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処刑〜その3

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By: A Yee

ここまで2回にわたり、様々な「処刑」方法について書いてきた。

猛獣刑、車輪刑、斬首刑、絞首刑などなど……。
ただ、ここまでに書いてきた「処刑」方法はどれも
やや原始的というか、前時代的な方法ばかりであった。
(その中でも「絞首刑」などは、時代と共に洗練されて、
 現代でも尚、実行されているわけだが……)
人間の科学の進歩に合わせるようにして、この最新の科学を用いた
「処刑」方法が編み出されるのは、当然のことである。
今回は、科学の発展によって新たに編み出された、
比較的新しい「処刑」方法について、書いていきたい。

1880年代から1890年代にかけて、
アメリカでは急速に近代化と工業化が進んだ。
町には、高電圧を必要とするアーク灯(放電灯)が設置されたのだが、
それと同時に、これらの設置に関わる作業員や、一般人などの
感電死が相次ぐことになった。
それまでの人間は、電気というものに全く触れたことがなく、
その上、この電気なるものは、火などのように目に見えるものではない。
ついつい不用意に、電線などに触ってしまうのは、
無理の無いことであった。
この時代、多くの人が感電事故で感電死したのだが、
それらの人々は、ほぼ瞬間的に死亡し、
体には何の傷跡も残っていなかったことが注目を集めた。
やがて、この現象に取り憑かれた人間の1人が、
この新しい技術「電気」を取り入れた「処刑」器具を作り出した。
そう、「電気椅子」である。
この「電気椅子」の発明に、あの発明王・エジソンが
技術と財政の両面で援助を行なっていたことは、意外と知られていない。
死刑囚たちは、「電気椅子」にベルトで体を固定された後、
電流を流されて死に至ることになるのだが、
状況によっては肉が焼け焦げたり、体から炎が立ち上ったりと、
それなりに失敗例もあったようで、もっとも手際が悪かった例では、
死刑囚は死亡までに3回の通電と、24分という時間を必要とした。
これでは死刑囚はもとより、処刑執行人もたまったものではない。
そういうようなことから、「電気椅子」を使った「処刑」を廃止する州も
相次ぎ、多くの「電気椅子」は博物館入りすることになった。
しかし「電気椅子」は、現在でもアメリカの一部の州では
「処刑」に用いられており、死刑囚は「薬物注射」か「電気椅子」か、
自らの「処刑」方法を選択することが出来る。
ある意味では、究極の選択といえるだろう。

第1次世界大戦中に発明された「毒ガス」だが、
これもまた、「処刑」の方法として取り上げられた。
密封された小部屋を作り、その中に人間を入れておいて、ガスを充満させる。
当然、中の人間は毒ガスを吸って命を落とすことになる。
いわゆる「ガス室」である。
「ガス室」というと、ナチスドイツのアウシュビッツのそれが有名だが、
死刑囚を「処刑」する場合には、それほど大きなサイズの部屋は必要ない。
むしろ、「ガス室」は小さければ小さいほど、用いる毒ガスも少なくて済み、
使い終わった毒ガスの後処理も楽になる。
だから実際に作られたのは、部屋というより
カプセルと言った方がいい様な、小型の「ガス室」である。
厳重な気密扉が取り付けられ、さらに中の様子が分かるように
ガラス窓も取り付けられている。
中には、ベルト付きの椅子が設置されていて、
死刑囚はこの椅子に、ベルトで体を固定されることになる。
しかる後、「ガス室」内に何種類かの毒ガスを混合したものが
流し込まれ、これを吸った死刑囚は全く何の苦しみもなく、
安らかに死んでいく……という風になるはずであった。
しかし、そうそうことは、思い通りには運ばない。
この毒ガスを使った「処刑」でも、いくつもの不手際が繰り返され、
その度に死刑囚たちは、ひどい苦しみを味わいながら
死んでいくことになった。
さらにこの「処刑」方法には、大きな問題点があった。
それは使用済みの毒ガスの後処理である。
下手をすれば執行人たちが、この毒性の高いガスを
吸ってしまうことにもなりかねない。
「ガス室」の中の空気を何度も入れ替え、さらに厳重な防護服を着て
「ガス室」内に入り、中を徹底的に消毒する。
これは、毒ガスを吸って死んだ囚人の死体についても同じである。
死体の髪の毛はよく洗われ、肺の中の空気は吐き出させ、
着ていた服を脱がせて、全て焼却処分する。
大げさに思われるかも知れないが、「処刑」に使われる毒ガスというのは、
それほどまでに強力な薬品なのである。
1回「処刑」を執り行うたびに、そこまで神経を使う後処理があり、
さらに状況によっては、かなり死刑囚が苦しむという事実、
さらには、時間経過による「ガス室」の老朽化により、
その気密性などの信頼性が低下してきたことなどにより
1999年以降は、「ガス室」での処刑は行われていない。

「ガス室」による「処刑」は、先に述べたように
死刑囚が苦しむこともあり、さらに後処理の問題もある。
そこでより人道的に(死刑囚が苦しまないように)、
後処理をより安全・簡単にという風に考えた結果、
新たな「処刑」方法として考え出されたのが、「致死注射」だ。
早い話、死刑囚の体内に直接毒物を入れることにより、
「ガス室」の様な、大掛かりな仕掛けを不要としたのである。
この方法では、死刑囚はベッドに拘束された後、
点滴をセットされ、毒物を体内に注入されて死に至ることになる。
致死性の毒物を注入する前に、睡眠薬や麻痺薬を注入されるため、
それらによって意識を失ったまま、死刑囚は死に至り、
毒物によって苦しむことが無い、というわけである。
現在、アメリカなどで用いられているこの「致死注射」だが、
もちろん、失敗例もある。
薬の効きは、人によって違いが出てくるため、
思ったように睡眠薬・麻酔薬が効かなかったりすることもあり、
さらには「処刑」執行人が上手く静脈に針を刺せず、
(処刑執行人は一通りの訓練しかされていないことが多いようだ)
薬品がしっかりと血管内に回らかなったり、
あるいは、ヘタクソな執行人がなんどやっても上手く針を刺せず、
繰り返して針を刺される様なこともある。
(これに関しては、普通に病院でもよくあることだが……)

今回は、より現代的な「処刑」について書いてみた。
次回は、「処刑」された後の囚人たちの死体が、
どのような扱いを受けていたのか?ということを書いて、
「処刑」の話の締めくくりとしたい。

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