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歴史 雑感、考察

名字〜その1

更新日:

通常、日本人はもれなく「名字」というものを持っている。

名字。
これを国語辞典で調べてみると、

みょうじ(名字・苗字)……その家の名、姓

とある。ここに出てきた「姓」というのを、さらに調べてみると

姓(せい・しょう・かばね)……1・一族
               2・氏族の称号
               3・氏族・家の固有名

となっている。
パッと見た感じでは、どれもほぼ同じ意味合いの様に感じてしまうが、
我々が普段「名字」として使っている言葉に、もっとも近い意味を持つのは
3であろうか。

ただ、本来的な意味でいえば「姓」と「名字」というのは、
全く違う意味であったらしい。
「姓」はもともと「カバネ」であり、これは天皇家から与えられた
公的なものであるのに対し、
「名字」というのは、住んでいる土地の名前などから
自分の意思でつけたものだからである。
そういう意味では「姓」と「名字」というのは、本来、別のものであり、
改めて自分の名前を正しく書き記すのであれば、
「姓」「名字」「名前」を、全て書き記すのが正しいということになる。

もちろん、その「姓」の成り立ちから考えれば、
全ての日本人が「姓」を持っているわけではないことが分かるだろう。
「姓」を持っているのは、あくまでも祖先が天皇家から「姓」を
与えられていなければならない。
日本人の全てが、そのような祖先を持っているわけではない以上、
どこまで自分のルーツを遡っても、
「姓」が見つからないということもあるだろう。
もっとも、現在、そんなことを気にしている人というのはいない。
明治時代、戸籍制度が誕生した際、全ての日本人が
「氏名」を登録することになり、それまで「姓」「名字」のなかった人も
なんらかの「氏」を考えて登録しなければならないことになったのだが、
このとき、「姓」と「名字」を両方持っていた人たちも、
その多くが「名字」の方で登録をした。
それだけ、「名字」の方が世間で通りが良かったからである。
そして、ここにひとつ、面白い事実がある。
この日本で、ただ一家だけ、「名字」も「姓」も持たない家がある。
そう、ここまでの話で何度か出てきた天皇家である。
「姓」を与える立場であった天皇家の方々には「名字」は無く、
さらにいえば、一般の国民のように戸籍というものも、存在していない。
天皇家の方々のみの系譜「皇統譜」に、そのお名前が記録されている。
他家から天皇家に嫁入りされた場合、ご成婚後にはそれまでの名字が無くなり
ただお名前のみになられるわけである。

一説によれば、現在、日本には10万以上の「名字」が存在するという。
また、別の説によれば、「名字」は30万以上存在しているともいう。
……。
誤差20万。
笑うしかない数字である。
この現代において、国に存在している「名字」の数も把握できていないのか?
とツッコミが入りそうであるが、実は国自体が「名字」に関する調査を
行っていないのである。
だから、雑誌やTVなどで紹介される「名字」ランキングみたいなものも、
公的なデータを元にしているわけではなく、あれらは全て、
民間の調査によるデータを用いているだけなのである。
どうして、国は「名字」に対する調査を行わないのか?
ある新聞記者が、これを国に尋ねた所、
「そんなものを調べた所で、国の政策に役立つとは思えない」
という答えが返ってきたそうである。
まあ、確かに言っていることは分かる。
そんなものを調べた所で、それをどう国政に活かすのか?といわれれば、
はて、確かにそれが何かの役に立つとも思えない。
いわば、単なる知的好奇心を満たすだけの調査になる。
それこそ「税金の無駄遣い」という誹りは必至であろう。
さらに「名字」の分類というのは意外に面倒だ。
同じ「さかた」という読みでも「酒田」「坂田」と漢字が違う場合もあるし、
逆に「山崎」と漢字は同じであっても、「やまさき」「やまざき」と
読みが違っている場合もある。
これらの違いを全て把握し、分類していくとなれば、
それこそとてつもない手間がかかることが予想される。
そして、それらの種類、数を算出した所で、その正確な数は
日ごとに変化していく。
日本では、結婚する際に女性が「名字」を男性側のものに変えるのが
通例だからである。
そうなると、折角、細かい人数までカウントしても、
それは出来上がった瞬間から、正確性のない数字ということになる。
そんな数字を出すのに、多額の金をかける価値があるか?
ということになれば、国が調査に踏み切れないのも無理はないだろう。

先に書いた通り、現在、「名字」ランキングなどに用いられているデータは、
全くの民間の個人、あるいは企業がこれらを調査したものである。

これらのデータのうち、もっとも古いものは「佐久間ランキング」と
呼ばれているもので、昭和47年に発表されたものだ。
名字研究家であった佐久間英氏が家族4人で
7年半の年月をかけて作製した。
全国規模での「名字」ランキングとしては、これが初めてのものだ。
違う漢字であっても同じ読みのものは、
ひとまとめにしてあるデータであり、
農村部が少なく、大都市周辺のデータに偏っているため、
後のデータとの乖離が指摘されることもあるが、
コンピュータのない時代に、全て手作業でこれだけのデータを調べたことは
素直に偉業として讃えられるべきであろう。

ちなみに後に第1生命が、顧客1000万人のデータを元に
「名字」ランキングを作った「第1生命ランキング」、
村山忠重氏がCD-ROM化された電話帳から
およそ3000万人のデータをもとにして作った「村山ランキング」などが、
現在、「名字」のデータとして、主に使われている。

現在、「名字」ランキングとして使われている新しいデータでさえ、
総人口の3割ほどしか調査せずに作られているわけで、
これは日本で「名字」を調べるのがいかに大変であるかを、
証明しているようなものでもある。
それを端的に表しているのが、日本の「名字」の総数が
10万~30万という膨大な誤差の存在なのだ。

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