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昆布茶

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世の中には、「茶」ではない「茶」がある。

もともと「茶」とは、
チャノキ(茶の木)の葉や茎を加工して作られる。
緑茶、ウーロン茶、紅茶などは、
すべて同じチャノキの葉を加工したものであり、
これらの違いは、葉をどれくらい
発酵させているかという違いでしかない。
先に挙げた3つの茶を、発酵度別に分類すれば、

・緑茶……無発酵茶
・ウーロン茶……半発酵茶
・紅茶……発酵茶

ということになる。

こういった、チャノキから原材料を得た「茶」の他に、
全く、チャノキに関係していない
「茶」というものも存在している。
これを一般的に、「茶」以外で作られた「茶」、
「茶外茶」と呼んでいる。
我々の身の回りで、もっともなじみ深い「茶外茶」といえば、
やはり夏に飲む「麦茶」だろう。
これは焙煎した大麦の種子を、
煎じて(煮詰めて、成分を析出させる)作られる。
平安時代にはすでに飲まれており、
これは鎌倉時代に「茶」が持ち込まれるよりも
前の出来事である。
「麦茶」は、長く「麦湯(むぎゆ)」と呼ばれており、
「麦茶」という、「茶」を冠した名前が付けられたのは、
そう古いことではない。

この「茶外茶」には、かなりの種類があり、
その例を挙げてみると、

炒った大麦を煮出した「麦茶」
黒大豆(黒豆)を原料とした「黒豆茶」
蕎麦の実を焙煎し、これを煮出した「蕎麦茶」
柿の葉を使った「柿の葉茶」

などがある。
そういった「茶外茶」のひとつに「昆布茶」がある。

「昆布茶」は、植物・穀物から作られた
他の「茶外茶」と違い、
海草から作られた、唯一の「茶外茶」である。
製法としては、乾燥した昆布を細かく刻んだり、
粉末状に加工するだけである。
これに湯を注ぐことによって、「昆布茶」は完成する。
ここで、多くの人はこう思うのではないだろうか?
あれ?それって「茶」というよりは、「出汁」なのでは?

事実、市販されている「昆布茶」の多くは、
食塩や砂糖、旨味調味料が添加されており、
実際に飲んでみると、
塩味をつけた「昆布出汁」を飲んでいる気になる。
市販の「昆布茶」のパッケージを見てみると、
普通に飲料としての使用方法の他に、
料理への味付けにどうぞ、という文言も印刷されている。
その使用例として挙げられているのは、
お漬け物、お吸い物、お粥、卵焼き、お茶漬け、鍋物、
野菜炒めと、多岐に渡っている。
むしろ普通に飲料として使ってもらうよりも、
「調味料」として使って欲しそうにも感じられる。
そういうメーカーの意図を見てみれば、
むしろこれは「昆布茶」というよりは、
「昆布スープ」といった方が良いのかもしれない。

「昆布茶」がいつごろから飲まれていたのかについては、
はっきりとした記録が残っていない。
ただ、刻み昆布に湯を注ぎ、
これを飲むことは、江戸時代にはすでに行なわれていた。
飲み終わった後、出がらしとなった昆布を食べる。
恐らく、湯につけることによって昆布が柔らかくなり、
食べやすくなったのだろう。

これがどこで始められたのかについては、
全く記録が残っていない。
ただ、江戸を中心とした関東の水は、
昆布の旨味成分を煮出すには不向きな硬水であり、
刻んだ昆布に湯を注いだ所で、
ちゃんと旨味成分が出てきたとは思えない。
そうなると、関東以外のどこか、
ということになるのだろうが、
これでは候補地になる範囲が広すぎる。
恐らくは、昆布が盛んに使われていた北陸か、
関西辺りではないかと考えられるが、
はっきりとした証拠はない。

「昆布茶」が、粉末状の商品として販売されたのは、
大正7年(1918年)のことである。
静岡県に生まれた藤田馬三は、
茶舗を経営していたが、
競争の激しいお茶業界で生き残ることは厳しいと考え、
「昆布茶」を商品化することを思いついた。
このころの昆布茶は、
細切りした昆布に湯を注ぐだけのものだったで、
これをもっと簡単に飲めるようにならないかと
考えたのだ。
薬種問屋に勤めた経験があった彼は、
薬研(やげん)をつかって
昆布を粉末にする方法を思いつき、
さらにこの昆布粉末に塩や砂糖などの調味料を配合、
初めての粉末昆布茶を完成させた。

彼の作り上げた「粉末昆布茶」は、
その高い品質が大いに評価され、大人気となった。
昭和5年、会社は「玉露園」と名前を変え、
昆布茶のパイオニアとして、
現在も昆布茶界のシェア1位を誇っている。

さて、多分誰も気づいていないと思うが、
このブログで記事を書いている人間、
早い話が自分なのだが、
そのハンドルネームが「こぶちゃ」になっている。
当然、「こぶちゃ」=「昆布茶」となり、
ひょっとして、何か思い入れでも……と、
思われてしまいそうなのだが、
実は「こぶちゃ」と「昆布茶」は全く関係がない。

甥っ子が生まれた際、
「おじちゃん」と呼ばれなくなかった自分が、
自分の名前に「ちゃん」づけして、
覚えさせようとしたのだが、
どういうわけか、その際に微妙な齟齬が生まれ、
気がつけば「こぶちゃ」と呼ばれてしまっていた。
以降、甥っ子はずっと自分のことを
「こぶちゃ」と呼んでいる。
「こぶちゃ」というハンドルネームは、
これをそのまま転用しただけで、
別段、「昆布茶」に特別な思い入れがあるわけではない。

気にする人はいないと思うが、
一応、念のために釈明しておく。

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