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食べ物

モナカ

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香ばしさというのは、甘さに対しての最高のアクセントだ。

チョコレートにピーナッツやアーモンド。

アイスクリームにウエハース。

日本のものでいえば、きな粉も大豆を炒って粉にしたものなので、

あれも香ばしさと甘さのナイスマッチが、味わいの基本になっている。

今回のテーマであるモナカも、この香ばしさと甘さの対比が味のキモだ。

モナカにとって重要なのは皮である。

そういうと、眉をひそめる人がいるだろう。

普通のモナカは、中に小豆餡が入っていてこそだし、

アイスモナカも、中にアイスが入っていないと、全くお話にならない。

しかし冷静に考えてみよう。

モナカがモナカであるためには、何よりも皮の存在が必要なのだ。

小豆餡がそのままあったら、それはただの小豆餡だし、

アイスクリームがそのままあったら、それはただのアイスクリームだ。

両方とも、皮の中に潜り込むことで、モナカ、アイスモナカとなる。

つまりモナカにとって皮というのは、本体なのだ。

それだけ重要なモナカの皮だが、それが一体何でできているかと聞かれて、

パッと答えられる人が、どれくらいいるだろうか?

サクサクとしたモロくうすい物質で、煎餅のようで、ウエハースのようで、

麩のようでもある。

小麦粉でできているようにも思えるし、米粉でできているのかもしれない。

あれは一体何でできているのか?

実は、あれは餅米が原料だ。

餅米を粉にして、水を加えて蒸す。

そうすると餅のような、団子のようなものができる。

現在、スーパーなどで売っている、袋入りの切り餅などは、

これと似た製法で作られているものが多い。

原材料表示を見て、その中に餅米がなく、餅米粉と書かれているものは

このやり方で、作られていると思っていいようだ。

それに対し、原材料の欄に、しっかりと「餅米」とある場合は、

きちんと餅米を蒸し、杵でついている餅であることが多い。

値段も、こちらの方がずいぶんと高価だ。

話がそれたが、この餅とも団子ともいえるものを、薄く伸ばし、

形を切り揃えて焼いたものが、モナカの皮である。

この薄く伸ばしたものを、型にはめて焼くと、わりと思い通りの形に焼ける。

モナカの皮が立体的なのは、型にはめて焼いているからだ。

こうして焼き上がったものが、モナカ(本体)である。

実は、原初のモナカはこのままの菓子であった。

つまり小豆餡などを、内包していなかったのだ。

ではどうやって食べていたかというと、そのまま砂糖をかけて食べていた。

このころのモナカは干菓子の一種と捉えられていた。

初めて作られたのは、江戸時代の後期といわれている。

やがてこのモナカに、小豆餡を挟むことを思いつく。

だからこのころのモナカは、それこそ薄焼き煎餅そのままの形態なので

むしろ小豆餡を挟んだ、一種のビスケットサンドに近いものだったに違いない。

この後、餡を挟む方法が試行錯誤され、やがて明治時代に至り、

現在のような、立体的に成形されているモナカが出来上がった。

皮の部分は、もともとひとつの菓子であったことから、

「皮種」と呼ばれるようになった。

やがて、皮種で小豆餡を包む形のモナカが、一般的になっていくのである。

現在、モナカの中には、いろいろなものが入れられている。

小豆餡はもちろんとして、栗、求肥、餅などの和菓子材料をはじめ、

アイスクリームやチョコレートなども入れられている。

モナカの中に入れられる餡は、モナカがふやけるのを防ぐために

水分量を減らして作られている。

その減らした水分を補うような形で、砂糖の分量が増やされていて、

照りや粘りが強くなっている。

さらに「懐中汁粉」にもモナカは使われている。

これはモナカの中に、乾燥させた粉末の小豆餡が詰められており、

お椀などの容器の中にこの「懐中汁粉」をいれ、湯を注げば汁粉が出来上がる。

昔からある、インスタント汁粉だ。

このとき、モナカ部分は湯を吸ってモッチリとした状態になり、

餅や団子のかわりとなる。

さらに一部では、金魚すくいの際の「ポイ」にも使われている。

なるほど、水を吸えばもろくなるので、充分にスリルを楽しめる。

さて、以上のように様々な方面で利用されているモナカだが、

そもそも「モナカ」という名前はどこから付けられたものなのか?

「モナカ」を漢字で書くと「最中」となる。

拾遺和歌集(1006年)に、源順の和歌で、

「池の面に 照る月なみを 数ふれば 今宵ぞ秋の もなかなりける」

というものがある。

これを知っていた公家たちが、宮中の月見の宴において、

白くて丸い餅菓子が出たのを見て、「もなかの月」という言葉が出たという。

これはそのまま、その餅菓子の名前となったのだが、

江戸時代、「モナカ」が作られた際、形状が円形であったために

この「もなかの月」という名前が、そのまま使われた。

そう、「モナカ」はもともと「もなかの月」という名前だったのだ。

しかし後に、円形でない「モナカ」が作られると、「月」の部分がカットされ、

ただ「もなか」と呼ばれるようになった。

モナカは、何といっても手触りがいい。

さらりと乾いていて滑らかで、それでいて暖かい感触がある。

アイスモナカなど、中にアイスクリームが入っているにも関わらず、

それをほとんど感じさせずに、手に取ることができる。

これにかぶりつくと、ペリッという軽い音とともに割れて、

あっという間に粉々になる。

驚くべき潔さだ。

しかし潔いのはここまでだ。

口の中の水分を吸収したモナカは、もともとの吸着力を思い出したように

口の中に張り付く。

中に入っていたアンコを咀嚼しているうちに、

やがて張り付いていたモナカも一緒になって、おなかの中に落ちていく。

そこでお茶を一服。

なんとも幸せな、モナカタイムだ。

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