雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

食べ物

トウモロコシ

投稿日:

「コメ」について書いたとき、世界3大穀物という言葉が出てきた。

「コメ」のほか、「小麦」と「トウモロコシ」である。

この3つの中で、「コメ」と「小麦」は同じくらいの生産量であると書いた。

では、「トウモロコシ」は?

実は「トウモロコシ」は世界3大穀物の中で、もっとも生産量が多い。

それほど、「トウモロコシ」を食べている人が多いのか?

実は「トウモロコシ」は家畜の飼料用に64%、工業用に32%、

直接食用に用いられているのは、わずか4%にすぎない。

今回はこの「トウモロコシ」について書いていく。

「トウモロコシ」は「コメ」や「小麦」と同じく、イネ科の一年草だ。

原産地ははっきりと特定されていないが、

恐らくは中南米であろうといわれている。

紀元前5000年ごろには、すでに大規模栽培されており、

南北アメリカ大陸の主要農産物となっていた。

マヤ文明やアステカ文明は、「トウモロコシ」の大量栽培を行なっており、

両文明の根幹をなしていた。

ちょうど「コメ」が日本の歴史の根幹を担っていたことと、通じるものがある。

これがアメリカ大陸から持ち出されるのは、1492年。

コロンブスがアメリカ大陸を発見した時に、

現地人が栽培していた「トウモロコシ」を、ヨーロッパに持ち帰った。

これが「トウモロコシ」が世界に広がっていく、きっかけとなった。

「トウモロコシ」が日本に入ってきたのは、1579年のことである。

ポルトガル人達によって、長崎にもたらされた。

初めてトウモロコシを見た日本人は、これを「黍(きび)」と見た。

「黍」に「唐」を冠して「唐黍(とうきび)」とした。

また「唐」は「もろこし」とも読むことができるので、

「唐黍(もろこしきび)」とも呼ばれた。

……勘のいい人なら、ピンと来たと思う。

この2つの読み方「とうきび」と「もろこしきび」がひとつになり、

「トウモロコシ」という名前が生まれたのだ。

……頭のいい人なら、ここでアレ?と思うはずだ。

そう、「トウモロコシ」を漢字で書くと「唐唐」になってしまう。

「黍」の部分が、無くなってしまった。

これは認識の間違いによって生まれた、一種の重言だ。

「唐」が重なってしまっている。

しかしこの「トウモロコシ」という言葉は、そのまま世間に受け入れられ、

この誤用については誰も突っ込まないまま、使われていくことになる。

現在では「トウモロコシ」に「玉蜀黍」の漢字を使っているが、

当然これは一種の当て字である。

本来の字を書くと「唐唐」になってしまい、アタマのおかしい人だと思われる。

では、当時の「トウモロコシ」はどのように食されていたのだろう。

調べた限りでは、焼いて食べるのが一般的だったようだ。

これは現在ある「焼トウモロコシ」そのままだ。。

屋台で販売されていたというから、ますます現在と変わらない。

「こなもん」について書いた時に述べたが、「たこ焼き」「お好み焼き」

「鯛焼き」などの、現在の定番屋台は、江戸時代にはなかったが、

「焼トウモロコシ」は江戸時代から屋台で売っていたのだ。

そういう意味では、「焼トウモロコシ」は屋台の中では、歴史ある古株なのだ。

さらに江戸時代の百科事典ともいえる「和漢三才図絵」には、

信じられない食べ方が書かれている。

それによれば、

「むしり取りて焙り喰う。

 箸の先を水に濡らし、焙烙にてかきまわせば、粒々膨れ砕けて

 梅花様の如く、味もろく美なり」

「トウモロコシ」を焙烙で炒めている。

その結果、粒は膨れてはじけ、梅の花のようになる。

味はもろくて、美味しい。

……これはポップコーンではないか?

もちろん現代のものと、全く同じではないかもしれないが、

似たものであることは間違いがない。

つまり江戸時代の人は、ポップコーンに近いものを食べていたことになる。

しかしポップコーンというのは、爆裂種という、

それ専用の「トウモロコシ」でないと作れないものではないのか?

まさか江戸時代に、爆裂種の「トウモロコシ」もあったのだろうか?

調べてみると、日本に入ってきた「トウモロコシ」は、

フリントコーンと呼ばれる「硬粒種」であった。

ポップコーンを作るのに必要なのは、まず皮が硬いことだ。

この種はどうもその名前から、その条件を満たしていたのかもしれない。

味の方は、概ね好評であったようだ。

特にその甘みが女性に受けていた。

ただ消化が良くなく、胃腸を壊している人間は、医者に「トウモロコシ」を

制限されることがあったらしい。

現在では、そのほとんどを飼料や、工業用に使われている「トウモロコシ」。

特に近年、「トウモロコシ」がバイオエタノール燃料の原料になり、

その価格が高騰したこともあった。

さらに飼料として使われているということは、

「トウモロコシ」が肉や卵、牛乳の原料になっている、ということもできる。

そう考えた場合、「トウモロコシ」は我々の生活を、広く支えていることになる。

現在、「トウモロコシ」は我々の食生活のあらゆる所に、関与してきている。

まったく「トウモロコシ」の関係なさそうな食品であっても、

裏の原材料表示を見てみると、「コーンスターチ」と書いてあったりする。

肉や卵、牛乳が「トウモロコシ」を食べた動物によって、

生み出されていることを考えると、まさになくてはならない存在だ。

普通に家庭の食材として食べる場合、「トウモロコシ」は季節の食材だ。

夏、茹でた「トウモロコシ」にバターをつけてかじりつく。

あるいは、醤油を塗りながら焼いた「トウモロコシ」にかじりつく。

バラバラになったコーンもよいが、それでもやはり「トウモロコシ」らしさは

芯にくっついたままの状態で、かじりつくことにある。

ガリガリと歯で、芯にこびりついている粒をこそげとる。

「トウモロコシ」のカスが、歯の隙間に挟まり、それを指でほじくりつつ

あらためて「トウモロコシ」にかぶりつく。

なんとも幸せなひとときだ。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.