合のクマは、かなりねちっこい攻撃を仕掛けて来るので、
重傷になってしまうことが多い。

逆に人間が、木の上に登った場合はどうか?
もちろん、これはクマから逃れるために木に登るわけで、
そこからクマに攻撃を仕掛けるわけではない。
こういう場合、クマもこれを追いかけて、木に登って来ることがある。
1つ事例を挙げてみよう。
「キノコ狩りの男性がクマに遭遇。
 木に登ると、クマも登り、ナタで頭を叩くと足を噛まれ、
 共に転落して足を骨折」
プロレスでは、先にトップロープに登った相手に対し、
倒れていた選手が猛然と立ち上がり、これを追ってポストに登り、
これを攻撃することがある。
この場合、下から攻撃する方が足場が安定していることもあり、
圧倒的に有利なのだが、似たようなことがクマ相手でも起こる。
事例の場合では、ナタを使って反撃しているが、
足場も不安定な樹上においては、充分な威力を発揮させることは難しい。
そうなると、人間よりも木に登り慣れているクマの方が
有利ということになってしまう。
また、クマが木に登って来ない場合でも、
木の下にジッと留まり続けるということがある。
こういう場合のクマは根気づよく、1時間〜数時間も
同じ場所に留まり続けることもあり、
この場合、人間は慣れない樹上で忍耐強く、
クマが去るのを待つしか無い。
いずれにしても、木の上に逃げるというのは、
あまり良い方法とは考えられない。

ただ、クマと対峙する場合、間に木を挟んで対峙すると
いい感じの盾になってくれる。
根元付近から幹が別れて、木の向こう側の状況が見える場合、
より、正確にクマの動きを察知して、こちらも動くことが出来る。
クマが右へ動けば、こちらは左へ、
クマが左へ動けば、こちらは右へ。
常に、間に木を挟むようにしてクマと向かい合えば、
とりあえず、相手の攻撃はこちらには届かない。
そうして時間を稼げば、他の人間に気付いてもらえる可能性もあり、
助けを呼んでもらえる可能性もある。
対峙しながら声を張り上げて、クマを威嚇してもいいし、
誰かに助けを求めてもいい。
少なくとも、逃げ場の無くなる木登りよりはマシかも知れない。
プロレスにおいても、積極的に組みにいかず、
距離をおいて相手を焦らしたり、自分に有利な状況を作り出すのも
1つの戦術である。
その辺は、出来るだけクレバーに立ち回りたいものだ。

次回も今回に続き、クマとヒトとの対決(?)について書いていく。

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