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マシュマロ?マシューマロウ?

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よく、ものの感触を表す、
「まるでマシュマロのような~」という表現を目にする。
柔らかくて、ふわふわしている、もののたとえだ。

マシュマロというのは、ミョーなお菓子である。
大方は真っ白か、薄いピンク色をしていて、
手に取ってみると、どことなく粉っぽく、
ふわふわとしているのだが、それなりに弾力もある。
口に入れてみても、とろけるでなく、弾けるでなく、
割れるでもなく、噛むごとにバラバラになっていく。
子供のころは、これをオヤツに出されても
特に嬉しいこともなく、ただ口の中に放り込み、
クニクニと口の中で咀嚼し、飲み込むだけのお菓子だった。

食べごたえ、というか満腹感というものはまるでなく、
食べ盛りの子供のオヤツとしては、
どうしても物足りなさを感じてしまう。
味もほんのりとした柔らかな甘さで、
香りも淡く、刺激には乏しかった。
自分たちが子供のころ、弾けるキャンディという、
刺激を売り物にしたお菓子があったが、
それとは、全く逆ベクトルのお菓子であった。

そういうわけで、自分としてはあまり
嬉しくないお菓子だったのだが、
それほどの頻度でないにはせよ、
定期的にうちのオヤツには
このマシュマロが供されていた。
ひょっとしたら自分が気づかないだけで、
マシュマロ好きが兄弟の中にいたのかもしれない。
とても男児向きのお菓子とは思えないので、
ひょっとしたら妹かもしれない。
ほんのりと甘くて、フワフワとした食感のマシュマロは、
確かに女児向けのお菓子である。

「マシュマロ」というのは、
なんともおかしな名前であるが、
言葉としてはソフトなイメージがある。
このマシュマロというのは、
マーシュ・マーロウという、
ウスベニタチアオイという植物の英語名からきている。
なぜ、植物の名前が付けられたのか?
理由はシンプルで、元々マシュマロは、
このウスベニタチアオイの根から、
作られていたからである。
「根」といっても、そのものではなく、
「根」をすりつぶし、そこから取れるデンプンを使った。
日本でも葛の根からは「葛粉」がとれるし、
わらびの根からは「わらび粉」がとれる。
これらを使って作る「葛餅」や「わらび餅」は、
ある意味で、マシュマロと似たようなお菓子であると言える。

マシュマロの歴史を遡っていくと、
古代エジプトへとたどり着く。
ただ、元のマシュマロは、現在のもののように
お菓子として食べられていたのではなく、
一種の薬品として服用されていた。
ウスベニタチアオイの花は、
現在でもハーブティーなどに利用され、
喉の痛みに効くとされている。
その「根」から作られるマシュマロも、
喉の薬として使われており、
形状も現在のようなソフトな個体ではなく、
濃いハチミツ状のものだった。
かなり貴重なものだったらしく、
神への供え物に使われるか、王室御用達として、
王侯貴族が服用するのみだったという。

これがお菓子へと変貌したのは、
19世紀のフランスやドイツにおいてであった。
このハチミツ状の物体を、食べやすい一口サイズの
型に流し込み、成形することを思いついた。
このころはまだ、ウスベニタチアオイの
「根」を使っていたが、19世紀の後半には、
ゼラチンや卵白を使うようになった。
原材料的な意味では、この時点ですでに
「マシュマロ」ではなくなってしまったのだが、
「マシュマロ」の名前だけは、相変わらず使われ続けた。
この点でも、先に書いた「葛餅」や「わらび餅」と、
同じことが起こっている。
やがて原料の中に、香料、砂糖、コーンスターチなどを
混ぜて作るようになり、
現在の「マシュマロ」が出来上がるのである。

日本で初めてマシュマロが製造・販売されたのは、
1892年(明治25年)、
京橋の風月堂においてである。
このときは「真珠麿(ましゅまろ)」と漢字が当てられた。
単純に音で漢字を選んだのか、
それとも真珠の白さに掛けた名前だったのかは、
明らかでない。
ただ漢字で「真珠麿」などと書くと、
マシュマロという名前から感じられる柔らかさが、
全て吹っ飛んでしまう。
やはりマシュマロはマシュマロでなくては、いけないようだ。

日本人の感覚からすれば、
マシュマロというのは、袋をあけた後、
そのままつまんで口の中に入れるだけの食べ物だが、
アメリカなどではこれを焼いて食べる。
え?マシュマロを焼く?と驚かれそうだが、
確かにアメリカでは、マシュマロを焼いて食べる。
その焼き方もワイルドそのもので、
キャンプファイアーなどをした際、
そこら辺の木の枝の先にマシュマロを突き刺し、
そのまま直火で焼くのである。
もちろん、ゼラチンで出来ている以上、
下手に焼けば、溶けたり、焦げたりする。
そうならないように、さっと焼くのがポイントらしい。
面白いことに、アメリカでは女子供のみならず、
マッチョな大男まで、
木の枝の先にマシュマロを突き刺して、真剣に焼く。
そしてそれをウマそうに食べるのである。
なんとも不思議な光景だ。
また、同じアメリカでは、ココアなどを飲む際にも、
カップの中にマシュマロを浮かべ、
これが半分とけ出した頃合いで、一緒に飲む。

キャンプファイアーで焼くのも、ココアに入れるのも、
それほど手間のかかるものではない。
機会があれば、一度くらいは試してみるのもいい。

マシュマロの新しい世界がひらけるかもしれない。

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