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日本五大名飯〜うずめ飯

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By: gtknj

一番最初に「日本五大名飯」のラインナップを見たとき、
実はその時点で2つほど見知った名前があった。
さらにその実体について調べていくと、
「五大名飯」のうち「かやく飯」は、自分が過去に何度も食べてきた
「炊き込みご飯」であることが判明し、「五大名飯」中、
既知のものは3つということになった。

問題は「炊き込みご飯」=「かやく飯」以外で自分が知っていた
「五大名飯」である。
その2つというのが「深川飯」と「うずめ飯」である。
この2つを知っていたと聞いて、ピンと来た人もいるかも知れない。
そう。
実は「深川飯」も「うずめ飯」も、マンガ「美味しんぼ」の中で、
取り上げられていたメニューである。
(正確に言えば、「深川飯」の方は「深川鍋」という鍋料理が紹介されており、
 その内容はアサリとネギを味噌で仕立て上げたものである。
 作中ではやっていないが、これをご飯にかける食べ方というのが
 紹介されており、それはまさしく「深川飯」ということになる)
ただ、マンガ内でこれらが取り上げられた際には、
それらが「日本五大名飯」の1つであるということについては
全く言及されていなかったため、自分がそれらを
「五大名飯」として認識したのは、はるか後年になってからのことになった。

では「うずめ飯」が紹介されたエピソードを簡単に書いてみる。

『栗田ゆう子の友人のある人妻が、夫の浮気を疑って相談してきた。
 ことの真相を探るため、夫の素行調査を行った山岡と栗田だったが、
 浮気の実体は確認できず、かわりに夫が毎日1人で
 「お袋の味」を売りにした店に通い詰めていることを突き止めた。
 山岡は夫が家に帰りたがっていないことに気付き、
 その原因を探るべく、妻の待つ家に向かう。
 そこで2人が目にしたのは、妻の用意したハイカラな料理の数々。
 山岡は妻に、夫が食べたがっているのはもっと地味な
 総菜料理であることを伝え、ついでに1つ、
 酒を飲んだ後に最高のメニューを教える。
 夫は帰宅後そのメニューに喜び、妻は改めて
 総菜料理を勉強することを誓うのだった』

このエピソードの中で、山岡が教えたメニューというのが「うずめ飯」だ。
メニューと言ってもそんなに手の込んだものではなく、
細かく切ったシイタケ、ニンジン、豆腐をダシ汁の中で煮込み、
その汁をご飯にかけて、海苔、ミツバ、わさびを乗せただけのものである。
いうなれば、これも一種の「汁かけ飯」といっていいだろう。
エピソードの中で、この料理が「うずめ飯」という名前であることは
山岡が明らかにしていたが、その名前の由来については何も触れなかった。

この「うずめ」というのは実は「埋め」であり、
具材をご飯の下に「埋め」ることから、この名前が付けられたのであるが、
山岡の調理では、この行程が全く無視され、
具材は全てご飯の上に散らばっていた。
つまり「うずめ飯」でありながら、まったく「埋め」ていなかったわけだ。
これでは名前の由来を紹介し辛いのも無理は無い。
その昔、このエピソードを読んだ自分も、
特に名前の由来を気にすることも無く、
これは「うずめ飯」という名の料理なのだと納得したわけである。

「うずめ飯」は、島根県津和野という地域の郷土料理だ。
島根県津和野は、東西に長い島根県の西の端、山口県との県境に位置しており
山間の小さな盆地に「小京都」と呼ばれる町並みが広がっている。
「うずめ飯」はこの津和野で、江戸時代の中期ごろに作り出された。
その起源には諸説あり、

・質素倹約の時代に、役人から贅沢を隠すために
 ご飯の中に贅沢な具材を埋めたという説
・1つ目の理由とは逆になるが、具材があまりに質素だったため、
 これを飯の中に埋めて隠したという説
・具材に「肉」が使われており、肉食禁止の風潮から
 これをご飯に埋めて隠したという説
・ワサビを気兼ねなくふるまうための、もてなし料理だったという説

などがある。
これらの理由の中で、4つ目のワサビを気兼ねなく振る舞うという説は
イマイチ意味不明だ。
ひょっとすると、漢字で「山葵」と書くワサビは、
「三つ葉葵」を家紋とする徳川家にも通じるため
特別な扱いをされることもあったというので、
幕府を慮るあまり、堂々とワサビを食べられなかったのかも知れない。
だとすれば、これを振る舞うためにご飯の中に埋めて隠すというのは、
ありそうな話ではある。
1〜3の理由に関しては、それぞれの理由で
ご飯の中に具材(肉)を隠している。
いずれにしても、ご飯にそれぞれの具材を「埋め」るのは、
それを人の目から隠すためというのが、その主たる理由の様だ。
実は、これと似たようなことを行なっている料理がある。
岡山名物の「バラ寿司」だ。
こちらでは、まず重箱の底に具材を敷き詰め、その上に酢飯をかぶせる。
これは江戸時代に殿様から「オカズは一品のみ」と決められた
岡山の庶民たちが、こっそりと隠れて豪華な具材を隠したわけであるが、
「うずめ飯」を作った心理は、これに近かったのかも知れない。
岡山と津和野。
ともに中国地方の一都市だが、この地方の人間は
大事なものを埋めて隠そうという、共通の遺伝子があるのだろうか。

津和野で見られる「うずめ飯」は、先に紹介した
「美味しんぼ」の中で作られたものとほぼ同じである。
違っているのは、具材をご飯の下に埋めているかどうかということだけである。
使われている材料はシイタケ、ニンジン、豆腐と、
さらに薬味として海苔、ワサビ、三つ葉だ。
江戸時代、シイタケは人工栽培が出来ないためかなり高価であったし、
ニンジンも、当時栽培されていた東洋系の品種は栽培が難しく、
それなりに価格も張ったことだろう。
さらにワサビが徳川家の紋所「葵の紋所」に繋がるとなれば、
恐らく江戸時代、「うずめ飯」はそれなりに贅沢な一品だったはずである。
だとすれば、先に挙げた4つの理由のうち、
やはり「贅沢な具材を埋めて隠した」というのが、真実の様に思える。

「うずめ飯」が贅沢だった江戸時代から数百年。
シイタケは人工栽培のおかげですっかり安価な食材となり、
ニンジンは栽培の容易な西洋種の普及で安価となった。
江戸時代の終焉と共に、ワサビと徳川家との繋がりも消失し、
「バラ寿司」にしても「うずめ飯」にしても、
わざわざ具材をご飯の中に埋める必要は無くなってしまった。

「バラ寿司」は、現在ではほとんど埋めることをしなくなってしまったが、
「うずめ飯」の方は、未だに具材をご飯の下に「埋める」。
やはり「埋め」ることをネーミングとしてしまったため、
その呪縛から逃れられないのかも知れない。

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