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イナゴ

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By: t-mizo

先日、市内の農道を自転車で走っていたら、
ちょうど自転車が走るのとタイミングを同じくして、
傍の畦の草むらの中から、たくさんの小型の虫が飛び出してきた。

自転車に乗っている自分からしてみれば、
常時、自分の真横の草むらの中から、虫が飛び出し続けているわけである。
虫は、その大方が自分とは反対側の方向、
つまりは水田側へと逃げるように飛び出していったわけだが、
中には何匹か、飛び出す方向を間違えたのか、
自転車で走っている自分の方に飛び込んでくるものもいた。
自分の体にあたった虫は、大慌てで別方向へと逃げていくのだが、
中には何を勘違いしたのか、自分の服にしがみついているヤツがいる。
それを手でちょいとつまんでみると、何か小型のバッタの類のようである。
後になって、インターネットで調べてみると、
どうやらあのとき、草むらの中から大量に飛び出してきた虫達は
「イナゴ」のようであった。

我々が「イナゴ」と聞いて思い浮かべるのは、主に2つだ。
1つは一部地域で現在も食べられている「イナゴの佃煮」。
そしてもう1つは、天と地を覆いつくさんばかりの数で飛来し、
農作物のみならず、紙や布までも喰らい尽くすといわれる
「イナゴの大群」である。
今回、自分の足下から飛び立った「イナゴ」の数は
相当なものだったのだが、それでも、たまにニュース番組などで報じられる
外国の「イナゴの大群」のニュースに比べれば、
全く話にならないほど小規模なものに過ぎない。
もちろん、今回自分が遭遇した「イナゴ」たちも
数百匹はいただろうし、実際、自分の走った農道の畦以外にも
「イナゴ」が同じくらい潜んでいるとすれば、
それこそ恐ろしいほどの数の「イナゴ」がいるわけで、
それなりに「食害」も出るのかも知れない。

「イナゴ」は、バッタ亜目イナゴ科に属するバッタ類の総称だ。
だから正式に「イナゴ」という名前の昆虫は存在しない。
虫に詳しい人から言わせてみれば、
バッタとイナゴは簡単に見分けがつくということらしいのだが、
自分のように虫のことをよく分からない人間からすると、
トノサマバッタとコバネイナゴの写真を見せられても、
え?同じものじゃないの?と、戸惑ってしまう。
(もちろん、時間をかけてゆっくりと観察すれば
 それぞれの違いは分かるのだが……)
大きな意味で言えば、「イナゴ」もまた「バッタ」の一種になるわけで、
そう考えれば、この2種が似通っているのも無理はない。

「イナゴ」という名前は、漢字で書くと「稲子」となる。
(この他に「蝗」と書くこともある)
その漢字の表すように、イネにつく(食べる)害虫であり、
中には「イネにつくバッタ」のことを「イナゴ」と称するという説もあった。
ただ、「イナゴ」はイネを食べる害虫ではあるのだが、
逆に人間にとっては、食べることの出来る一種の食料でもあった。
早い話、「イナゴ」の佃煮をオカズにご飯を食べるという食事は、
飯のみならずオカズについても水田から得ているということになる。
調べてみた所では、古い時代には日本国内のかなりの地域で
「イナゴ」が食べられていたようなのだが、
食料事情の変遷から次第に「イナゴ」を食べるという食文化は廃れていき、
現在では、信州などの一部地域に残っているだけである。

さて、先にも書いた通り、我々が「イナゴ」と聞いて思い浮かべるのは、
「イナゴの佃煮」と、天災とも言うべき「イナゴの大群」の発生である。
この大量発生した「イナゴの大群」が集団で移動することを「飛蝗」、
これによる被害を「蝗害」と呼ぶ。
まさに「イナゴ」恐るべし、というべきなのだが、
実はここの所に、大いなる勘違いがある。
実は「飛蝗」「蝗害」と、あの大群団を表す言葉に「蝗(いなご)」の
漢字が使われていることから、あの恐ろしい群れはすべて「イナゴ」だ、
と思われているのだが、あれらは全て「イナゴ」ではない。
ではあれは一体何だ?ということになるのだが、
あれらは「トビバッタ」「ワタリバッタ」などと呼ばれるバッタの一種で、
一定の範囲内に、ある一定以上の数のバッタがいると
爆発的に数が増える「相変異」という現象を引き起こす。
この「相変異」によって爆発的に増えたバッタが大群となり、
あの恐ろしい大被害を引き起こすのだが、
実は「イナゴ」はこの「相変異」を起こさない。
たまたま中国から「蝗」という漢字が伝わった際、
これを「イナゴ」と呼んだことから生じた、大いなる誤解である。
「イナゴの大群」として知られるあれらは、
実は全く「イナゴ」などいない、バッタの群れだったのである。
あの「イナゴの大群(実はイナゴではない)」が発生するためには、
それなりの広さが必要となってくるため、
実は日本ではあまり発生したことがない。
あまり、ということは、数は少ないものの
日本でも「イナゴの大群(イナゴではない)」が
発生しているということである。
しかし先にも書いた通り、「イナゴ」には「相変異」を起こす能力はない。
では、日本の「イナゴの大群(イナゴではない)」の正体は何か?
というわけになるのだが、実はこれはトノサマバッタである。
この「イナゴの大群(実はトノサマバッタ)は、
過去に北海道や鹿児島などで発生している。
もちろん、日本で発生する「イナゴの大群(トノサマバッタ)」は、
世界的に発生している「イナゴの大群(イナゴではない)」に比べると、
グッと規模が小さい。
海外だと、幅160km、長さ500km、高さ800mという、
凄まじい大きさの群れも発生している。
これは日本の本州の3分の1ほどの面積を持つ群れだ。
日本がこんな群れに襲われれば、全ての食料を食いつくされて
絶滅なんてこともあり得ない話ではなさそうだ。
(もっとも日本の狭い国土では、どんなに頑張っても
 こんな規模の群れは発生しそうにないが……)

さて、もう1つ。
「イナゴ」といえば、佃煮という風にイメージするくらい、
「イナゴ」=食べられるというイメージは定着している。
もちろん、その調理方法は佃煮だけでなく、油で揚げたり、
フライパンで乾煎りして粉末にする、なんていうものもある。
食べたことのある人の話を総合すると、

・エビの味がする
・エビの殻の味がする
・海老フライの尻尾の味
・塩気のないかっぱえびせんの味

などと、「エビ(の殻?)」の味との共通点を見出している人が多い。
よくよく考えてみれば、甲殻類(エビなど)も昆虫(イナゴ)も、
外骨格を持つタイプの生物である。
自然と似たような味になるのかも知れない。

少しだけ興味はあったのだが、さすがに捕まえて
食べてみる気にはならなかった。

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