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「給食から牛乳を廃止」の本当のワケ。

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By: whity

先日、テレビを見ていると
「給食から牛乳を廃止」というニュースが流れていた。

新潟県三条市では、学校給食での牛乳を止めたという。
三条市では、平成20年から完全米飯給食に移行しており、
「牛乳はご飯に合わない」ということで、
牛乳を廃止する、ということになったらしい。

この件には、賛否両論だったらしいが、
ちょっと気になったのは、どうもまわりの大人が
ギャーギャー言っているだけで、
肝心の子供の意見を、重要視していないように見えた。
実際に給食を食べるのは子供たちなのだから、
やはり一番重要視されるのは、子供の意見だろう。

よく調べてみると、「牛乳がご飯に合わない」というのは、
数ある理由のひとつで、どうも最大の理由は、
消費増税、食材費の高騰で給食費を値上げするか、
それとも給食の内容を見直すか、ということらしい。
その流れの中で、何を削るかということになり、
とりあえず、一番簡単に削れるということで、
牛乳を、ということになったらしい。
どうもこの部分が、かなり縮小されて伝えられ、
「牛乳はご飯に合わない」という部分だけが、
前面に押し出されているようだ。
まあ、確かに
「金がないので、牛乳止めます」では、
まわりから総スカンを喰ったであろうことは、
容易に想像がつく。
金がないしわ寄せを、子供に背負わせるのか?
金がないという大人の責任を、
子供の健康を犠牲にして埋め合わせるのか?
などという論調の記事が、新聞に載りそうだ。
それをごまかすための、
「牛乳はご飯に合わない」だったのかもしれない。

さて、いざ牛乳が無くなるということになって、
一番騒がれたのが、「カルシウムが~」ということだった。
確かに牛乳にはカルシウムが豊富に含まれているが、
何も牛乳に含まれている栄養素は、カルシウムだけではない。
タンパク質も脂質も炭水化物も含まれている。
また必須アミノ酸もバランスよく、豊富に含まれている。
どうも、その辺りのことについては、
あまり語られなかったようだ。

最近は、牛乳に対して否定的な話が多い。

・アレルギーを起こすことがある。
・牛乳が、人の内分泌系に悪影響を与える。
・人間は乳糖を分解できないので、下痢を起こす。
・骨粗鬆症になる。
・人と牛は違う生物だから、牛乳を飲むのは異常。

などである。
この中で、普通に受け入れられるのは、
アレルギーを起こすことがある、くらいだろうか。
確かにこれは事実だ。
牛乳アレルギーというのは、確かに存在している。
しかしこれは、小麦粉や卵、ピーナッツなどでも
起こりうるもので、いちいち問題視する方がおかしい。
牛乳アレルギーの人は、乳製品を食べない、ですむことだ。

牛乳が、人の内分泌系に悪影響を与えるというのも、
かなり怪しい。
影響の中に、生殖機能の低下、というものがあるが、
江戸時代、牛乳を愛飲していた徳川将軍は、
皆、子沢山だった。
明らかに生殖機能は、増進しているのではないか?

人間は乳糖を分解できないので、
下痢を起こすというのも、どうだろうか?
これが正しければ、給食後の午後は、
生徒たちが皆下痢をしてしまい、授業にならないはずだ。
これに関しては、全く別の理由ではないだろうか?
そもそも一般家庭では、牛乳はいつも冷蔵庫で保存している。
そして、これを飲む際、温めて飲む場合以外は、
大体コップに注いだ牛乳を、一気に飲んでしまう。
つまり冷えた液体を一気に飲んだために、腹が冷え、
腸内の酵素の働きが不活性化し、
腹が下るのではないだろうか?

骨粗鬆症になる、というのは従来の説と全く反している。
そもそも牛乳は、カルシウムを摂取して、
骨を強くする、というのが今までのウリだったはずだ。
事実、牛乳をよく飲んでいた人は、
亡くなった後、焼き場で死体を燃やしても、
しっかりと骨が形を保っているという。
明らかに、骨粗鬆症とは正反対の状態である。

牛乳は牛の乳だから、人が飲むのは異常、というのは、
かなりムチャクチャな考え方だ。
これを異常と言ってしまえば、
ほとんどの食品は異常ということになるのではないか。
さらに異常、というだけで、
具体的にどういう害がある、ということには言及していない。
これは一種の精神的なものだろう。
科学的とは言い難く、論理的とも言い難い。

こうして見る限りでは、牛乳が身体に悪いというのは、
かなり信憑性の薄い話になる。
確かに今までの常識を覆すような
「牛乳害悪論」は面白い。
だが、少なくとも1000年以上の間、
人類が問題なく、これを飲んできた歴史を考えると、
説得力のある論文とはいえない。

日本においても、古代には牛乳を飲む習慣があった。
「日本書紀」には、牛酒という記述があるので、
これが牛乳そのものを指しているのか、
何らかの加工品を指しているのかはわからない。
馬乳酒というのは、聞いたことがあるが、
牛乳酒というのは聞いたことがない。
恐らくはヨーグルトのようなものではないかと思われる。
さらには、牛乳を加工した「蘇」、「醍醐」というものも
作られていた。
加工法は牛乳を煮詰めていくだけで、
チーズに近いものだったのだろうとされている。
奈良時代に入り、聖武天皇が肉食禁止令を出すことによって、
このような牛乳を加工する文化も廃れていく。
以降、明治時代に肉食禁止令が解禁されるまで、
牛乳は日本人にとって、全く未知の食品になる。
もちろん、そんな時代であっても、
牛乳を飲んでいた人間は存在している。
ただ、彼らは食品としてではなく、
一種の薬品として、牛乳を摂取していたようだ。
少なくとも、日常の食品としては未知の食材だが、
その高い栄養価は知られていたようだ。

明治時代になると、肉食禁止令が解禁され、
牛乳が自由に飲めるようになる。
もっとも、それまでの長い禁止令のせいか、
当初は牛乳を飲もうという人も、
ほとんどいなかったようである。
しかし、西洋食文化の影響もあり、
牛乳は次第に受け入れられるようになる。
牛乳を飲む習慣が、広く一般化したのは、
第2次世界大戦後、学校給食に
アメリカから輸入した脱脂粉乳が、
出されるようになってからのことである。
現在でも、子供のころに飲んだ
脱脂粉乳のまずさを語る人がいるが、
そういう子供たちにとって、
牛乳は信じられないほど美味しい飲み物に感じられただろう。
牛乳はこうして学校給食の一画に入り込み、
現在に至るまで、その定位置をキープし続けてきたのである。

その牛乳が、学校給食から消えようとしている。

昨今、どこの自治体でも
消費増税と物価高による給食費の高騰は、
頭の痛い問題だろう。
三条市の牛乳廃止実験の結果次第では、
我も、我も、と後に続く自治体が出てくるだろう。
そうなれば、牛乳の消費は一気に落ち込み、
酪農家の廃業も相次ぐかもしれない。

三条市の小中学生たちには、本人たちの与り知らぬ所で、
重大な判断が、委ねられている。

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