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姫路城~その2

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前回、姫路城について書いた。

今回も前回に引き続き、姫路城について書いていく。

現在、姫路城は平成の大修理のため、覆いをかけられている。

そのため、今はその姿を見ることはできないのだが、

修理前は、夜になるとライトアップされ、闇の中に姫路城の白い肌が

浮かび上がっていた。

暗い夜空をバックに、白く浮かび上がる城の姿は、

美しく、そしてどこか不気味でもある。

このライトアップのなかった頃は、どうだったのだろうか?

薄暗い月夜の晩に浮かび上がる、真っ黒な巨大な城、

それは、昼間に見える白い姿とは、あまりに違って見えたのではないだろうか?

江戸時代は、他に巨大建造物などない時代だ。

町の中央に建っている巨大な城の影は、

どこか異質な不気味さを、漂わせていたに違いない。

そういう一種の不気味さが、数々の怪異を生み出してきた。

その中で、一番有名なものが「刑部姫」の伝説だろう。

「刑部姫」。

おさかべひめ、と読む。

よく知られている話を、書き出してみよう。

時代は江戸時代。

姫路城の大天守の最上階に、若い女の姿をした妖怪が出る、

という噂がたった。

ある秋の夜、姫路城で夜番をしていた侍達の間で、

誰か大天守の最上階まで登って、妖怪の姿を確かめてくる者はいないか?

という話になった。

誰も名乗りをあげなかったが、一番若かった森田図書之助という

14歳の少年が名乗りをあげ、大天守の階段を上っていった。

最上階の杉戸を開けると、中に青白い顔をした女が十二単に、

紅い袴をつけて座っていた。

女は図書之助を見ると、キツい声で

「何者じゃ?何をしにここへ来た?」

と尋ねてきた。

図書之助が一歩下がって理由を話すと、女は機嫌をなおし、

若いのに勇気があることをほめ、「ここに来た証拠の品をあげよう」と言って、

兜の錣(しころ)をちぎり、渡してくれた。

次の日、話を聞いた殿様が、鎧櫃を確かめてみると、兜の錣がちぎれていて、

図書之助の持って来たものとぴったりと一致した。

これが一般に知られる「刑部姫」の伝説だ。

同じような話で、宮本武蔵が出てくる話もある。

そちらの方のあらすじも、紹介しておく。

佐々木巌流に父を殺された宮本武蔵は、滝本又三郎と名を変えて

姫路城の大天守の番人になっていた。

妖怪が出るという話を聞き、妖怪退治のために大天守に登ったが、妖怪は出ず、

うとうとしていると夢の中に女が現れ、宝の剣を授けるという。

武蔵が目を覚ますと、側に白木の箱に入った「郷義弘の名刀」があった。

この刀は、以前に城から盗み出されていた刀だったため、

宮本武蔵に疑いがかかり、城を去るはめになった。

以上だが、この両方の話には共通点が多い。

両方とも、大天守最上階が舞台である点、女が現れる点、

さらには、何か女から貰っている点、である。

これだけ共通点があるということは、同じ話を下敷きにしている可能性もある。

ただ、巌流島の決闘が行なわれたのが、姫路城が池田輝政によって

大改修される前のことなので、武蔵のエピソードの方は時代があわない。

恐らく、前者のエピソードに、宮本武蔵を当てはめただけだろう。

あるいは、姫路城が改修される前の、話の可能性もある。

森田図書之助の逸話は、江戸時代の奇談集「老媼茶話」に書かれている。

「老媼茶話」は1742年に書かれているので、このエピソードは

それ以前のことと思われる。

「老媼茶話」を書いた三坂春編は、会津地方に住む浪人だった。

播磨と会津の距離を考えると、江戸へ参勤交代で出かけた藩士から、

又聞きのような形で、聞いたものかもしれない。

「刑部姫」については、はっきりとした定説がない。

もともと姫路城のあった姫山に祀られていた「刑部明神」だ、という説もあるし、

蛇神、あるいは妖狐であるという説もある。

実際には、高貴な姫の姿であらわれていることからも、

「刑部明神」説が、一番説得力がある。

現代人がこの手の話を聞くと、「なんだ、ただ女がいるだけか」などと

思ってしまいがちだ。

これは大きな間違いだ。

仮に現代人が、この「刑部姫」に遭遇したら、100人中100人が

腰を抜かすのではないだろうか?

大げさな、と思われるだろうが、そこを真面目に検証していく。

まず、灯りのない大天守の中を、燭台を手にして登っていく。

暗がりが怖い人は、ここで脱落するだろう。

ようやく、最上階についた。

そこで杉戸をひらく。

もちろん最上階に灯りはない。

そこにヌッと座っている、十二単の女。

顔はまだ見えない。

そこで燭台をかざし、その女の顔を確認しようとする。

そこにある女の顔は、真っ白に塗り立てられていて、なおかつ眉がない。

平安時代の絵巻を見ればわかるように、眉は剃り、

額の上部に小さな眉を描くのが、当時の高貴な女性の化粧だ。

そんな顔が、恐ろしく不機嫌な顔で、こちらを睨んでいるのだ。

ここで恐らく、半分の人の腰が抜ける。

ここを乗り切ったら、目の前の不気味な女が口を開く。

すると、ああ、なんということだろう。

目の前の女の口の中は、闇にとけ込んでいるように真っ黒なのだ。

ここで、ここまでがんばっていた人も、不意をつかれて脱落する。

もはや、女の言葉を聞いているような精神状態ではない。

……。

そう、このからくりはお歯黒だ。

平安時代などの高貴な女性は、成人するとお歯黒をつけていた。

現代人の真っ白な歯に慣れている目には、恐ろしく異様にうつるだろう。

そうなると、当時の風俗に慣れていたとはいえ、森田図書之助が

そんな化け物を相手に、普通に帰ってきたというのは、讃えるべきことだ。

来年の3月には、平成の大修理が終わり、再び大天守に登れるようになる。

その時には、最上階に鎮座している「刑部姫」を思い出してみてほしい。

ちょっと背筋が寒くなるかもしれない。

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