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ドジョウ

更新日:

一般的に、「ドジョウ」は田舎住みの人間にとって、
かなり身近な生物であると考えられている。
水田や用水路、池や川なんかを覗いてみると、
「ドジョウ」は、そこかしこにいると思っている人もいるだろう。

実は、これは大きな間違いである。
他の場所がどうかはわからないが、
少なくとも自分の住んでいるたつの市揖西町近辺では、
自分は「ドジョウ」の姿を見たことがない。
子供のころには、そこら辺の川や池で釣りに勤しみ、
網や籠などを使って、小魚や小エビなどを捕まえて遊んでいたから、
他の一般的な子供に比べると、水辺での遊びには詳しかったはずである。
しかし、そんな自分でも、子供のころに
「ドジョウ」の姿を目にすることは無かった。

自分が、生まれて初めて「ドジョウ」を目にしたのは、
確か釣具屋に置いてある、生きエサの「ドジョウ」であった。
体長10㎝ほどの黒いそれは、大きなタライの底の方で
ニョロニョロと泳いでいた。
ちょっと見た感じには、まるでウナギの小さいもののようにも見えるのだが、
ウナギというには、体の長さが寸詰まりである。
どうやらその「ドジョウ」は、中国かどこかから
輸入して来ているものらしい。
これで海の大型魚を釣るわけだ。

「ドジョウ」は、コイ目ドジョウ科に属する淡水魚だ。
体表がヌルヌルしている点や、パッと見た所では
ウロコが無いように見えることから、ウナギの仲間のように思われるが、
実はウナギとは別種の生き物である。
尾ビレや背ビレなどが、それぞれ独立した形状になっており、
これらがひと繋がりになっているウナギとは違っている。
体は細長い円筒形で、全長は10~15㎝。
口元には、上あごに3対、下あごに2対の、計10本のヒゲが生えている。
体表面がぬるぬるとしたぬめりに覆われており、
一見すると、ウロコが無いように思われてしまうが、
実際にはそのぬめりの下に、極小サイズのウロコが存在している。
(このウロコは、食べる際に取り除くこともせず、
 そのまま調理される。
 ちなみに同じようにぬめりに覆われているウナギなども、
 同じようにぬめりの下に極小のウロコを持っているが、
 こちらも同じく、調理の際に取り除くことは無い)
食性は雑食性であるが、主には植物プランクトンやイトミミズなど、
極小サイズの生物を食べている。
川の本流よりは、よどみの中の、泥っぽい場所に生息している。
水田などに住んでいるためか、エラ呼吸の他に皮膚呼吸、
腸を使った呼吸を行なっており、水中の酸素が少なくなってくると
水面に顔を出して空気を吸うこともある。

古くは、わりとどこにでも生息しており、
さらに味も良かったことから、各地で食用にされていた。
だが、淡水域が乱開発され、水田で農薬が使用されるようになると
「ドジョウ」は急速にその数を減らしていった。
現在では、各地で養殖も行なわれているが、それだけでは需要を満たせず、
市場に出回っている「ドジョウ」の大半は、中国や台湾などからの
輸入物になっている。

もともとサイズが小さいため、大型の個体であれば捌いて開くこともあるが、
大体の場合は、ぬめりだけとった後、そのまま調理されることが多い。
有名な調理法としては、ゴボウと一緒に煮込んで卵でとじる「柳川鍋」、
卵でとじないものはただ「ドジョウ鍋」と呼ばれる。
ドジョウを水から煮て、味噌や醤油で味付けした「ドジョウ汁」、
ウナギと同じようにタレにつけて焼き上げた「蒲焼き」なども
それなりに知名度のある調理法だろう。
一風変わっているのは「地獄鍋」と呼ばれる鍋物だ。
これは生きたドジョウを豆腐と一緒に鍋に入れて、
水から加熱していく調理法だ。
ドジョウはその熱さから逃れようと、豆腐の中に潜り込むのだが、
結局は豆腐ごと加熱されて、豆腐の中で煮上がることになる。
かくして煮上がった鍋の中には、ドジョウの入った豆腐だけが
残っており、これに味付けして食べるというわけである。
必死に熱さから逃れようとするドジョウにとって、
鍋の中は、まさに「地獄」ということだろう。
(実際にやってみると、そうそう狙ったようには、
 豆腐の中に入ってくれないらしい)

「ドジョウ」は、昔、非常に栄養のある食物だと考えられていた。
「ウナギ1匹、ドジョウ1匹」という言葉もあり、
ドジョウ1匹の栄養価が、ウナギ1匹のそれに匹敵するという意味である。
ドジョウとウナギのサイズ差を考えてみれば、
いかにドジョウの栄養価が高く評価されていたかが分かる。
もちろん、標準的なサイズのドジョウとウナギに含まれている
栄養量を考えれば、当然ウナギの方が高いのだが、
100グラムあたりに含まれる栄養素を、ウナギのそれと比べてみると、
多くの栄養素で同等か、それ以上の含有量がある。
さらにウナギに比べると脂肪分が少ないので、
よりヘルシーな食材であるとともに、
江戸時代の人間の嗜好に、あっていたのかも知れない。

さて、話を元に戻してみよう。
自分は子供のころ、身の周りで「ドジョウ」を見たことがない、と書いたが
兵庫県内の「ドジョウの生息状況」のデータを見てみると、
ちゃんとたつの市でも「ドジョウ」の生息が確認されていた。
ただ、隣の相生市では「ドジョウ」が確認されておらず、
データ上では相生市に「ドジョウ」は生息していないことになる。
自分の住んでいるたつの市揖西町は、この相生市に隣接しているので、
相生市を中心とした「ドジョウ」ゼロ地帯に含まれているのかも知れない。
データで見ると、兵庫県内のほとんどの市町村で
「ドジョウ」の存在は確認されており、
これがいない地域はごくわずかである。
むしろ逆に、どうしてその地域にだけ
「ドジョウ」がいないのかの方が不思議だ。

果たして、相生市を中心とした一帯に「ドジョウ」がいないのは何故か?
この謎は、簡単には解けそうにない。

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