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柏餅

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そろそろ、鯉のぼりが目立つようになってきた。

自分の住んでいる地区には、子供のいる家庭が多いので、

少子化の時代にも関わらず、何本も鯉のぼりが立てられている。

童謡の「鯉のぼり」では、「屋根より高い」とになっているが、

うちのまわりの鯉のぼりは、どれも屋根より低いものばかりだ。

……といっても、鯉のぼりを立ててもらっているだけ、いいのかもしれない。

うちでは、男2人、女1人の3人兄弟だったが、

ひな人形はあれども、鯉のぼりはなかった。

その辺りの塩梅は、親の価値観によるのかもしれない。

鯉のぼりは「こどもの日」まで立てられる。

ひな人形の場合、片付けるのが遅れると、嫁に行き遅れるという俗説があるが、

鯉のぼりにはそういうものはない。

もっとも、ひな人形と違い、毎日上げ下ろししないといけないようなので、

ひな人形よりも手間はかかるが、しまい忘れるということはなさそうだ。

で、こどもの日が近づいてくると、スーパーや和菓子屋に

「柏餅」が並ぶようになる。

うちには鯉のぼりはなかったが、「柏餅」はしっかりと食べさせてくれた。

今回は、こどもの日のお菓子、「柏餅」について書いていく。

柏餅は、上新粉で作った餅で小豆餡を包み、さらにそれを柏の葉で挟んだものだ。

端午の節句の供え物として用いられる。

桜餅とは違い、葉は食べない。

ただ餅を挟んでいるだけだ。

食べる時には、葉ははがす。

普通の餅と違い、上新粉をこねて蒸し上げて作っているので、

餅というよりは、団子といったほうが正しい。

モッチリとした粘りがある。

それだけにうまく葉から外さないと、葉にべっとりと餅が残ることになる。

柏餅が初めて作られたのは、

江戸時代の9代将軍家重~10代将軍家治のころといわれている。

その根拠は、俳句の季語を記した「俳諧初学抄」(1641年)には

柏餅の名前がないのに対し、「酒餅論」(1661~1673年)には

柏餅の名前が出てくるからだ。

要は、ここから作られた年代を推測したにすぎない。

だから一体どういう経緯で、柏餅が考案されたのか?

という点については、詳しくはわかっていない。

柏餅以前には、粽が食べられており、その起源は古代中国に由来する。

「楚」の国の屈原(くつげん)という人物が、楚国王の乱行を諌めたが

かえって国王の逆鱗に触れ、江南の地に追放された。

そこで屈原は川に身を投げて自殺する。

屈原を哀れんだ人々は、彼の命日である5月5日に、

竹筒に米を入れたものを川に流し、彼の冥福を祈った。

ところが漢の時代、屈原の幽霊が現れて、

悪龍によって供え物を横取りされていることを知らせる。

そして横取りされないために、悪龍の嫌いな楝樹(れんじゅ)の葉で米を包み、

五色の糸で縛ってほしい、と頼んだ。

人々は、屈原の頼み通りに、楝樹の葉で米を包み、五色の糸で縛って川に流した。

すると悪龍に横取りされることなく、無事に屈原のもとに届いたのだった。

これが粽の始まりである。

端午の節句が中国から伝わった時、同じく粽も伝わった。

以降、中国の故事に従って、端午の節句に粽を食べるようになった。

現在でも、端午の節句に粽は食べられており、

粽の風習は無くなっていない。

柏餅と粽は両方とも、現在まで食べられ続けている。

柏餅誕生には、この屈原の故事が関係しているように、思えてならない。

江戸時代、武士の家では端午の節句に、子供の成長を祈って粽を食べていた。

しかし粽の誕生物語では、主人公の屈原が無念のうちに死んでいる。

これを、縁起が悪いとして、嫌ったのではないだろうか?

そして粽に変わる、縁起のいいものを作り出そうとしたのではないか。

そこで、それまで食べていた、粽の餅団子を、

全く別のものでつつむことを考えた。

それが柏の葉だった。

では、どうして餅を包むのに、柏の葉が使われることになったのか?

柏はブナ科の落葉広葉樹で、高さは10mにもなる。

日本で自生しているのは主に東日本で、西日本ではあまり見ない。

大きな特徴として、新芽が育つまで、古い葉が落ちないことがある。

これは家系が絶えないという意味で、武士にとって縁起が良いものとされた。

だからこそ、それまで粽に使われていた茅ではなく、

柏の葉で餅をまいたのではないだろうか?

その際、子供が喜ぶように、餅の中に小豆餡を入れた。

そういう流れがあっての、柏餅誕生だったのではないだろうか。

江戸時代、縁起をかつぐ武家によって、粽をヒントにして作られた柏餅。

この柏餅は参勤交代の武士達によって、全国に広められる。

しかし、東日本はともかく、西日本では柏の木は自生していない。

これでは柏餅は作れない。

柏の葉の採れない地域では、柏の代わりに

山帰来(さんきらい)の葉で餅を包んだ。

山帰来はサルトリイバラ科の植物の一種で、正式にはドブクリョウという。

つる性の植物で、塊茎は生薬として使われる。

現在、柏餅は全国で食べられている。

最近では全国のスーパー、和菓子屋などで、柏の葉を使った柏餅を売っている。

もちろん、端午の節句の時期に、柏餅は店先に多くならぶが、

現在では、ほぼ1年中、食べることができる。

5月に入ると、スーパーなどの菓子材料売り場で、

乾燥させた柏の葉を販売している。

これを購入すれば、自宅でも簡単に柏餅を作ることができる。

中の餡はつぶあん、こしあん、の他に「味噌あん」というものがある。

これは白あんと味噌を練り上げたもので、

小豆餡に比べれば、かなりレアな柏餅だ。

つぶあんやこしあんは、スーパーなどでも販売しているが、

「味噌あん」は滅多に見かけることはない。

もしあなたが「味噌あん」の柏餅を見つけたら、

そのチャンスを逃さずに、是非味わってみてほしい。

それは子供の柏餅ではなく、大人の柏餅の味だ。

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