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対称的な謝罪会見

更新日:

ここの所、日本中の目が
某大学のアメリカンフットボール部に向いている。

今更、ここに書くまでもないことかも知れないが、
ザッと流れを書いていくと、こうだ。

5月6日に行なわれた、大学のアメリカンフットボール部の定期戦で、
ある選手が、相手チームの選手に対して悪質なタックルを仕掛け、
負傷・退場させた。
この選手は、この悪質タックル以外にも反則行為を繰り返したため、
退場処分を受けることになったのだが、
試合後、この悪質なタックルが問題視され、社会的な話題になった。

被害を受けた大学側は、相手チームに対し抗議を行い、
どうしてこのような行為が行なわれたのか?をいう経緯についての
説明を求めたが、この回答までに時間がかかったのと、
回答自体がとても納得のできる内容ではなかったため、
改めて説明を求めた。
もうこのころになってくると、あのプレイは監督が選手に指示を出し、
その権限を使ってやらせたものである、という様な話も出始め、
それを裏付ける様な情報が、チラホラとTVで報道される中、
事態が大きく動いた。

5月22日、悪質タックルを行なった選手が、都内の記者クラブにおいて
謝罪会見を開き、そこで問題の行為が監督・コーチからの指示であったこと、
さらにこの試合の1週間ほど前から、練習試合からも外されて、
強いプレッシャーをかけられ続けていたことを明かしたのである。
この謝罪会見は、タックルをした選手とその両親、
さらに彼らに依頼された弁護士らによって開かれたもので、
そこに、問題の大学の関係者は、1人も同席していなかった。

さらにその翌日、事態はまた大きく動く。

5月23日、前日に開かれた選手の謝罪会見に動かされるように、
問題のフットボール部監督・コーチが急遽、謝罪会見を開いた。
こちらでは、前日、選手が明かした監督・コーチからの指示を完全に否定、
あくまでも監督・コーチの意図した所と、選手の受け取り方に乖離があり、
自分たちには、意図的に相手チームの選手にケガをさせるつもりは
無かったと弁明した。
要は、前日の選手の会見と、全く違う見解を示したわけだ。
そのため、マスコミからはかなり執拗に質問が浴びせかけられ、
謝罪会見は長時間化したのだが、それが新たな事態を引き起こした。
謝罪会見を仕切り、司会役をしていた大学職員がキレて、
マスコミ関係者たちと口論を始め、
ついには謝罪会見を打ち切ってしまったのである。

この監督・コーチの謝罪会見の後、この大学から相手大学に対し、
求められていた再度の回答書を送ったが、
やはりこれも納得のいく内容ではなかったらしく、
結局、被害を受けた選手の両親が警察に被害届を出し、
ことは警察沙汰ということになってしまった。

ここで注目したいのは、2日続けて行なわれることになった謝罪会見である。

奇しくもこの2つの謝罪会見は、良くも悪くも非常に対称的なものになった。

・監督・コーチという指導する立場、学生という指導される立場という
 それぞれの立場。
・事態の説明が簡潔で分かりやすかった学生側会見と、
 いまいち要領を得ず、分かりにくかった監督・コーチ会見。
・自分の責任を明確にして、他者への転嫁を行なわなかった学生側と、
 監督者責任しか認めず、学生に責任を押し付けた監督・コーチ側。
・学生側の会見が爽やかなほどにスッキリしていたのに対し、
 監督・コーチがの会見はもうシドロモドロで、非常に見苦しかった。

なんというか、良い謝罪会見と、悪い謝罪会見の見本の様ですらある。
なまじ、2日続けての謝罪会見となったため、
より大きく世間の注目を集めることになり、
2つの会見は、より厳しく比較されることになってしまったのだが、
当然、学生側には好意的・同情的な意見が多く集まり、
その真摯な対応と誠実な態度が、高い評価を得た。
一方の監督・コーチ側には、世間から不審の目と怒りが向けられ、
2人のシドロモドロの態度と、司会の逆ギレした態度が
これに拍車をかける形となり、監督・コーチのみならず、
大学自体についても、その評価をどん底まで押し下げる形になった。

生徒側、監督・コーチ側ともに、その主張に相反する部分があり、
問題は、そこの部分についてどちらの主張が正しいのか?という点が
ポイントになってくるはずなのだが、
この両者の謝罪会見の内容によって、世間的な判断はほぼ確定した。
あの2つの謝罪会見を目にして、監督・コーチ側に理があるという人は、
まずいないだろう。
皮肉なことに、これは被害を受けた大学側も同じことらしく、
彼らは悪質タックルをした生徒には完全に同情的なのに対し、
監督・コーチおよび大学側には、その不誠実さに怒りを燃やしている。
マスコミもまた、完全に同じスタンスで取材・報道を繰り返しているため、
いよいよもって世間の感情は、監督・コーチ及び大学に
厳しい審判を、となっている。
ここまで世間の感情が一方的になるなんてことは、
そうそうあるものではない。
この圧倒的な世論の流れを生み出したのが、
あの2つの謝罪会見だったわけだから、
謝罪(会見)というものが、いかに重要かということである。

大学同士の定期戦で行なわれたいくつかの反則行為は、
今やその端緒からは想像もできないほどの大きな社会現象になった。
問題の大学には抗議が殺到し、世間の厳しい目が向けられ、
本来はこの問題に何ら関係ないであろう同学の一般生徒やOBまで
思いもよらない風評被害を受けているらしい。
さらにこの流れの中で、アメリカンフットボール部内や大学内にあった
黒い噂などもまことしやかに囁かれるようになり、
大学の内外から、監督・コーチ陣の一新、
経営陣の総入れ替えなどと言う声が挙って来ているという。

問題の監督・コーチ、大学経営陣などは、ひと月にも足らない間での
この大きな動きに、最早ついていけていないのだろう。
ひょっとすると、たかが部活の試合の反則くらいで、
なんでこんなことになっているんだ?と、
混乱の極みにあるのかも知れない。
彼らは気付いていないのだろう。
ことここに至るまでに、彼らの傲慢な考え方や態度によって、
様々な歪みが大学内に発生していたことに。
少しずつ、長い時間をかけて蓄積されていった「それ」は、
今回の反則行為をきっかけにして、巨大な地震を引き起こしたのだ。
一度、起こった地震を、無かったことには出来ないように、
今回の事態も無かったことには出来ない。

彼ら自身のためにも、彼らが早くそのことに気付いてくれることを望む。

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