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稲荷寿司

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あつらえたような、という表現がある。

わざわざそのために注文した、という意味だ。

油揚げがそうである。

まるで稲荷寿司を作るために生まれてきたような、袋状になっている。

……餅巾着はどうなんだ?という意見は、この際スルーしていく。

油揚げが一番、その存在感を出せる料理というのは、

やはり稲荷寿司だろう。

……きつねうどんはどうなんだ?という意見は、この際スルーしていく。

今回は、ほんのり甘くておなかもふくれる、稲荷寿司について書いていく。

今更、書くようなことでもないが、稲荷寿司は甘辛く煮た油揚げの中に、

酢飯を詰め込んだ寿司の一種である。

寿司には珍しく、魚介類を全く使わないタイプだ。

全く、海の気配が感じられない。

このような寿司は、和歌山の「めはり寿司」くらいだろうか?

しかし、「めはり寿司」を調べてみると、

「高菜で包んだ、弁当用のおにぎり」

と書いてある。

……おにぎりではないか。

どこから「寿司」が出てきた?

もっとも、酢飯を包むこともあるようで、ちょっと厳しいかもしれないが

寿司と言えなくもないような気がする。

話がそれた。

油揚げの中に詰め込む酢飯は、何も混ぜ込んでいない場合もあるが、

多くの場合、何らかの加薬が混ぜ込んである。

よく混ぜられる加薬としては、胡麻、紅ショウガなどで、

椎茸やニンジン、タケノコなどを混ぜ込んだ酢飯が、詰められていることもある。

基本的に高級な寿司屋には登場しないが、

回転寿し等の庶民的な寿司屋では、頻繁に登場する。

さらにお持ち帰りの寿司店でも、メニューの定番となっている。

そば屋や食堂などのサイドメニューにも、ならんでいる。

スーパーなどの弁当売り場の隅にも、コンビニの弁当売り場にもならんでいる。

……早い話、高級な寿司屋以外だと、どこにでも置いてある。

では稲荷寿司は、いつごろから食べられていたのか?

実は稲荷寿司が初めて作られたのは、それほど古いことではない。

19世紀のはじめ、稲荷にお供えしてあった油揚げに、ご飯を詰めたのが

稲荷寿司の始まりといわれる。

場所は、愛知県豊川市。

豊川稲荷の門前町として、賑わった町だ。

話の流れからすると、豊川稲荷にお供えしてあった油揚げに、

ご飯を詰めたように聞こえるが、さすがにどういう状況で、

お供え物の中にご飯を詰める、という事態になるのか、想像がつかない。

実際は、豊川稲荷のような大きな寺社ではなく、もっと小さな稲荷社で

お供えのお下がりを使って、調理したのではないだろうか?

稲荷寿司について書かれた最古の文献は、「守貞謾稿」だ。

これは江戸末期に出版された、一種の百科事典で、

江戸時代の風俗、事物について書かれている。

この「守貞謾稿」の中に稲荷寿司についての、記述がある。

書き出してみると、

「天保末年(1844年)、江戸にて油揚げ豆腐の一方を裂きて袋形にし、

 木茸・干瓢を刻み交えたる飯を納めて、鮨として売り巡る。

 (中略)名付けて稲荷鮨、或は篠田鮨といい、ともに狐に因ある名にて

 野干(狐の異称)は油揚げを好むもの故に、名とす。

 最も賤価鮨なり。尾の名古屋等、従来これあり。江戸も天保前より

 店売りにはこれあるか」

これによると、江戸末期に江戸で稲荷寿司が売られていたこと、

さらに別名、篠田寿司とも呼ばれていたこと、

もっとも安い寿司であったこと、

尾張名古屋では、従来よりこれ(稲荷寿司)があったこと、

江戸でも、店売りでは天保年間以前より、売られていたこと、

などがわかる。

これによると、尾張名古屋近辺では、江戸より先に、

稲荷寿司が売られていたようだ。

これが果たして、豊川のことだったのかどうかは明らかではないが、

どうも稲荷寿司の発祥は、その近辺のようだ。

さらに「最も賤価鮨」とあることから、

どうも最初から安物というイメージはあったようだ。

最近では、稲荷寿司をひっくり返し、

つまりご飯を詰め込んでいる方を、上にして並べている店や、

写真をよく見る。

なるほど、このやり方だと、食べる方も中身がわかるし、

形が軍艦巻きに似ているので、同じように上にネタを乗せることもできる。

なかなかうまいことを考えたものである。

ひょっとすると、この先、このひっくりかえった形が、

主流になっていくのかもしれない。 

前回、歳をとって巻寿司が好きになったと書いた。

稲荷寿司も同様である。

この巻寿司と稲荷寿司が、セットで入っているのが助六寿司だ。

これは現在でも、スーパーの弁当売り場などで見かける。

なぜ、「助六」なのか?

実はこういう語源がある。

歌舞伎「助六由縁江戸桜」の主人公、助六には愛人がいる。

総角(あげまき)である。

揚巻とも書く。

つまり、油(揚)げと(巻)寿司である。

わかってみれば、つまらないシャレだった。

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