雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

イベント 雑感、考察

最高裁判所裁判官国民審査

投稿日:

12月14日、今年は衆議院選挙が行なわれた。
自分も投票所に行ってきたのだが、
その際、衆議院選挙と同時にもうひとつ、
ある「イベント」が行われていた。

それが「最高裁判所裁判官国民審査」である。

厳めしい漢字が12文字も並んでいる。
普段、活字に慣れていない人は、
思わず目を背けたくなるかもしれない。
厳めしい漢字を見ると、
何か難しいことをしなければならないのでは?
と思ってしまいがちだが、
実際にやることは、
最高裁判所の裁判官への、ダメ出しである。
用紙に、今回審査にかけられる裁判官の名前が
列記されており、「コイツはダメだ」と思った
裁判官の欄に×印をつけるだけである。
今回、ここに列記されていたのは、5人であった。

国民審査にかけられる、などというと、
コイツなんかやらかしたのか?とか、
何か日常的に問題行動を?などと思われてしまいそうだが、
別にそういうわけではない。
日本では、衆議院選挙の際に、
この「最高裁判所裁判官国民審査」が同時開催される。
システムは毎回同じで、
用紙に列記された裁判官の名前を見て、
「コイツはダメだ」と思った人の欄に、×印を入れる。
この×印が、全体の過半数に達した場合、
その裁判官は罷免される。
つまりクビになるわけだ。
ちなみに投票率が、
1%に達していなかった場合は、
仮に×印が過半数を超えていても、
その裁判官が罷免されることは無い。
一度審査をクリア、つまり×印が過半数を超えなければ、
以降、10年間は再審査はない。

だから今回、審査対象が5人だったということは、
他の裁判官が、すでに一度国民審査を受けており、
これにパスしていた、ということになる。
前回の衆議院選挙が行なわれたのが2年前なので、
この5人はそれ以降に、
最高裁判所の裁判官に任命されたということだ。

しかしいざ、用紙を渡され、
そこに列記されている名前を見ても、
知っている名前がひとつも載っていない。
自分が不勉強なのはあるだろうが、
大方の一般人は、自分と同じ状態になるだろう。
よほど裁判が好きで、
裁判関連のニュースに注目していない限り、
裁判官の名前を覚えていることはないだろう。
つまり、名前以外の判断材料が無いまま、
×印をつけるか否か、判断しないといけないわけだ。
いっそのことフィーリングや、姓名判断、
あるいはサイコロでも転がして……となるが、
さすがにそんないい加減なもので、×印はつけられない。
結局は何も記入せずに、
用紙を投票箱に入れることになる。

しかし、そんなことを言っても、
判断材料が何もないじゃないか、と思われるだろう。
実はあるのである。
衆議院選挙が公示されると、その裏でひっそりと
審査にかけられる裁判官の、経歴や裁判の判決が
「審査公報」として、発行されているのである。
え?そんなの見たことないよ、という人も多いだろう。
自分も見たことがなかった。
市の広報誌を見ても、
選挙公報の配布場所については書いてあるが、
審査公報については全く触れていない。
これは最初から配布していないのか、
選挙公報とひとまとめになっているのか?
新聞を取っていれば、
チラシと一緒に入っているらしいが、
新聞を取っていない場合は、
配布場所まで取りに行かなければならない。
これでは、見たことないという人がいるのも、
当たり前である。

この審査公報、最近ではインターネットでも
公開されるようになった。
今回の国民審査の審査公報がないかと調べてみたが、
関係各所のホームページでは、
すでに公開を終了していた。
ただ、前回の審査公報を見つけることが出来た。
どんな内容なのか目を通すと、最高裁判所だけあって
扱った裁判は、有名なものが多い。
選挙の、1票の格差についての判断もあれば、
自治体などの行なった政策が、違憲か?
という判断もある。
こういうのは、政治的にも高度な判断なので、
一般人にはわかりにくいが、
わかりやすいものとして、
危険運転致死傷罪の適用の判断、
明石歩道橋事故の責任者の、
業務上過失致死傷罪についての判断などがあった。
どれも全国ニュースで大々的に取り上げられた事件だ。
こういう事例なら、その裁判官の判断に関して、
可否を考えることが出来そうだ。

さて、この「最高裁判所裁判官国民審査」、
一体今までに、どれだけの裁判官が罷免されたのか?
……実は、今まで
誰1人として罷免されていないのである。
え?1人も罷免されてないの?
と思われるかもしれないが、先に書いた通り、
我々一般人は、最高裁判所の裁判官について、
その名前すら覚えていないことが多い。
さらに審査公報も、
目にする機会すら少ない。
そんな中で、国民審査をしても、
過半数の×印をつけられることなど、ありえないのだ。
さらにいえば、この国民審査と同時進行で、
衆議院選挙が行なわれている。
世間の関心も、裁判官の審査より衆議院選挙で、
マスコミなども最高裁判所裁判官国民審査に関しては、
全く報道しない。
TVなどで「選挙速報」は放映されるが、
「最高裁判所裁判官国民審査」については、
一言も触れられることがない。
哀れといえば、哀れな状況だが、
逆にこんな状況だからこそ、
今まで誰も罷免されないという事態が
起こったのかもしれない。

さて、ここまで書いてきたことからでもわかるように、
この「最高裁判所裁判官国民審査」という制度、
もう完全に形骸化していると言ってもいい。
やっている意味がないのである。

ただ、選挙公報を見て、候補者の人となりをみるよりも
審査公報に載っている裁判記録から、
裁判官の人となりをみる方が、かなり容易い。
と、いうよりも「面白い」といっていい。

もし、次回、衆議院選挙がある際には、
この審査公報にも目を通し、
真面目に裁判官審査をするのも面白いだろうと思う。
さすがにどの裁判官も、ひとかどの人物なので、
そうそう×印をつけることもないだろうが、
その場合は、堂々と無記入投票が出来る。

一番の問題は、次回の衆議院選挙まで、
このことを覚えているかどうか、かも知れない。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-イベント, 雑感、考察

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.