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妖精「ブラウニー」とは関係がない。

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知り合いの紹介で、
教会のイベントに参加するようになった。

イベントといっても、それほど宗教色の強いものではなく、
知り合いが集まって、ワイワイと飲み食いするだけである。
この飲み食い、というのが、
立食パーティー方式で行なわれる。
教会の一室にテーブルをいくつか設置し、
その上に、皆が持ち寄った様々な料理を並べる。
いうなれば、アメリカのホームドラマなどでよくみられる、
ホームパーティの拡大版である。

面白いのは、日本の片田舎の教会で行なわれるため、
持ち寄られる料理が、和食と中華に偏っている所だ。
そうなると、途端に雰囲気が、
アメリカンホームパーティーから、
ジャパニーズ食い放題へと変貌する。
ターキーやフライドチキンに変わり、
巻き寿司や赤飯、唐揚げや酢豚で、
キリストの誕生を祝ったりすることになる。
雰囲気的には、かなり珍妙なものになるのだが、
そんなことは誰も気にしない。
まことにおおらかなパーティーである。

これには毎回、それこそ食べ切れないほどの料理が
持ち込まれるのだが、
その中には、かなりの種類、かなりの量のお菓子も含まれる。
各種ケーキ類に始まり、胡麻団子、饅頭、桜餅と、
こちらの方も、全く国境を感じさせない。

そしてこのお菓子の中に、毎回誰が持ち込むのか、
四角く切り出された、チョコレートケーキがある。
スポンジケーキのようにふわふわではなく、
ミッシリと中が詰まっており、
小さくとも食べごたえがある。
日本ではまだ一般的でない、「ブラウニー」である。

「ブラウニー」といえば、
スコットランドに伝わる妖精の名前でもある。
家事の好きな妖精で、家族が寝静まったころ、
皿洗いや掃除をしてくれるという。
ああ、妖精さんの名前がついているとは、
なんてメルヘンチックな……と、感動している人には悪いが、
この「ブラウニー」は、妖精「ブラウニー」とは
全く関係がない。
では、どういう経緯で「ブラウニー」と名付けられたのか?
これが実にシンプルで、「茶色いから」だそうだ。
夢もメルヘンさもない話だ。

この「ブラウニー」が初めて作られたのは、
スコットランドから遠く離れた、アメリカ・シカゴでのことだ。
発祥には様々な説があるが、
もっともはっきりとしているのが、
1893年のシカゴ博覧会において、
ホテル・パーマーハウスのシェフが作ったというものである。
女性用に、従来のケーキよりも小さく、
気軽に取り出して食べることの出来るデザート、
ということで作られたらしい。
このブラウニーにはクルミが入っており、
現在でも、ホテル・パーマーハウスでは、
当時のままのブラウニーが販売されている。
1897年、シカゴのシアーズ社が発行した
ギフトカタログの中には、
「ブラウニー」の名前があった。

もうひとつ、「ブラウニー」という名前が、
一番最初に出てきたのは、
1896年のボストンの料理学校の教科書だった、
という説がある。
ただ、こちらの「ブラウニー」は、
現在のものとはかなり違っていて、
糖蜜のケーキを、小さな金型で焼いたものだったらしい。
現在のブラウニーのレシピが、一番最初に記されたのは、
1906年、やはりボストンの
料理学校の教科書だったようだ。

少なくとも、「ブラウニー」は、
19世紀末から20世紀初頭の、シカゴかボストン、
そのどちらかで生まれたと見て、間違いなさそうである。

ブラウニーの作り方は、比較的簡単だ。
まず、溶かしバターの中に、
ココアの粉を入れてよくかき混ぜる。
この中に、砂糖、卵、小麦粉、バニラエッセンス、
ナッツなどを入れ、型に油を塗り流し込む。
本場アメリカでは、オーブンの天板に油を塗り、
そこに流し込むらしい。
なんともアメリカっぽい、大雑把なやり方だ。
後はこれを175度に熱したオーブンの中で、
20~25分間、焼き上げる。
焼き上がったら、これを冷まし、
約4cm角に切り分ければ、完成である。
卵を泡立てたりするような、面倒な行程が全くない。
逆に言えば、卵を泡立てず、ベーキングパウダーなどの
膨張剤を全く使わないことで、
ずっしりとした食感を、生み出しているのだ。
ケーキなどを作る人にいわせれば、
失敗して全く膨らまなかった
ケーキそのものの食感である。
失敗作でいいワケだから、
簡単だというのも、もっともである。

この「ブラウニー」、
ずっしりと濃厚で、お腹にたまる味わいだ。
よく考えてみれば、バター、ココア、ナッツと、
脂肪分を豊富に含んでいる材料を
3つも使っていて、さらに砂糖まで入れているのだから、
濃厚で、お腹にたまるのは当たり前である。
高カロリーなものはうまい、というのを、
体現したようなお菓子なのだ。
これがホームパーティーのデザートとして、
天板に入ったまま切り分けられ、供されるのだから、
アメリカ人に肥満が多いのも納得である。

美味しいからといって、バクバクと食べれば、
ブクブクと太って泣きを見ることになる。
「ブラウニー」は、まさにそれを体現したお菓子だ。

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