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メンチカツ

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スーパーなどの総菜売り場では、
各種揚げ物が巨大なトレーに並べられ、
販売されている。

各種コロッケ、各種天ぷら、フライドチキン、
とんかつ、魚フライ、アジフライ。

居並ぶ揚げ物を前にトングを構えると、
心が高揚してくる。
そして食べたい揚げ物を掴み、
パックや袋にポイポイと放り込んでいく。
とりあえず、これとこれ。
それから、これもうまそうだ。
おおっと、こんなものもあるのか。
そんなことを考えながら、トングを動かしていると、
いつの間にやらパックの中には、
フタが閉まらないほどに揚げ物が入っている。
無理矢理パックのフタを閉め、輪ゴムをかける。
念のため、ビニール袋の中にパックを入れて、
これをレジへと持って行く。
家に帰って、パックをあけ
皿の上に買ってきた物を並べてみると、
いくつか判別不能な物がある。
各種コロッケと「メンチカツ」である。

メンチカツは、牛肉や豚肉の挽肉に、
タマネギのみじん切りなどを混ぜて成型し、
小麦粉・溶き卵・パン粉をつけて揚げたものである。
最近ではボール状の物も見かけるようになったが、
基本的には、コロッケと同じ小判型である。
従って、晩ご飯のおかずに
コロッケとメンチカツを買って帰った場合、
どれがコロッケで、どれがメンチカツだったか
わからなくなってしまうことがある。
1人暮らしの場合は、とりあえずかぶりつけばいいが、
家族1人につき、コロッケ1個、メンチカツ1個、
などいう買い方をしていると、
それぞれの皿に取り分ける際に、一悶着起こることになる。

メンチカツの誕生には、2つの説がある。
ひとつは明治時代、東京浅草の洋食店で、
「ミンスミートカツレツ」として
販売されたのが最初であるという説。
もうひとつは昭和初期、神戸の精肉店が、
東京の洋食店の「メンチボール」を元にして、
作り出したというものである。
かたや明治時代、かたや昭和初期である。
随分と間がひらいている。

「ミンスミートカツレツ」というのは、
「ミンス(ミンチ・切り刻むの意味)・ミート(肉)」
のカツレツとなるので、「挽肉カツ」ということになる。
これがどういうわけか、
「ミンス」→「メンチ」と変化した。
本来ならこれは「ミンチカツ」「ミンスカツ」と、
呼ばれていてもおかしくない。
と、いうよりは、そう呼ばれる方が自然だろう。
事実、関西では「メンチカツ」を
「ミンチカツ」と呼んでいる人もいる。
スーパーや肉屋での表示が、「ミンチカツ」の場合もある。
「ミンチカツ」と呼んでいる人に言わせれば、
「メンチカツ」というのは、訛っているのだそうだ。

「メンチボール」というのは、上記の例でいえば、
「ミンスボール」「ミンチボール」が変じたものだろう。
挽肉をボールにしているのだから、
これは「ミートボール」だろう。
なるほど、神戸の精肉店が
東京で見た「ミートボール」にヒントを得て、
「メンチカツ」を作ったんだな、と思ってしまう。
しかし、冷静に考えてみれば、疑問が残る。
なぜ、昭和初期に、東京で「ミートボール」なのか?
考えてみれば、中華料理の中にも「肉団子」がある。
神戸には中華街があるので、
そこで「肉団子」を目にする機会もあるはずだ。
それなのに、どうして東京の「メンチボール」だったのか?
あるいは「メンチボール」とは、
「ミートボール」ではなかったのだろうか?
試しに「メンチボール」で検索をかけてみると、
ある東京のレストランの「メンチボール」が出てきた。
厚みのある楕円形の物体で、フライというよりは
カツレツという仕上がりである。
ひょっとしたら、「ミンスミートカツレツ」というのは、
こんな感じだったのかもしれない。
たが、この「メンチボール」が、
かつての「メンチボール」と
同じものなのかが、わからない。

時系列でいうと、こうなるのではないか。
まず「ミンスミートカツレツ」が作られ、
そこから「メンチカツ」と「メンチボール」が作られる。
「メンチボール」は「ミンスミートカツレツ」の
「カツレツ」らしさを強く残す、いわば後継者として、
「メンチカツ」は、「とんかつ」などと同じように、
大量の油で揚げる、フライとしての性格を加味された。

さらにこの「メンチボール」をヒントにして
関西で「ミンチカツ」が作られる。
この時、「ミンスミートカツレツ」から「メンチカツ」が
生まれたのと同じ流れを、繰り返した。
「メンチボール」をフライにすることによって、
「ミンチカツ」を作り出した。
「メンチ」が「ミンチ」となったのは、
「メンチ」では言葉が正しく意味をなしていないため、
新しくネーミングする際に、そこを正したのだろう。

これらのことからメンチカツは、
明治時代に東京(あるいは関東地方のどこか)で、
作り出されたものと見て、間違いなさそうだ。

最初に書いたように、
見た目はほぼ「コロッケ」と同じな「メンチカツ」だが、
「コロッケ」と違って、家庭で作られることは少ない。
メンチカツを作るには、ミンチ肉と
タマネギ等、野菜のみじん切りを混ぜて、
タネを作らなければならない。
このタネを小判型に成型し、小麦粉・卵・パン粉をつけて、
油で揚げれば、「メンチカツ」が出来上がる。
だが、このタネは、ハンバーグのタネとほぼ同じものだ。
わざわざタネを衣で包んで揚げなくても、
フライパンの上で焼けば、
ハンバーグが出来上がるのである。
そうなると、衣をつけて油で揚げる行程は
どうしても面倒に感じてしまう。
そこまで手間をかけなくても、
ただ焼くだけで、ちゃんとした料理になるのだ。
なら、わざわざ衣をつけたり揚げたりしなくても…、
となってしまう。

だが「メンチカツ」には、
ハンバーグにない優れた点がある。

まず、ひとつめはハンバーグの時ほど、
タネを練り込まなくてもよい、という点だ。
ハンバーグの場合、
このタネ(パテ)の練り込みが足りないと、
焼いている途中で割れてしまったりするが、
衣で包まれているメンチカツの場合、
ハンバーグほどタネを練り込む必要がない。
逆に練り込みすぎると、
メンチカツが固くなってしまうこともある。

ふたつめは衣で覆われているため、肉汁が逃げず、
ジューシィに仕上がるという点だ。
ハンバーグをフライパンで焼くと、
どうしても肉汁が外に流れ出てしまうが、
メンチカツにはそれがない。

確かに家庭でメンチカツを作るのは、
ハンバーグを作るよりも手間がかかる。
だが、手間をかけた分だけのリターンは
得られるということである。
挽肉からハンバーグを作ってみようと思いついた時、
もし時間に余裕があるのなら、
メンチカツにチェンジしてみてはどうだろう?

きっと出来合いのものとはひと味違う、
ジューシィメンチカツが出来るはずだ。
(保証はしません)

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