雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

歴史 雑感、考察

グリコ・森永事件

投稿日:

かつて、グリコといえば、
連想するものは「おまけ」であった。

例の両手を上げたランナーが印刷された箱に、
一緒に小さなおもちゃの入った小箱がついていて、
(ちなみに、現在でもついている)
それを子供達は「おまけ」と呼んでいたのだ。
すでに自分が子供のころには、
「グリコのおもちゃが欲しい!」
という風潮はすでに無くなっていたが、
それでも「グリコ=おまけ」というのは、
しっかりと刷り込まれていた。

このイメージが変わったのが、小学生のころだった。
そう、あの「グリコ・森永事件」が起こったのだ。

グリコの社長誘拐から始まった一連の事件は、
1年半ほど続いた。
江崎グリコを始めとする、各食品メーカーへの脅迫。
スーパーに並べられた、青酸ソーダ入りのお菓子。
そして公開された、キツネ目の男。

この事件が起こってからは、学校からも親からも、
お菓子の買い食いを控えるように、という注意をされた。
さすがの「怪人21面相」も、
龍野市の片田舎の駄菓子屋の菓子にまで、
青酸ソーダを入れるほど暇ではなかったかもしれないが、
あのころは、日本全国が「過敏」になっていたのだ。

事件は1984年3月に始まった。
江崎グリコの社長が、
何者かによって自宅から連れ去られ、
誘拐されるという事件が起こった。
そう、この「グリコ・森永事件」、
最初は誘拐事件だったのだ。
それにしても、不思議な誘拐事件であった。
普通、誘拐というと、誘拐しやすい子供を、
学校の登下校中など、1人になったときを狙って、
これを攫うのが定番である。
ところがこの事件では、社長宅に犯人グループが押し入り、
家族を縛り上げた後、入浴中の社長を誘拐している。
40代前半の成人男性を誘拐しているのだ。
家の中には、もっと体力のない女性や子供が
居たにも関わらずだ。
そのため、犯人グループは
社長に怨恨があるのではないかという見方もされた。
だが当時の自分は、社長が入浴中だったということから、
「社長はフルチンで連れて行かれたのだろうか?」
などということくらいしか、頭に浮かばなかった。

社長が連れ去られた翌日、犯人から連絡が入る。
身代金として、現金10億円と金塊100kgを用意しろ、
というものであった。
さすが、大会社の社長を誘拐しただけあって、
身代金の金額が桁違いである。
だが、現金10億円となれば重量は130kgにもなる。
それに金塊100kgを合わせるのだから、
総重量は230kgだ。
普通に考えれば、とても持って歩ける重さではない。
そのため、犯人グループが
本気で身代金を手に入れようとしているのか、
怪しむ声もあった。

事件から3日後、監禁場所から自力で脱出した
江崎グリコ社長が保護され、事件は終わったかに見えた。
しかしその後、「怪人21面相」を名乗る人物から、
グリコへと脅迫状が届けられる。
警察は今度こそと、
犯人逮捕を期して現金受け渡しに臨むが、
現場に現れた受け取り人は、犯人によって利用された
全くの一般人であった。
そして当時の自分は、
「やっぱり保護された社長はフルチンだったんだろうか?」
ぐらいのことしか考えていなかった。

その後、青酸ソーダ入りの菓子をばらまくという予告状が、
マスコミ各社に送られ、このころからスーパーなどでは
グリコ製品を撤去する所も出始める。

グリコに続くように、丸大食品、森永製菓と脅迫状が届く。
あれ?グリコの次が森永だったから、
「グリコ・森永事件」なんじゃないの?と思われるだろうが、
実は森永製菓に脅迫状が届くより以前に、
丸大食品に脅迫状が届いていた。
だが、脅迫されていることが明らかになったのが、
森永製菓の方が先であったため、
この事件の名前は「グリコ・森永事件」になった。
もし、丸大食品への脅迫が先に明らかになっていれば、
この事件は「グリコ・丸大事件」と
呼ばれていたかもしれない。

この3社への脅迫がなされた後、
実際に青酸ソーダ入りの菓子が、スーパーなどで発見される。
この毒入り菓子には
「どくいり きけん たべたらしぬで」
という、怪人21面相からのメッセージが貼付けられていた。

その後、ハウス食品、不二家、駿河屋と脅迫状が届く。
ん?他の5つはともかく、駿河屋というのは
初めて聞く名前だな?と思う人は多いだろう。
駿河屋というのは、和歌山県に本店のある老舗の和菓子店だ。
練り羊羹発祥の店としても知られている。
ただ、他のメーカーたちと比べてみると、
この駿河屋だけは、少し異質な感じがする。

翌1985年8月、ハウス食品事件で不審車両を取り逃した
滋賀県警本部長が、退職日に焼身自殺する。
直接、怪人21面相が関与していたわけではないが、
この事件に関しては、ただ1人の死者であった。
その直後に、怪人21面相から事件の終息宣言が出る。
そしてこれ以降、犯人の動きは完全に無くなり、
2000年2月13日、全ての事件において時効が成立した。

こうして見ると、謎の多い事件である。
一体犯人は誰だったのか?
怪人21面相に脅迫されていたのは、
本当にこの6社だけだったのか?
結局、犯人は現金を手に入れることが出来たのか?

謎が多いだけに、様々な珍説、奇説が飛び交っている。
外国勢力の関与や、政治家の関与、
果ては食品会社と警察組織の自作自演説まで。
これらに関しては、書籍等もたくさん発行されており、
それぞれ鋭い分析を見せている。
……もっとも、それが正しいかどうかは、
証明の仕様もないのだが。

いつもなら、ここら辺でデータをもとに、
勝手な推論を組み立てていくのだが、今回は止めておく。
手元にある材料だけでは、推論の組み立てようもなく、
出来たとしても、犯人像の勝手な想像に過ぎない。
そういうものは巷にあふれているし、
それらと一線を画したものが出来るかといえば、
それもちょっと無理だろう。

ちなみに子供のころは、
一丁前に友達と犯人を推理していた。

「きっと犯人は、ロッテに違いない」
「いやいや、犯人はカルビーだろう」
「そういうことをいったら、ブルボンも怪しいぞ」
「カバヤという線は、考えられないか」

……ここに名前を出された菓子メーカーには悪いが、
小学生の考えることなど、所詮、この程度のものである。
笑って聞き流してほしい。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-歴史, 雑感、考察

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.